DS 3クロスバック オペラBlueHDi(FF/8AT)
ラグジュアリーメゾンのかほり 2022.07.13 試乗記 デザインとディテールにこだわった「DS 3クロスバック」に、ディーゼルエンジン搭載モデル「オペラBlueHDi」が登場。優れた燃費と強力なトルクが自慢のパワーユニットによって、小さな高級車をうたうその走りはどう変わった?伝統的で新しいインテリア
シェーッ! DS 3クロスバックにディーゼルが追加されたざんす。発売は2022年5月25日。近ごろ、燃料価格がシェーッ! と上がって家計が苦しいざんす。生活がキビシーッ。燃費がいいディーゼルはウレシーッ。売ってちょ〜だい。電話ちょ〜だい。と続けているうちに財津一郎になってしまいました。シェーッ!
さて、搭載されるディーゼルエンジンは、プジョーの「308」や「2008」、姉妹モデルである「DS 4」などでおなじみのDV5である。2018年に発表されたPSA(当時)キモいりのこれは、従来の1560cc直列4気筒ディーゼルターボのDV6をベースに、ストロークを縮めて排気量を1498ccに縮小。ヘッドをSOHC 2バルブからDOHC 4バルブに改め、最高出力を119PS/3500rpmから130PS/3750rpmに高める一方、 300N・m /1750rpmという最大トルクの数値は維持しつつ、中低速トルクの厚みを増やした傑作(といってよいと筆者は思う)である。
従来3つに分かれていた、アドブルーを含む排ガスの浄化システムを垂直に並べて統合することでヨーロッパの厳しい規制をクリア。ピストンの形状は、2009年にルマン24時間レースを制した「プジョー908 HDi FAP」のそれをベースにしている……など見どころもたっぷり。
次いで、DS 3クロスバックについて復習しておきますと、2019年6月に日本に上陸したPSAの、ヨーロッパでいうところのBセグメントに属するコンパクトSUVで、その最大の特徴は従来の自動車の文脈にはないちょっと風変わりなデザインにある。エクステリアが、2009年に発表された当時は「シトロエンDS3」と名乗っていた2ドアハッチバックの系譜に連なっていることは疑いない。シャークフィン形状のBピラーとか、ですね。
けれど、ボディー形状は4ドア+ハッチバックのみで、18インチという大径のホイールを採用。SUV、すなわち本来はアウトドア向きとされるタイプなのに内装はアールデコ調にきらびやか。あえて申し上げれば、1930年代に活躍したソーチックだとかフィゴーニ・エ・ファラッシ、あるいはアンリ・シャプロンといったフランスのカロシェ(コーチビルダー)たちのフラムボワイヤン様式……と、じつのところ、筆者もよく知らないのですけれど、そうした伝統をくむ、もしくはその現代的解釈、というようなことをいいたくなるムードを持っている。リモコンキーを持って近づくと、ポップアップ式のドアハンドルがゴトンと飛び出るギミックもステキだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
フランスの才気が随所に
DSオートモビルズはPSAの高級ブランドとして、2014年にシトロエンから独立。ブランドの源泉を1955年の「シトロエンDS」と位置づけ、アヴァンギャルドの精神でもって、「フランスのブランドだけがなしえるラグジュアリーをキーワードに、フランスの自動車文化の復活を目指す」と鼻息が荒い。という表現はエレガントではないですね。こころざしが高い。
“サヴォアフェール”というフランスのファッション界で使われていることばがブランドを語るのに用いられていて、DSオートモビルズではこれを「匠(たくみ)の技」と翻訳している。DS 3クロスバックも「匠の技」、すなわちフランスの才気を随所に感じさせる。
とりわけ、ダッシュボードとセンターコンソールのスイッチ周辺の宝石箱のような装飾が目を引き、亀の甲羅みたいな複雑なつくりのシート表皮に最上級のナッパレザーが用いられているのも特徴的だ。シェーッ! とオシャレざんす。高級レザーの使用は、ディーゼルエンジンがオペラというDS 3クロスバックの最上級グレードに設定されたから、ということもある。
プラットフォームは旧PSA系で最新世代にあたるCMP(コモン・モデュラー・プラットフォーム)を採用。CMPは伸縮自在、電動化にも対応しており、DS 3クロスバックにも「E-TENSE」なる100%BEVがある。興味深いのは、同じくCMPの「プジョー208」や2008と近しい関係にあるはずなのに、ホイールベースは208が2540mm、2008は2610mm、DS 3クロスバックは2560mmとそれぞれ異なっていることだ。これこそ、CMPの伸縮自在ぶりと同時に、PSAがキャラクターに合わせて丁寧なクルマづくりをしていることの証左ではあるまいか。
クル・ド・パリと呼ばれる小さなピラミッドがいっぱい並んでいるような文様に囲まれた、ダッシュボードの中央のちょっと下にあるエンジンの始動スイッチを押す。ちょっとわかりにくいところがまたシブい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
都市型で泥んことは無縁
一瞬、ディーゼルらしいサウンドを発した後、DS 3クロスバックは静かにアイドリングを始める。アイドリング自体、室内にいる限り静かである。走り始めると、DV5エンジンはディーゼルであることをほとんど乗員に悟らせない。
1.5リッターのディーゼルターボエンジンが、まるでガソリンエンジンのように静かでなめらかに回ることに加え、わずか1750rpmで300N・mという最大トルクを発生するからだ。1750rpmなんて、軽くアクセレレーターを開けただけですぐさま到達する。300N・mといってもいまやもうだれも驚かないけれど、ガソリン自然吸気エンジンだったら3リッターに匹敵する大トルクである。それを全長4mちょっとの小型車に積んでいる。車重は1330kgと、1.2リッター3気筒のガソリン版に比べて50kg重い。それでも、この圧倒的低速トルクゆえ、力強い加速を披露するのだ。
このボディーにして18インチのホイールを装着しているため、路面の悪いところを低速で走るとバネ下に重いものをぶら下げている感があることは否めない。それでも、18インチだからこそ、DS 3は曲がりなりにもSUVを主張するにふさわしい180mmの最低地上高が得られているわけで、もしもこれでせいぜい16インチ程度のBセグメントハッチバック並みのホイールだったら、DS 3クロスバックは「DS 3ハッチバック」になってしまう……かもしれない。18インチはDS 3クロスバックの生命線だ。
ま、多くのFWDベースのコンパクトSUVはそういうものではあるけれど、であるにしてもDS 3クロスバックはいかにも都市型で、泥んことは無縁のように筆者には思える。
タイヤが乗り心地面でも定評のある「ミシュラン・プライマシー4」で、215/55とさほどの偏平でもないサイズ。ということもあり、18インチを問題提起したのは私だが、路面のよい都内ではほとんど乗り心地に不満を抱かなかったこともまた事実である。してみると、結局、筆者はなにがいいたかったのか? DS 3クロスバックの18インチはちゃんと成立している。ということである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
当代随一のオシャレな小型高級車
100km/h巡航時のエンジン回転は8段ATのトップで1800rpm程度。このとき、エンジンはその気配を隠し、もちろん路面にもよるけれど、内房の圏央道で耳にしたのは控えめな風切り音のみ。
ガバチョとアクセレレーターを踏み込むと、ディーゼルエンジンは2000rpm以上でうなり声を高めるものの、回すほどにパワーが頭打ち感なく流れ出てくる。ディーゼルであることを忘れる。フロントヘビーということもあって高速直進性はすこぶる高い。コーナーでは軽くて穏やかなロールを見せるから、その足まわりは最初こそ硬めに感じるけれど、じつはしなやかなストローク感を備えている。
「スポーツ」「ノーマル」「エコ」とあるドライブモードのノーマルを選んでいる限り、ステアリングもペダルも比較的軽めで、デザインだけでなくマダム向きに仕立ててあることが想像される。
SUVらしく、「サンド」「マッド」「スノー」の3種類の走行モードがグリップコントロールと称して設定されているものの、駆動方式はFWDのみだし、あくまでさほど積雪のない都市住民のための小型車だと考えるべきだろう。
EVだと、いっそう静かでスムーズで、このエレガントなデザインにピッタリ。でもディーゼルにはEVにはない長い足がある。
正直いえば、シェーッ! とイヤミの筆者には縁遠い類いのオシャレな高級車である。それはシャネルやディオール、イヴ・サンローランやカルティエが筆者とは縁遠いのと同じことで、DSはなるほどフランス文化の厚みを教えているのである。
(文=今尾直樹/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
DS 3クロスバック オペラBlueHDi
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4120×1790×1550mm
ホイールベース:2560mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/3750rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)215/55R18 97V/(後)215/55R18 97V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:21.0km/リッター(WLTCモード)
価格:489万7000円/テスト車=524万3480円
オプション装備:パールペイント<クリスタルパール>(6万0500円)/バイトーンルーフ<ノアールペルラネラ>(2万5500円)/ナビゲーション(24万9810円) ※以下、販売店オプション ETCユニット(1万0670円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1332km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:294.0km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター(満タン法)/16.3km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。

























































