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トヨタ・スープラRZ TRD用品装着車(FR/8AT)/スープラSZ-R TRD用品装着車(FR/8AT)/プリウスA“ツーリングセレクション”アグレッシブスタイル(FF/CVT)/スバル・フォレスターX-BREAK STIパフォーマンスパーツ装着車(4WD/CVT)/インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight(4WD/CVT)

“ワークス”だからできること 2019.10.01 試乗記 山田 弘樹 TRD、STI、NISMO、無限と、メーカーのモータースポーツ活動やアフターパーツの開発を担う4つの“ワークス”が合同試乗会を開催。まずはTRDが手がけた「スープラ」と「プリウス」、STIの用品を装着した「フォレスター」と「インプレッサスポーツ」の走りを報告する。

主役はヤマハの試作ダンパー ――トヨタ・スープラTRD用品装着車

TRD(トヨタ・レーシング・ディベロップメント)は、いま最も話題のスポーツカー、スープラを2台持ち込んだ。鮮烈なイエローカラーにカーボンのエアロパーツが映える双子のスープラ。オリジナルのスタイルに準じてこれをサイズアップしたという前後スポイラーやサイドスカートといったパーツは、いずれも品よくレーシーだ。

しかし今回の主役は、エアロではなくサスペンションシステムである。先代にあたる“ハチマル”スープラ(A80)に「REAS(Relative Absorber System:リアス)」を搭載したヤマハが、新たに「TRAS(Threw Rod Advanced Shock Absorber:トラス)」というシステムを開発。これをTRDがスープラに搭載してきたのである。

REASは、左右のショックアブソーバーを中間ユニットで連結し、ストロークの速度差を利用して減衰力を変化させ、車両姿勢を安定させるシステム。後に、右前と左後ろ、左前と右後ろと、“たすき掛け”にショックアブソーバーを連結させる「X-REAS」も登場した。コーナリング時に負荷が掛かる外輪に対し、荷重が減る内輪のストロークを増やす方法だったと記憶している。もっとも、このREASが登場したとき(1997年)、筆者はまだ自動車誌の新米編集部員であり、スープラに乗るなんて夢のまた夢だった。ただ80スープラがこの最新システムを搭載した記憶は鮮明にあり、いまだREASの名前を覚えていたのだ。

一方、今回プロトタイプながらスープラに搭載されたTRASは、それぞれのショックアブソーバーが独立して車両姿勢をコントロールする。ただしコンベンショナルなアブソーバーが縮み方向で反力を生み出すのに対し、TRASはダンパーが伸びようとするときに減衰力を発生するのである。

TRDのエアロパーツがフル装備された「スープラ」。ただ、今回は試乗コースがツインリンクもてぎの構内路だったこともあり、インプレッションの対象は足まわりが中心となった。
TRDのエアロパーツがフル装備された「スープラ」。ただ、今回は試乗コースがツインリンクもてぎの構内路だったこともあり、インプレッションの対象は足まわりが中心となった。拡大
3ピースのフロントスポイラーは、標準のデザインを踏襲しつつ左右のフィンを大型化。ダウンフォースを増加させ、高速走行時のリフトアップを抑制する。
3ピースのフロントスポイラーは、標準のデザインを踏襲しつつ左右のフィンを大型化。ダウンフォースを増加させ、高速走行時のリフトアップを抑制する。拡大
あや織りの模様からもわかる通り、主な空力パーツは軽量なカーボンファイバーで製作されている。
あや織りの模様からもわかる通り、主な空力パーツは軽量なカーボンファイバーで製作されている。拡大
ヤマハが開発するTRASの試作品。通常のダンパーとは異なり、ダンパーが伸びようとするときに減衰力を発生する。
ヤマハが開発するTRASの試作品。通常のダンパーとは異なり、ダンパーが伸びようとするときに減衰力を発生する。拡大
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乗り心地はよくなっているが……

これは実に面白い試みだった。今回は試乗車の都合でトラックコースを走らせることができず、ツインリンクもてぎの構内路を走らせるにとどまったが、その片りんはうかがい知ることができた。

TRAS付きのスープラを走らせてまず感じるのは、乗り心地の上質さだ。垂直荷重を受け止めるのは主にスプリングだが、ピストンがオイルを押し込む過程でコンプレッション側の減衰力がほどよく発生するため、底付き感がない。縮み側の減衰力で車両を安定させようとしないので、反発感もない。

コーナーではステアリングを切り始めた瞬間から、イン側で路面へ引きつけられるように減衰力が立ち上がるのがわかる。外側のタイヤが頑張らない分だけ動きは滑らかで、レールに内輪をひっかけてトレースしていくような走り味だ。

ただし、うねりが大きい路面では、サスペンションが伸びた後の引き戻され感が強くなる。スピードが高まるほどにこの傾向は顕著になっていき、確かに跳ねはしないが走安性はむしろ下がっているのではないかと感じた。また切り返し時のレスポンスも、コンベンショナルなダンパーより鈍いと思う。リバウンドスプリングを内蔵したダンパーよりは緩やかだというが、同じ傾向ではある。

「TRAS」の試作品が装着された「スープラRZ」。通常のショックアブソーバーに感じられるような、底付き感や反発感のない、快適な乗り心地が印象に残った。
「TRAS」の試作品が装着された「スープラRZ」。通常のショックアブソーバーに感じられるような、底付き感や反発感のない、快適な乗り心地が印象に残った。拡大
標準の装飾パーツと交換して装着するドアガーニッシュは、表面のフィンによって車両側面の走行風を整流し、乱気流の発生を抑制。サイドスカートも車両側面の空気の流れを整える効果を持つ。
標準の装飾パーツと交換して装着するドアガーニッシュは、表面のフィンによって車両側面の走行風を整流し、乱気流の発生を抑制。サイドスカートも車両側面の空気の流れを整える効果を持つ。拡大
フロントの空力パーツとセットで装着することで、フラットライドなドライブフィールを実現するトランクスポイラー。跳ね上げるのではなく、後方へ延伸させる形状とすることで、伸びやかなフォルムを実現している。
フロントの空力パーツとセットで装着することで、フラットライドなドライブフィールを実現するトランクスポイラー。跳ね上げるのではなく、後方へ延伸させる形状とすることで、伸びやかなフォルムを実現している。拡大

サーキットでも試してみたい

ヤマハ開発陣のエクスキューズとしては、今回、彼らはもっと路面がフラットな試乗コースを想定しており、やや伸び側減衰力を高めに設定していたとのことだった。つまりサーキット走行を想定していたのだと思う。そう考えると、確かに納得がいく部分は多い。引き戻し減衰力を強めたといっても段差でドスンと落ちるほど硬くはなく、高荷重領域でしなやかに内輪をコントロールするつもりだったのだろう。そういう事情もあったからだろうか、スープラにイメージする手応えの確かさやハンドリングレスポンスのよさは、ノーマルダンパー装着車の方がより素直に感じられた。

もっとも、コンベンショナルダンパー装着車は直列4気筒の「SZ-R」だったから、キビキビ感が強調されるのは当たり前だともいえる(TRAS装着車は直6の「RZ」だった)。むしろ、フロント荷重が少ないにも関わらず、SZ-Rの乗り心地は秀逸だった。これは純正ショックアブソーバーがガス圧感度の低い複筒式であることに加え、試乗車にはボディーの振動を減衰するヤマハのパフォーマンスダンパーが装着されていたことも大きいのではないだろうか。

直列6気筒搭載車のプレミアム性を高めるなら、確かにTRASのしっとり感は高い可能性を持っている。また減衰力調整機構が追加されたりすれば、その調整幅は大きく拡がるだろう。次回があるなら、ぜひトラックとオープンロードの両方で、これをしっかりと試してみたい。

タイヤには「RZ」「SR-Z」共通で、前:255/35ZR19、後ろ:275/35ZR19サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ4S」が装着されていた。
タイヤには「RZ」「SR-Z」共通で、前:255/35ZR19、後ろ:275/35ZR19サイズの「ミシュラン・パイロットスポーツ4S」が装着されていた。拡大
テスト車に装備されていたパフォーマンスダンパーの試作品。接合部にテンションをかけることで、ボディーの振動を減衰する効果がある。
テスト車に装備されていたパフォーマンスダンパーの試作品。接合部にテンションをかけることで、ボディーの振動を減衰する効果がある。拡大
低速からきちんとストロークさせつつ、しっかりとしたロール剛性も持たせることと、コーナリング時のロールを抑え、特にリアのトラクションや接地性を高めることを意図して開発されたTRAS。完成したら、ぜひあらためて試走してみたい。
低速からきちんとストロークさせつつ、しっかりとしたロール剛性も持たせることと、コーナリング時のロールを抑え、特にリアのトラクションや接地性を高めることを意図して開発されたTRAS。完成したら、ぜひあらためて試走してみたい。拡大

空力がハンドリングを変える ――トヨタ・プリウス アグレッシブスタイル

「空力効果を高めただけで、足まわりや動力性能はほぼそのままですから」

やや謙遜気味に説明をするTRDスタッフ氏だが、そんなことはないだろう。というのも、筆者は“TRDプリウス”に対してはかなりいいイメージを持っている。先代型プリウスのエアロシステムには、2018年までSUPER GT GT300クラスを戦っていたJAF-GTマシンのノウハウが生かされており、実際、その走りはプリウスに新しい魅力を与えていたからだ。

そしてそのハンドリングの楽しさは、現行型にも継承されていた。「先代よりも空力性能的には突き詰めていない」としながらも、そのハンドリングにはしっとりとした手応えがあり、それを土台とした回頭性のよさが与えられていたのである。

ちなみに、TRDは現行プリウスに対して、ふたつの系統のエアロパーツを用意している。ひとつは今回試乗した「アグレッシブスタイル」。そしてもうひとつは、よりおとなしめな外観の「エアロダイナミクススタイル」だ。

とても面白いのは、TRDが自身のホームページでその空力特性をレーダーチャート化していることだ。各パーツはバラ売りでも購入できるようで、これらをひとつずつ付け足していくと、それに応じてグラフも変化していく。それによると、アグレッシブスタイルのコンプリート状態は、5つの項目(Response/Stability/Feedback/Flat/Dress up)のうちハンドリングレスポンスとフィードバック性能が上回っており、さらに見た目がよいらしい(笑)。対してエアロダイナミクススタイルはすべての特性が満遍なく高得点だが、特に乗り心地がフラットになっているようだ。

ちなみに、ノーマル車両はほとんどの項目で用品装着車に劣るが、安定性(Stability)だけは飛び抜けて高い。実にトヨタらしいキャラクターであるといえる。

TRDは「プリウス」に、空力効果とドレスアップ性の両方を重視した「アグレッシブスタイル」と、空力的な機能性を追求した「エアロダイナミクススタイル」の2種類のエアロパーツを用意。今回は、前者を装着したモデルに試乗した。
TRDは「プリウス」に、空力効果とドレスアップ性の両方を重視した「アグレッシブスタイル」と、空力的な機能性を追求した「エアロダイナミクススタイル」の2種類のエアロパーツを用意。今回は、前者を装着したモデルに試乗した。拡大
フロントまわりは、スポイラーと光沢のあるブラックのバンパーガーニッシュにより、標準車とは趣の異なるイメージに。
フロントまわりは、スポイラーと光沢のあるブラックのバンパーガーニッシュにより、標準車とは趣の異なるイメージに。拡大
リアまわりは、フィンの付いたルーフガーニッシュやトランクスポイラーなどで走行風を整流し、ダウンフォースを高めている。
リアまわりは、フィンの付いたルーフガーニッシュやトランクスポイラーなどで走行風を整流し、ダウンフォースを高めている。拡大
エアロパーツ以外では、車体の振動を抑える「MCBモーションコントロールビーム」や、ボディー剛性を向上させるメンバーブレースを装備。サスペンションはノーマルのままだった。
エアロパーツ以外では、車体の振動を抑える「MCBモーションコントロールビーム」や、ボディー剛性を向上させるメンバーブレースを装備。サスペンションはノーマルのままだった。拡大

空気の流れがロール剛性を高める

「空力効果は、少しスピードを上げただけでもわかります。足まわりは全くのノーマルなので、最初はノーズの動きも軽いのですが、速度が上がると安定感が増していくと思います」

開発陣に教えてもらった通り、最初は極めてゆっくりと走らせる。そして、この感触を確かめた上で、飛ばす。空力といっても、TRDは大幅にダウンフォース量を増すようなチューニングはしていない。なぜなら、それでは燃費が悪化するし、ダウンフォースが失われた際の過渡特性も変化が激しくなってしまうからだ。それでも、空力が走りにもたらしたであろう変化は如実に感じられた。

正直なところ、説明されたような「低速域での回頭性のよさが、高速域で安定方向に切り替わるポイント」は体感できなかった。なぜなら低速域でも高速域でも、TRDプリウスはよく曲がるのだ。ダンパー剛性を高めているわけでもないのに、ステアリングを切り始めたときのロールがとても素直で、“スッ”とノーズが入っていく。また操舵追従性が非常によく、タイトコーナーでハンドルを切り込んでいってもグリップが途切れない。

特筆すべきは、まるでサブフレームやサスペンションの取り付け剛性まで上がったかのような印象を受けたことだ。これは車体がロールし始める際、空気の流れによってロールスピードが穏やかになっているから。理屈で言えば車体の表面を流れる空気がスタビライザーのような役目を果たしているからということになるが、ともかくダンパーの減衰力を少し強めたかのようなフィーリングになるのだ。しかし、実際の足まわりは変更されていないため、乗り心地は損なわれない。結果としてとても気持ちよく曲がる、快適なプリウスに仕上がっている印象を受けたのだった。

TRDが持ち込んだ3台のカスタマイズカー。奥に見えるグレーのSUVは、「RAV4」の「Field Monster(フィールド・モンスター)」のエアロパーツ装着車だ。
TRDが持ち込んだ3台のカスタマイズカー。奥に見えるグレーのSUVは、「RAV4」の「Field Monster(フィールド・モンスター)」のエアロパーツ装着車だ。拡大
ワイルドなイメージが魅力的な「RAV4」のカスタマイズカーだが、「走りに影響するような変更はない」とのことだったので、試乗は見送った。
ワイルドなイメージが魅力的な「RAV4」のカスタマイズカーだが、「走りに影響するような変更はない」とのことだったので、試乗は見送った。拡大
今回のイベントでは、トヨタが各車に採用している“アルミテープチューニング”についても説明が行われた。ボディーの要所にアルミテープを貼ることで、車体にたまった電気を放出。車体付近の気流の乱れなど、静電気による走りへの悪影響を低減することができるという。
今回のイベントでは、トヨタが各車に採用している“アルミテープチューニング”についても説明が行われた。ボディーの要所にアルミテープを貼ることで、車体にたまった電気を放出。車体付近の気流の乱れなど、静電気による走りへの悪影響を低減することができるという。拡大
エアロパーツの開発に際しては、車両の前後バランスや、サスペンションやタイヤとの兼ね合い、そして空気の流れを整えることを重視しているというTRD。いたずらにダウンフォースを増やすのではなく、クルマ全体でバランスを取ることをテーマとしていた。
エアロパーツの開発に際しては、車両の前後バランスや、サスペンションやタイヤとの兼ね合い、そして空気の流れを整えることを重視しているというTRD。いたずらにダウンフォースを増やすのではなく、クルマ全体でバランスを取ることをテーマとしていた。拡大

長所を伸ばし 短所を補う ――スバル・フォレスター STIパフォーマンスパーツ装着車

STIはフォレスターとインプレッサスポーツの2台に、STIの看板商品である“フレキシブル~”シリーズを装着していた。特にフォレスターは、ノーマル車両との比較試乗ができたため、その違いをはっきりと体感することができた。

フォレスターに装着されていたのは、フレキシブルタワーバーとフレキシブルドロースティフナー。そして新開発されたサポートフロントキットの3点だ。

まずはノーマルのフォレスターからコースへと出る。荷重領域が高いクローズドコースで走らせると、スバルが育んできたシンメトリカルAWDのよさがわかりやすく体感できる。具体的にはフロントオーバーハングの軽さや、慣性重量の少なさ。これによってフォレスターは、背の高いSUVとは思えない素直な回頭性を披露してくれる。

やや曲がりたがりな性格は時に4輪を滑らせるが、カウンターを当てる領域にまでそれが及ぶことはない。たとえその兆候が出たとしても、長いホイールベースが車体を安定させ、コーナーを脱出する際には4WDが縦方向にトラクションを稼いでくれる。実に見事な体さばきである。

しかしSTIパーツを付けたフォレスターは、その上を行った。正確に言うと、よい部分をさらに伸ばし、足りない部分をきれいに補っていた。まず明らかによくなったのはステアリングの初期応答性で、前述した回頭性のよさに、操舵の正確さが備わった。さらにフロントタイヤの接地感が明瞭なため、ステアリングをしっかりと切り込んでいくことができる。

車台の“強靭(きょうじん)さ”“しなやかさ”を追求する「体幹チューニング」をテーマに用品を開発するSTI。今回は「インプレッサスポーツ」(左)と「フォレスター」(右)の2台を持ち込んだ。
車台の“強靭(きょうじん)さ”“しなやかさ”を追求する「体幹チューニング」をテーマに用品を開発するSTI。今回は「インプレッサスポーツ」(左)と「フォレスター」(右)の2台を持ち込んだ。拡大
「フォレスター」についてはノーマル車と用品装着車の比較試乗ができたため、両者の違いをより明確に感じ取ることができた。
「フォレスター」についてはノーマル車と用品装着車の比較試乗ができたため、両者の違いをより明確に感じ取ることができた。拡大
ホイールは、リム部の成形にスピニング工法を用いることで、軽量化を図るとともに高い剛性を確保。17インチと18インチの2サイズが用意される。
ホイールは、リム部の成形にスピニング工法を用いることで、軽量化を図るとともに高い剛性を確保。17インチと18インチの2サイズが用意される。拡大
STIパフォーマンスパーツが“フル装備”された「フォレスター」。ステアリングの初期応答性の高さや、操舵に対するクルマの動きの正確さに、その効果が見て取れた。
STIパフォーマンスパーツが“フル装備”された「フォレスター」。ステアリングの初期応答性の高さや、操舵に対するクルマの動きの正確さに、その効果が見て取れた。拡大

固めるのではなく、引っ張る ――スバル・インプレッサスポーツ STIパフォーマンスパーツ装着車

圧巻だったのは、より全高が低いインプレッサスポーツだ。サスペンションはしなやかなのに、そのコーナリングはキレ味と安定性が両立している。コーナリングスピードはかなり高まっているが、4輪の接地感が明瞭だから、そこに怖さがない。いやそれを通り超して、楽しくさえ思えてくる。タイヤは無粋なスキール音を発することもなく、スタビリティーコントロールも介入しないのである。

これこそが、フレキシブルタワーバーとドロースティフナーの効果なのだという。STIのスポークスマンでもある辰巳英治総監督は、「コーナリング性能を高めるためにアウト側のグリップばかり気にしがちですが、通常領域では内輪接地を高めた方が、クルマはよく走るのです」と語る。

また「いたずらにボディー剛性を上げることもよいとは思えない」とも強調した。例えばストラットタワーやフロントサブフレームを剛体で連結するにしても、実際にねじり剛性を上げるためにはかなりの重量増が必要となり、局部剛性が上がったことでかえって操作性を悪くすることもある。またそのしわ寄せが、他の部分に表れる場合もあるという。

対してSTIのフレキシブルパーツは、“引っ張る”ことでテンションをかけ、内輪の接地性を高めようとする。押す・引くの方向には剛性を発揮しながら、路面のギャップといった別方向からの入力は、いなすのだという。例えばタワーバーでは、中央にピロボールが用いられている。ドロースティフナーはスプリングを内蔵し、装着状態からテンションをかけてサブフレームとボディーの間を引っ張っているのである。

とはいえ、必要な部分はきちんと剛性を高める。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の採用はスバル車のボディー剛性を大きく引き上げたが、水平対向エンジンとトランスミッションには変更がないため、これを支持するクロスメンバーも、まだ昔のままなのである。そして、そこでの“ねじれ”や“戻り”を抑制するために、サポートフロントキットが生み出されたのだという。

もはやその開発の領域は、メーカーがコストの関係から踏み込めない部分にまで及んでいる。まさにメーカー直系のワークスにしかできない調律。それすなわちワークスチューニングの世界なのである。

(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

エアロパーツやボディー補強部品、サスペンションと、広範な用品を取りそろえるSTI。これらの開発には、SUPER GTやニュルブルクリンク24時間レースなど、モータースポーツのノウハウが取り入れられている。
エアロパーツやボディー補強部品、サスペンションと、広範な用品を取りそろえるSTI。これらの開発には、SUPER GTやニュルブルクリンク24時間レースなど、モータースポーツのノウハウが取り入れられている。拡大
空力パーツについては、「車体に空気を引き付ける」「巻き込まないよう後方に飛ばす」と、部位ごとにメリハリをつけて開発。車体がふわふわする感覚を抑え、ドライバーが疲れにくい走りを追求している。
空力パーツについては、「車体に空気を引き付ける」「巻き込まないよう後方に飛ばす」と、部位ごとにメリハリをつけて開発。車体がふわふわする感覚を抑え、ドライバーが疲れにくい走りを追求している。拡大
フロント左右のストラットタワーをつなぐフレキシブルタワーバー。アルミ製のタワーバーを中央で分割し、間にリンクボールを挟んでいる。
フロント左右のストラットタワーをつなぐフレキシブルタワーバー。アルミ製のタワーバーを中央で分割し、間にリンクボールを挟んでいる。拡大
車体とクロスメンバー間に設置するフレキシブルドロースティフナー。スプリングによって適度なテンションをかけ、走行中のシャシーのしなりを補正する。
車体とクロスメンバー間に設置するフレキシブルドロースティフナー。スプリングによって適度なテンションをかけ、走行中のシャシーのしなりを補正する。拡大
STIのパーツ開発には、クルマそのものの性能向上に加え、ドライバーに「運転がうまくなる機会を提供したい」という思いが込められている。
STIのパーツ開発には、クルマそのものの性能向上に加え、ドライバーに「運転がうまくなる機会を提供したい」という思いが込められている。拡大
トヨタ・スープラRZ TRD用品装着車
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テスト車のデータ

トヨタ・スープラRZ TRD用品装着車
(ベース車:トヨタ・スープラRZ)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1865×1290mm
ホイールベース:2470mm
車重:1520kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340PS(250kW)/5000rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR19 96Y/(後)275/35ZR19 100Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4S)
燃費:12.2km/リッター(WLTCモード)
価格:702万7778円/テスト車=--円
オプション装備:--
装着部品:GRフロントスポイラー(35万2000円)/GRサイドスカート(38万5000円)/GRリアサイドスポイラー(17万6000円)/GRサイドドアガーニッシュ(40万7000円)/GRトランクスポイラー(22万円)/GR19インチ鍛造アルミホイール(70万4000円)/GRカーボンナンバーフレーム(19万8000円)/パフォーマンスダンパー<試作品>(--円)/サスペンションキット<試作品>(--円)
※価格はいずれも消費税10%を含む。

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:996km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

トヨタ・スープラSZ-R TRD用品装着車
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トヨタ・スープラSZ-R TRD用品装着車
(ベース車:トヨタ・スープラSZ-R)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1865×1295mm
ホイールベース:2470mm
車重:1450kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258PS(190kW)/5000rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1550-4400rpm
タイヤ:(前)255/35ZR19 96Y/(後)275/35ZR19 100Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4S)
燃費:12.7km/リッター(WLTCモード)
価格:600万9259円/テスト車=--円
オプション装備:--
装着部品:GRフロントスポイラー(35万2000円)/GRサイドスカート(38万5000円)/GRリアサイドスポイラー(17万6000円)/GRサイドドアガーニッシュ(40万7000円)/GRトランクスポイラー(22万円)/GR19インチ鍛造アルミホイール(70万4000円)/パフォーマンスダンパー<試作品>(--円)
※価格はいずれも消費税10%を含む。

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:154km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

トヨタ・プリウスA“ツーリングセレクション”アグレッシブスタイル
トヨタ・プリウスA“ツーリングセレクション”アグレッシブスタイル拡大

トヨタ・プリウスA“ツーリングセレクション”アグレッシブスタイル
(ベース車:トヨタ・プリウスA“ツーリングセレクション”)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4575×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1380kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:142N・m(14.5kgf・m)/3600rpm
モーター最高出力:72PS(53kW)
モーター最大トルク:163N・m(16.6kgf・m)
システム最高出力:122PS(90kW)
タイヤ:(前)215/40ZR18 89Y/(後)215/40ZR18 89Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:37.2km/リッター(JC08モード)
価格:306万2400円/テスト車=--円
オプション装備:--
装着部品:エアロパーツセット<LED付き>(19万2500円)/フロントバンパーカナード(4万4000円)/エアロドアミラーフィン(2万2000円)/ハイレスポンスマフラー (13万2000円)/リアトランクスポイラー(4万1800円)/フロントバンパーガーニッシュ(2万7500円)/バックドアガーニッシュ(7700円)/リアバンパープロテクター(7700円)/ルーフガーニッシュ(2万2000円)/ルーフサイドガーニッシュ(1万7600円)/MCBモーションコントロールビーム(8万8000円)/メンバーブレース(6万6000円)/18インチアルミホイール「TF9」タイヤセット(36万7400円)/セキュリティーロックナット(3万5200円)/ドアハンドルプロテクター(6600円)/ナンバープレートボルト<セキュリティー付き>(6050円)/プッシュスタートスイッチ(1万5400円)
※価格はいずれも消費税10%を含む。

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:916km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

スバル・フォレスターX-BREAK STIパフォーマンスパーツ装着車
スバル・フォレスターX-BREAK STIパフォーマンスパーツ装着車拡大

スバル・フォレスターX-BREAK STIパフォーマンスパーツ装着車
(ベース車:スバル・フォレスターX-BREAK)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1815×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:184PS(136kW)/5800rpm
最大トルク:239N・m(24.4kgf・m)/4400rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98V/(後)225/55R18 98V(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)/13.2km/リッター(WLTCモード)
価格:297万円/テスト車=--円
オプション装備:--
装着部品:STIエアロパッケージ<STIフロントリップスポイラー[シルバー]+STIフロントサイドアンダースポイラー+STIサイドアンダースポイラー[シルバー]+STIエアロガーニッシュ+STIリアサイドアンダースポイラー>(21万8900円)/STIフレキシブルタワーバー(3万6300円)/STIフレキシブルドロースティフナー(3万4100円)/STIサポートフロントキット(5万1700円)/STI 18インチアルミホイール<18×7.0J+48>(20万0200円)/STIセキュリティーホイールナットセット(3万6300円)/STIドアハンドルプロテクター(8800円)/STIアンチグレアドアミラー<LED、販売終了>(--円)/チェリーレッドストライプ<参考装備>(--円)/パナソニック ナビゲーション<参考装備>(--円)
※価格はいずれも取り付け工賃および消費税10%を含む。

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1万2129km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight STIパフォーマンスパーツ装着車
スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight STIパフォーマンスパーツ装着車拡大

スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight STIパフォーマンスパーツ装着車
(ベース車:スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1775×1480mm
ホイールベース:2670mm
車重:1400kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:154PS(113kW)/6000rpm
最大トルク:196N・m(20.0kgf・m)/4000rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92W/(後)225/40R18 92W(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:15.8km/リッター(JC08モード)
価格:266万2000円/テスト車=--円
オプション装備:--
装着部品:STIスタイルパッケージ<STIフロントアンダースポイラー+STIサイドアンダースポイラー+STIリアサイドアンダースポイラー>(14万8500円)/STIリアルーフスポイラー(5万0600円)/STIドアハンドルプロテクター(9350円)/STIフレキシブルタワーバー(3万6300円)/STIフレキシブルドロースティフナー(3万4100円)/STIサポートフロントキット(5万1700円)/STIラテラルリンクセット(6万2700円)/STIパフォーマンスマフラー&ガーニッシュキット(15万0700円)/STIシフトノブ CVT(2万5300円)/STIプッシュエンジンスイッチ(1万9800円)/STIアンチグレアドアミラー<LED、販売終了>(--円)/STI 18インチアルミホイール<18×7.5J+55>(20万0200円)/STIホイールナットセット(2万2000円)/ラジエーターキャップ(4840円)/オイルフィラーキャップ(1万1880円)/バッテリーホルダー(1万1880円)/パナソニック ナビゲーション+ETC車載器<参考装備>(--円)
※価格はいずれも取り付け工賃および消費税10%を含む。

テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2万6850km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹

山田 弘樹

ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

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