第143回:ねらえ! リッター30km
2019.09.17 カーマニア人間国宝への道プジョー308が大健闘
先月、『CARトップ』誌にて、「エコランピック」と題したエコカーの燃費テストが行われ、不肖ワタクシも参加した。
私は「プリウス」を担当し、高速巡航、一般道、ワインディング、すべての項目で優勝したが(私のウデではありません)、衝撃だったのは、「プジョー308アリュールBlueHDi」(FF/8AT)の、想像を絶する健闘ぶりだった。
まず高速巡航。常磐道を70km/hくらいで走り、プリウスは貫禄の38.3km/リッターをマークしたが、308がそれに迫る34.4km/リッターで2位に食い込んだのだ! ちなみに3位は「インサイト」、4位は「ノートe-POWER」、5位(ビリ)は「eKクロス」(ターボ)でした。
続く一般道とワインディングでも、308は20km/リッターを上まわる数値をたたき出し、プリウスを除く国産ハイブリッド&軽軍団と互角以上の戦いを展開した。軽油の安さを考えると、国内では燃費王といっても過言ではあるまい。
308を担当したのはマリオ高野。この結果も、言うまでもないがマリオの腕ではない。
マリオ:ECOモードでひたすら丁寧に走っただけですが、自分の出した数字に自分で仰天しました。
ディーゼルの燃費がいいのは確かだが、当然限界はある。個人的には、低燃費をねらったノロノロ高速巡航でも、ディーゼルが30km/リッターを超えたのは見たことがなかった。
308の1.5ディーゼルは、従来の1.6ディーゼルに対して、カタログ燃費で+15%強向上しており、24.3km/リッター(JC08モード)となっているが、リアルワールドでそれを大幅に上まわるなんて超ビックリ!
(注:数値はすべて燃費計のもので、実燃費ではありません)
320dオーナーの野望
その時、私の心に芽生えたもの。それは「クヤシイ!」という思いだった。
我が愛車の「BMW 320d」も、かなり燃費がイイ。購入してから現在までの平均で、18.0km/リッター(同じく燃費計上)走っているが、ロングドライブでも、25km/リッターを超える数字は見たことがないのだ。
考えてみりゃ、70km/h巡航なんてわざわざやらないし、320dと308じゃ、車格も排気量も違うってのはありますけど。
ただ、私の経験では、ディーゼルの燃費は排気量とはあまり関係がなく、2リッター以下ならだいたい同じなのだ。
かつて乗っていた「フィアット・クーボ」(1.3ディーゼル)も、燃費は平均18km/リッターくらいだったし、「ランチア・デルタ」の1.6リッターディーゼルも、おおむねそんなもんだった。
排気量が小さいほうが燃費がいいわけじゃないのは、ハイブリッドも同様ですね。1.8リッターのプリウスのほうが、1.5リッターの「アクア」やノートe-POWERより燃費がいいので。
ところが308の1.5ディーゼルは、私の固定観念を覆し、一頭地を抜く燃費をたたき出した。これは捨て置けぬ。ディーゼルにはまだまだ伸びしろがあるということか?
ちなみに、308の1.5ディーゼルは、燃費以外のフィーリングはそこそこ。パワーもトルクもレスポンスも音や振動もまあまあで、現在のディーゼルラインナップの中では、総合的には中の上くらいだと思います。
とにかく、ディーゼルオーナーとして、この結果はクヤシイ。愛車でもトライしてみなくては!
やったぜ! 激安ディーゼル
果たして5年落ちの320dで、どのくらいの数字が出るのか。まずは東名でトライだ。
しかし走りだしてすぐ、「30km/リッター超えはムリ!」と思い知った。308のテストと同じくらいの距離(60km)走ろうかと思ってたけど、ムダなので途中で中止。結果は26.0km/リッターでした。
終わってから、「ECO PRO」モードに入れるのを忘れていたことに気づいた。巡航で「ECO PRO」にしたところで、そんなに燃費が伸びることもなかろうが、やっぱ条件はそろえないと。そう思って後日、今度は第三京浜でトライ。
すると!
交通量が少ないなど他の条件にも恵まれて、燃費計の数値は30km/リッター前後を行き来している! やるじゃんか激安中古ディーゼル! 最終的には、29.4km/リッターという数字を出すことができました。5年落ちでよくがんばった! エライ!
距離はたった12km、時間にしてわずか10分というプチテストでしたが、高速巡航燃費なんて、延々測ったところで大差ない。とにかく、我が愛車でも、30km/リッター近い数字が出せるという事実だけでマンゾクです。カーマニアの自己満足ですから。
最高速やゼロヨン加速テストは、公道じゃできない。公道で限界に挑戦できるのは燃費テストだけ! スキスキ燃費テスト! うおおおおお!
ちなみに燃費計の数字ですが、多くのクルマで、5~7%くらい甘いみたいです。
(文=清水草一/写真=池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。