ジャガーXFスポーツブレイク プレステージD180(4WD/8AT)
いぶし銀の伊達男 2019.09.27 試乗記 ジャガーにとって久々となるステーションワゴン「XFスポーツブレイク」に、2リッターディーゼルエンジンと4WDを組み合わせた新モデルが登場。流麗な英国製ワゴンとディーゼル四駆の組み合わせやいかに? その出来栄えを確かめた。知る人ぞ知る存在
いぶし銀の魅力を放つ、といってよいのか。はたまた単に地味な存在なのか、スポーツブレイクという名前を与えられたミドサイズ・ジャギュア、XFのステーションワゴンに2019年モデルとして加わったディーゼル+4WDがコレだ。アニキ、シブいっす。
考えてみたら、筆者はXFのステーションワゴンの実物を初めてマジマジと見た。日本市場には2018年モデルとして、その前年の2017年に導入が発表されている。XFのワゴンだからして、全長×全幅×全高=4965×1880×1495mm、ホイールベース2960mmのボディーは伸びやかで、いかにもFRっぽい(試乗車は全輪駆動ですけれど)プロポーションが粋だ。
試乗車はオプションてんこもりで、車両本体価格766万円に加えて、アドバンスドパーキングアシストパック(サラウンドカメラ付き)39万円だの、リアコンフォートパック26万3000円、アダプティブダイナミクス17万6000円、その他もろもろで、241万2000円分もの装備が足されている。ということは、総額ほとんど1000万円である。
リアコンフォートパックはシートヒーターがリアにも備わったり、4ゾーンのクライメットコントロールがおごられたりする。
英国流の“ちょいワル”仕立て
外観上、このミドサイズというには大柄なボディーをギュッと引き締めているのが、オプションで13万円の「ブラックパック」と、同21万4000円の「グロスブラックフィニッシュ」なる19インチのアルミホイール、さらに7万7000円のプライバシーガラスであるに違いない。
中でも、本来はクロームに輝くフロントグリルやテールゲートフィニッシャー等を、ホイール同様の黒光り色で塗りつぶすブラックパックが、「ロゼッロレッド」と呼ばれるエンジ色のボディーにノワールな雰囲気を与えていると思われる。イギリスのヤンキーここにあり。1960年代の若者たちのあいだで流行したというモッズとロッカーズ、どっちのグループにも似合いそうに思うのは、筆者がどっちにも属していないから、だろう。確かなことは、成功した若者じゃないと、おいそれとは買えない高級車である、ということだ。
「ライトオイスター」と呼ばれるシートカラーが選ばれた内装は上品で、スターターボタンを押すと円筒形のオートマチックのセレクターがせり出してくるのは初代XFと同じだ。走りだしての第一印象は、ジャガー独自開発の2リッター直列4気筒ディーゼルターボがうるさいことと、乗り心地がイマイチなことだった。
峠道ではいい仕事をしそう
乗り心地に関しては、245/40R19という極太偏平サイズのタイヤが大きな原因となっているに違いない。スポーツブレイクとはいえ、40というのはいかにも薄すぎに思える。カッコイイからいい。という程度のあたりの硬さではあるが。
一般道の荒れた路面で、ちょっとボヨンボヨンするのは、空荷の上、ひとり乗車で試乗していたからではあるまいか。車重は1900kgもあるわけだけれど、バネ下に対して、上屋が軽すぎるような、そういうボヨンボヨン感がある。
今回、山道には行っていないけれど、ハンドリングはよさげで、そのボヨンボヨン感は積極的に荷重を意識したドライビングを心がけると気にならなくなる。ボーッと運転していてはいけない。スポーティードライブ派にとってはおそらくお気に入りのステーションワゴンになるのではあるまいか。前後重量配分50:50は伊達(だて)ではない。荷重が右側なり左側なり、あるいは前後どちらかなりにかかっていると、足腰がしなやかに動いているように思える。
1999ccのディーゼルは最高出力180PSを4000rpmで、430N・mもの最大トルクを1750-2500rpmという低回転域で発生させる。踏むとボーボーうるさいのがタマに傷で、4000rpmで最高出力を生み出すといっても、回りたがるのは3000rpmまで。その回転数に至ると8段オートマチックが自動的にシフトアップして、一般道を走っていて1000-2000rpmの範囲に抑えようとする。それで車重1900kgのボディーを過不足なく走らせるのだから、このディーゼル、力持ちではある。
“地味で派手”なところがいい
最良の面を見せるのは高速巡航で、いい路面でなら、薄いゴムによる当たりの硬さも気にならない。100km/h 巡航は1400rpm 程度にすぎないこともあって、室内は静かで、路面にもよるけれど、ロードノイズもおおむね低い。
ステアリングがやや重めであることを除くと、4WDであることを意識させない。全輪駆動とはいえ、多板クラッチの電子制御システムが前後タイヤのスリップを予測しない限り、前輪にトルクを供給することはしないのだから、それも当然。路面が乾いた状況では後輪駆動で走っているのだ。
月並みな連想ではあるけれど、スポーティーなステーションワゴンをお探しの、若いカントリージェントルマン向きの一台、である。後席居住空間は広く、荷室はちょっと浅いけれど、四角くて使い勝手がよさげだ。
カントリージェントルマン的ライフスタイルを送っているリッチな若者が日本国内に何人いるのか? いいご質問である。あいにく答えは持ち合わせていない。ただ、ネット時代なだけに、実は意外と多いような気がする。なので、このスタイリングのカッコよさがあれば、「メルセデス・ベンツEクラス」や「BMW 5シリーズ」のステーションワゴン、「ボルボV60」等のオルタナティブとして、もっと注目を浴びてもいい。なのに、日陰の花のような存在であるところがまた、この地味で派手なワゴンの長所なのかもしれないけれど。
(文=今尾直樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ジャガーXFスポーツブレイク プレステージD180
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4965×1880×1495mm
ホイールベース:2960mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:180PS(132kW)/4000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)245/40R19 98Y/(後)245/40R19 98Y(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
燃費:15.0km/リッター(JC08モード)
価格:766万円/テスト車=1007万2000円
オプション装備:ボディーカラー<ロゼッロレッド>(9万9000円)/セキュアトラッカー(9万7000円)/アドバンスドパーキングアシストパック<サラウンドカメラ付き>(39万円)/リアコンフォートパック(26万3000円)/イオン空気清浄テクノロジー(2万1000円)/ラゲッジスペースパーティションネット(5万3000円)/アダプティブダイナミクス(17万6000円)/19インチ5スポーク“スタイル5035”<グロスブラックフィニッシュ>(21万4000円)/ヒーテッドステアリングホイール(3万9000円)/ブラックパック(13万円)/パノラミックルーフ<パワーサンブラインド付き>(22万4000円)/プライバシーガラス(7万7000円)/コンフィギュラブルアンビエントインテリアライティング(5万6000円)/ハンズフリーパワーテールゲート(10万円)/360°サラウンドカメラ(14万5000円)/ブラインドスポットアシスト&リバーストラフィックディテクション(14万5000円)/ストレージレール(2万5000円)/ソフトドアクローズ(10万7000円)/コンフィギュラブルダイナミクス(3万1000円)/電動ジェスチャールーフブラインド(2万円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:3113km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:145.1km
使用燃料:14.3リッター(軽油)
参考燃費:10.1km/リッター(満タン法)/10.0km/リッター(車載燃費計計測値)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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