フォルクスワーゲン・ゴルフTDIハイライン マイスター(FF/7AT)
映えより実利 2019.09.13 試乗記 2018年から始まった、日本におけるフォルクスワーゲンのディーゼルモデル拡大戦略。いよいよ本命ともいうべき「ゴルフ」が上陸した。すでにモデル末期ともうわさされている現行型ゴルフ。手を出すべきか、それとも待つべきか……!?21年ぶりのディーゼルゴルフ
待ち人ならぬ、待ちグルマ来たり。ゴルフIII以来となるディーゼルエンジンを搭載したゴルフの日本導入が発表された。21年ぶり。これに先立って2018年に「パサート」「ゴルフトゥーラン」「ティグアン」にディーゼルエンジン搭載モデルが追加され、今回、ゴルフとともに「シャラン」にも追加された。これで上記に「パサートヴァリアント」「パサートオールトラック」「ゴルフヴァリアント」を加えた、計8モデルでディーゼルを選択できるようになった。
2018年にディーゼルモデルが追加された際、その中にゴルフが含まれていなかった。そのことをインポーターに尋ねると、「検討中」といった回答だったので、モデルチェンジが近いからこの世代では入れないのかもしれないなと思っていたが、入ってきた。めでたし、めでたし。
日本のインポーターが用意するディーゼルエンジンは、いずれも同じブロックの2リッター直4ターボだが、性能が異なる。特性というべきか。具体的には3種の出力特性をモデルによって使い分ける。パサートなどに搭載されるエンジンは最高出力190PS/3500-4000rpm、最大トルク400N・m/1900-3300rpm。数値の面ではこれが最も高性能。シャランに搭載されるのが同177PS/3500-4000rpm、同380N・m/1750-3250rpm。そしてゴルフなどに搭載されるのが同150PS/3500-4000rpm、同340N・m/1750-3000rpmとなる。
主にターボの過給圧を変えることで出力特性を変化させているという。ほぼコンピューターのマッピング次第であり、出力が低いエンジンのほうが安くつくれるわけではないのだから、すべてに“満額回答”しておけばよいのではないか……と思わないでもないが、目標としている燃費性能との兼ね合いと、マーケティング上の理由であろう。
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アクセルを踏んだら“あれっ?”
エンジンを始動する。振動は少ない。音も静か。最新の4気筒ディーゼルエンジンのレベルにある。Dレンジに入れて発進、大きめの通りに出るまでそろそろと走らせるが、この程度の負荷のかけ方だとガソリンエンジンかディーゼルエンジンか本当にわからない。空いた直線で、アクセルペダルをぐいっと深く踏んで加速してみた。あれっと思って、もっと踏んでみた。なるほどと思って少し戻した。カタログスペックの通り、トルクもりもり型ではない。決してトルク不足を感じるわけではないが、満を持して登場したディーゼルゴルフということで、少々期待しすぎたかもしれない。
ただしアクセルペダルを踏んで強力な加速を味わえるかどうかだけがディーゼルエンジンの良しあしを決めるわけではない。発進と同時に感じた振動の少なさと静粛性の高さは、負荷をかけてもその印象が覆ることはなかった。またエンジンの吹け上がりが軽やかだ。その面でも、またトルクもりもり型ではないという面でも、ディーゼルらしからぬディーゼルという印象だ。何種類かあるディーゼルエンジンの出力特性のうち、最も穏やかなバージョンをゴルフに採用したのだから、こうした印象は売る側の意図したものなのだろう。“踏んでドカーン”がない代わりに軽やかに吹け上がり、静かで振動も少なく、燃費も悪くないというディーゼルゴルフを日本法人は提案したということだ。
選べることに価値がある
本音を申し上げれば「もっと速いディーゼルもってこい!」という感じだが、それはアルファ・ロメオあたりの担当で、ゴルフというのは本来生徒会長タイプであり、燃費も考えたこの仕様をという提案なのだろう。ちなみに、あとから試乗したシャランのディーゼルはかなり印象が違って、力感のある加速を味わうことができた。車重が重く、多人数乗車も想定されるからギアリングが加速重視なのだろう。こっちのほうがディーゼルに乗っているということを日常的に意識できるタイプではある。
ゴルフには、複数のガソリンエンジンに加えて、PHV、EVとさまざまなパワートレインが用意されている。力強く速いゴルフが欲しければ「GTI」や「R」があるし、意識の高い人に向けてはPHVの「GTE」やEVの「e-ゴルフ」がある。今回はそれらに加えてディーゼルエンジンが追加されたというのがポイントだ。ガソリン、PHV、EV、そしてディーゼルのそれぞれに得手不得手があり、用途によって最適なパワートレインは異なる。どういう用途のユーザーにも対応できるという点に価値がある。
ディーゼルゴルフはガソリンゴルフに比べて20万~30万円ほど高価だが、一台に長く乗り、また長距離を走るという人であれば、安い燃料代と燃費のよさ(WLTPモードで18.9km/リッター)で元を取ることができる。要するに長期間、長距離を走る人向けだ。いささか模範解答的で不本意だが、他に言いようがない。
今もなお一線級のシャシー性能
今回の試乗で最も印象に残ったのはエンジンではなく、ゴルフVII(途中で大規模マイナーチェンジして現行型は通称“ゴルフ7.5”)の相変わらずの基本的なクルマの出来の良さだった。例えばボディーの剛性感について言うならば、国内外の最新のライバルと依然伍(ご)することができ、モデルチェンジの必要性を感じない。街中や高速道路、ワインディングロードと、場面を選ばず好印象だった。いつだったか忘れたが、ゴルフは車体を味わうクルマだと以前感じたのを思い出した。
ADAS、すなわち先進運転支援システムを見ても、ACC作動中の振る舞いは自然だし、先行車両の完全停止への対応も上々。渋滞中に車線中央維持を手伝ってくれる「トラフィックアシスト」は一度味わったらやめられない。ステアリングホイール奥にあるフルデジタルのメーターパネルに地図を表示させられ、そのサイズも選べる「アクティブインフォディスプレイ」はVWグループが最初に取り入れたもので、今では他社も追従するが、VWの地図が一番見やすい。
現在ゴルフ購入を検討している人が考えるのは、今年中に姿が明らかになり、来年には発売される次期型を待つべきかどうかということだろう。これに正解はなく、欲しいタイミングで買うしかないが、PHVやEVのゴルフを検討している人は、モデルチェンジしてもすぐには出ないから買ってしまっていいと思うし、ディーゼル版については新型にも確実に設定されるかどうかわからない。試乗して気に入ったら現行型を買ったほうがいいと思う。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフTDIハイライン マイスター
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1800×1480mm
ホイールベース:2635mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/3500-4000rpm
最大トルク:340N・m(34.7kgf・m)/1750-3000rpm
タイヤ:(前)225/45R17 91W/(後)225/45R17 91W(ブリヂストン・トランザT001)
燃費:18.9km/リッター(WLTCモード)
価格:391万円/テスト車=403万1000円(消費税10%を含む)
オプション装備:プレミアムサウンドシステム“DYNAUDIO”(7万7000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(4万4000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1850km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:12.7km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
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