ジャガーXFスポーツブレイク S D200 AWD(4WD/8AT)
今こそめでたい 2021.06.12 試乗記 化粧直しはそこそこ? と思いきや、仕様変更でパワーユニットや室内の装備など、見えない部分にまでしっかり手が入れられたジャガーのワゴン「XFスポーツブレイク」。ステアリングを握れば分かる、最新型の乗り味をリポートする。これぞワゴンのあるべき姿
久々に間近でじっくり眺めるXFスポーツブレイクは、やっぱりカッコよかった。それはいかにもステーションワゴン(以下、ワゴン)らしい流麗なカッコよさである。ワゴンはリアオーバーハングがセダンより長いのが本来の姿なのだが、実際に全長がセダン比できちんと伸ばされているワゴンは多くない。その点、XFスポーツブレイクの全長は、たった5mmではあるがセダンよりも長い。
XFスポーツブレイクの、流麗なカッコよさのもうひとつ理由はリアクオーターウィンドウにある。最近は、この部分をできるだけ小さく短く、軽快に見せるスポーツワゴン≒ショートワゴン路線のデザインを採るクルマが多いが、XFはその逆である。ご覧のようにリアクオーターピラーが極力細く見えるように造形してあり、その直前のウィンドウグラフィックもピラーやルーフラインに沿うようにできるだけ大きく、そして長く見える形状になっている。ワゴンはやっぱりお尻が長いほうがカッコいいのだなあ……と、筆者はXFスポーツブレイクを見るたびに再確認する。
そんなXFスポーツブレイクを、この時期にあらためて眺めることになったキッカケは、先日上陸したばかりの2021年モデルの試乗車が用意されたことにある。新型XFそのもののデビューは実質2016年モデル(スポーツブレイクは2018年モデルで追加)だったので、今回の2021年モデルで5年目となるが、これまでで最大規模の改良の手が入った。ジャガー日本法人はそうとは表現していないが、一般的には、これはマイナーチェンジだろう。
今度のXFは、外観ではセンターグリル内部のメッシュデザインやバンパーグリル、ヘッドライト(新たに“ダブルJ”をかたどったフルLEDライト)などが新しい。パワートレインはV6や4気筒ガソリンの「P200」が姿を消すなどのリストラが入り、ラインナップ数も従来の17種類から11種類へと減少した。
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目立たぬところもアップグレード
いっぽう、今回の試乗車も含めた2リッター4気筒ディーゼルについてはポジティブなニュースが多い。まずエンジン本体の最高出力が204PS(以前は180PS)に引き上げられた(グレード名も「D180」から「D200」に変更された)のに加えて、全車に48Vのマイルドハイブリッド(MHEV)が組み合わせられた。ただ、これまで2WDと4WDがあった駆動方式は全車4WDに統一というリストラも同時実施されたが(本国では今も2WDが残る)。
……といった事前情報を織り込みつつ試乗車に乗り込むと、今回のハイライトがインテリアの刷新であることが即座に分かる。これはほぼ同時に改良された「Fペース」とほぼ共通のデザインで、ダッシュボードからインストゥルメントパネル、センターコンソール、ドアトリム、ステアリングホイールにいたるまで、従来との共通部分は事実上皆無といっていい。資料によると、フロントシートもクッション形状から新しいという。
なかでも目立つのは11.4インチという巨大な(しかも湾曲している)センタータッチスクリーンと、新しいシフトセレクトレバーだ。従来のロータリーダイヤル式と「クリケットボールがモチーフ」という新しいシフトセレクターのどっちがいいか……好みの問題もあろう。ただ、クルマの前後進をつかさどるシフト操作は、ダイヤル式の左右方向より、今回のように前後方向のほうが認知工学的に自然なのは事実だ。
感心したのは今回は見た目のデザインやセンターディスプレイに内蔵される各種ハイテク装備だけでなく、おおもとの内装素材もアップグレードされたことだ。従来も目立つ部位には手ざわりのいいレザーやソフトパッドが使われていたが、ダッシュボードの下半分やグローブボックス、ドアポケットなどはハードな樹脂だった。しかし、新しいXFではそうした目立たないところにまで、柔らかいソフトパッドが使われるようになった。
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こだわりは伝わるものの……
出力アップとMHEVという手が入ったディーゼルエンジンについて、日本法人の広報担当者は「かなり静かになったでしょう!?」と胸を張った。まあ、1年以上前に初体験したジャガーディーゼルの遠い記憶を引っ張り出すと、なるほど静かになっている。ベルト駆動のスターター兼発電機を追加したMHEVによって、加速時のエンジン負荷も低減しているはずだし、よくよく観察してみると、ドア開口部のゴムシールも以前より入念な設計となっていた。静粛性への配慮やこだわりがより高まっているのは明らかだ。
ただ、「Eクラス」や「5シリーズ」「A6」といったジャーマンスリーの競合車と比較して特別に静かといえるレベルではなく、アクセルを踏み込んだときには、良くも悪くもエンジン音がけっこう明確に聞こえるタイプではある。また、同じジャガーでもSUVのFペースのほうがより静粛性が高いという声もあるし、せっかくのMHEVであれば、変速ショックなどはもう少し抑制されてほしかった気もするのだ。
もっとも、XFはこのセグメントのディーゼル車としては十二分にパワフルで、レッドゾーン付近の4500rpmまでとても滑らかに回るのは心地よい。余剰トルクを瞬時にフロントに吸い出す電子制御4WDの恩恵もあって、この程度(!?)のパワーやトルクではなんの事件も起きないのも頼もしい。
このように、単独で乗っていると、平均には達しているが驚くほどでもないというのが正直なところのパワートレインに対して、シャシーのデキはとても良い。XFのフットワークは以前から、路面のアタリが滑らかでヒタリと路面に吸いつくネコアシだったが、ここに及んで、さらに熟成きわまった感がある。
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足まわりは見事のひとこと
XFスポーツブレイクの低く構えたスタイルからすると、荷重移動したときの前後左右の動きは小さくない。しかし、運転操作に対してフワリと柔らかだが正確に沈み込んで、しかるべき瞬間にピタリと止まるフットワークは見事なものだ。
それを支える連続可変ダンパーにはコンフォートとダイナミックという2つのモードがある。より硬めであるはずのダイナミックモードにしても、基準となる減衰力がわずかに引き締ま(って操舵反応が少し鋭くな)るだけで、柔らかなネコアシ感は大きく損なわれない。かわりにどのモードでも、Gが高まるにつれて減衰力もみるみる強まっていく(のが体感でも分かる)のが、昔からのジャガーの可変ダンパーらしさだ。しっかりとしたメカニカルストロークで接地させる調律なので、接地感も濃厚。それでいて、FRベース4WDの恩恵もあるのか、積極的にアクセルを踏んでいくだけで、ワインディングロードでも安定した挙動のまま最終的にシレッと曲がりきる。
新しいXFは時代に合わせたパワートレイン改良やデジタル装備に加えて、内装やシャシーにも、予想以上に真摯で徹底した改良が入った力作である。さらには、その明確な商品力向上とは対照的に、価格が下げられた点にも注目である。スポーツブレイクのディーゼル4WD……という条件で、今回の試乗車を前身にあたる「プレステージD180」と比較すると、本体価格が44万円も安くなっているのだ。さらに装備内容を子細に見ると、実質値下げ幅はそれ以上といってもいい。
この背景には、XFの販売実績がジャーマンスリーの競合車に大きく水を空けられていることを憂慮した世界的戦略があるという。そしてその不振の理由を、ジャガー自身は「セダンとディーゼルに依存しすぎているから」と定義しているらしい。そんな現実もあってか、ジャガー・ランドローバーのティエリー・ボロレCEO(=元ルノーCEO)は「ジャガーを2025年までに完全な電気自動車ブランドとする」という中期計画を発表した。その計画が本当なら今のようなXFもこのモデルが最後……と考えると、この美しいワゴンがなおさら、いとおしく思えてくる。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ジャガーXFスポーツブレイク S D200 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1880×1495mm
ホイールベース:2960mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:204PS(150kW)/3750-4000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)245/40R19 98Y/(後)245/40R19 98Y(ピレリPゼロ)
燃費:14.5km/リッター(WLTCモード)
価格:722万円/テスト車=934万4000円
オプション装備:ボディーカラー<カルパチアングレイ>(10万1000円)/コンビニエンスパック(20万4000円)/プレミアムアップグレードインテリアパック(47万3000円)/4ゾーンクライメートコントロール(9万9000円)/空気イオン化テクノロジー<PM2.5フィルター付き>(2万1000円)/MERIDIANサウンドシステム(11万5000円)/オンラインパック<データプラン付き>(1万9000円)/19インチ“スタイル7013”7スプリットスポーク<グロスブラック、コントラストダイヤモンドターンドフィニッシュ>(26万8000円)/オートハイビームアシスト(2万9000円)/固定式パノラミックルーフ(22万4000円)/プライバシーガラス(7万2000円)/フロントアニメーション方向指示器(9000円)/コールドクライメートパック(10万3000円)/テクノロジーパック(17万6000円)/JaguarDriveコントロール<アダプティブサーフェスレスポンス付き>(0円)/ダイナミックハンドリングパック(18万9000円)/パワージェスチャールーフブラインド(2万2000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:3321km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:442.3km
使用燃料:39.6リッター(軽油)
参考燃費:11.2km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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