ルノー・トゥインゴEDC(RR/6AT)
日本のためのコンパクトカー 2019.10.29 試乗記 ルノーのAセグメントハッチバック「トゥインゴ」のマイナーチェンジモデルに試乗。単なるモデルライフ半ばのテコ入れかと思いきや、さにあらず。こだわり抜いた装備選定や価格設定など、まさに“日本のためのコンパクトカー”とも言うべきクルマに仕上がっていた。内外装の質感と利便性が向上
トゥインゴは欧州最小クラスとなるAセグメント市場で2番目のシェアを占めており、それは日本の輸入車市場でも同様である。あからさまにドイツ車偏重の日本輸入車業界において、セグメント2位という高順位を確保するルノーはトゥインゴだけだ。まあ、ルノー・ジャポン最大の稼ぎ頭である「カングー」をセグメント1位と表現することも可能だが、カングーの場合、日本ではこれまで長らく競合車不在だったから、いわば不戦勝にすぎない。
もっとも、日本の輸入Aセグメント市場も子細に観察すれば、他を圧倒する不動の横綱「フィアット500」以外には、トゥインゴと「フォルクスワーゲンup!」「フィアット・パンダ」くらいしかない実質4台の過疎セグメント(!?)ではある。それでも、きちんと競合車がいるセグメントで2番手を張るトゥインゴは、ルノー・ジャポンとしては貴重な存在だ。
そんなトゥインゴに実施された今回の手直しで、とくに留意されたのは内外装の質感アップと細かな利便性向上だそうである。
エクステリアでは、前後ランプに最新ルノー車に共通するデザインの特徴である「Cシェイプ」がLEDで入れ込まれるようになり、新デザインの前後バンパーは同色部分が明らかに広がって、一般的な意味での高級感は確実に増した。また、細かいところでは、ガラステールゲートのオープナースイッチが従来のリアバンパー(のナンバープレート部分)から、リアワイパーの支点部分の隠しボタンに移設された。これも純粋な操作性向上や手が汚れにくくなったといった意味で明確な改良といっていい。
インテリアではインパネ中央に7インチカラー液晶タッチパネルが鎮座するとともに、シフトレバー前方からリアシート足もとまで伸びる大容量のセンターコンソールが追加された。このセグメントでこれほど立派で本格的なコンソールが備わる例はほとんどなく、一般的な意味での高級感はここでも増している。
ルノー伝統の操作性
これまでトゥインゴの日本仕様は本国でも最上級となる「インテンス」と、本国では真ん中になる「ゼン」という2グレード構成だったが、今回のマイナーチェンジから1種のみのモノグレードとなった。ちなみに、今後はキャンバストップやMT車などのバリエーションも追加される可能性が高いが、モノグレード戦略は変わらないようだ。
よって、今回のインテリア装備の目玉である7インチ液晶パネルもセンターコンソールも、当然ながら標準装備である。
すでにご承知の向きも多いように、この7インチカラー液晶は、当該アプリをダウンロードしたスマホを接続すれば「Apple CarPlay」や「Android Auto」がそのまま使える車載インフォテインメントシステムで、ルノー・ジャポンでは「イージーリンク」と呼ぶ。
さらにいうと、このイージーリンクと新設されたセンターコンソールはいわば“コンビ”の装備でもある。コンソールの最前部にはUSB差し込み口がしつらえてあり、接続したスマホを無造作に放り込んで使うことを想定したデザインなのは明らかだ。しかも、助手席のスマホも充電できるようにUSBが2個用意されるのも親切である。
そのインフォテインメント機能の操作はタッチパネルのほか、ステアリング上のスイッチで音声認識機能も起動できる。ちなみに、筆者はこの手のデジタルモノにまるで疎いオジサンのひとりだが、自分のアンドロイドスマホを見よう見まねで接続しただけで、すぐにナビや音声認識が使えたことは素直に嬉しかった。
「こういう直感的な操作性はルノー伝統のこだわりなんです」とはルノー・ジャポン氏の弁。見てみると、タッチ操作や音声認識に加えて、ボリュームノブやホームボタンなどハードスイッチもあえて適度に残されている。さらによく見ると、そうしたスイッチ類がきちんと右ハンドル配置になっているのは、ルノーとしては快挙かもしれない(笑)。
200万円以下へのこだわり
今回のマイチェンモデルが本国で発表されたのはこの2019年の春のことで、新色のマンゴー風オレンジが訴求カラーとなるのは本国も同様である。ただ、目ざといルノーオタクなら、この春にグローバルで広く公開されたトゥインゴの写真と、この日本仕様に微妙なちがいがあることに気づくかもしない。具体的には、グリル内部やサイドプロテクター、リアバンパーにあしらわれていたメッキが日本仕様では省略されており、あの写真では同色だったサイドプロテクターはブラックになっているし、サイドストライプのデザインも異なる。
新しいトゥインゴがモノグレードとなるのは前記のとおりだが、それはあくまで日本にかぎったことだ。本国では今も3つのグレードが用意されており、最上位がインテンス、その下にゼン……という構成も以前と変わりない。で、各部の質感や装備レベルの向上を受けて、本国では価格も少し上がっている。
対して、今回の日本仕様は「6段デュアルクラッチ変速機(DCT)に、イージーリンクとアルミホイール、革巻きステアリングなどを標準装備して200万円を切る!」という目標のもとに仕様が吟味された。ルノー・ジャポン氏によると、従来どおりのインテンスでは200万円以下におさめられなかった。そこで、あえて中間グレードとなるゼンをベースとして、本国ではオプションあつかいとなるこれらの装備をひとつひとつ追加することで、ギリギリ198万6000円の価格にこぎつけたという。
ちなみに、最近話題の先進運転支援システムについては、トゥインゴに備わるのは車線逸脱警告のみ。こっち方面はいまだ貧弱というほかないが、マイチェン前はなぜか限定車専用だった同装備が、今回から標準化されただけでも進歩といえば進歩だ。
評価の割れる乗り味
デザインや装備類のアップデートに比べると、メカニズム面の変更はほとんど公表されていない。数値的には0.9リッターターボの出力が2PS上がっているが、これは欧州の新排ガス規制“ユーロ6D”に対応するために実施された制御のブラッシュアップによる結果的なものだという。実際に乗ってみても、さすがに2PSのちがいを体感するのは不可能に近い。
シャシー方面の変更は本国でも特筆されていない。ただ、本国情報によると主に空力のために車高が約10mmローダウン(日本での諸元値は公差範囲内として変更なし)されたほか、フロントバンパーの縦型スリットやディフューザー形状となったリアバンパーによって、空気抵抗は減少しているという。
その結果としての新しいトゥインゴの乗り味については、清水草一さんが『webCG』の連載で“マイチェン前のほうがパワステもエンジンも軽快”と評している……かと思えば、別の同業者は“新しいほうが乗り心地も操縦性も良くなった”と語るなど、評価が割れている。
個人的には、今回の試乗で走り方面の変更による効果を明確に感じることはできず、都合2日間の試乗でも“いつものトゥインゴ”という印象の域を出ない……というのが正直な感想である。ただ、以前のインテンスに標準装備されていたステアリングのバリアブルレシオ機構が、新しい日本仕様では省かれるからか、あるいはローダウンや空力性能改善の効果なのか、はたまた本国デビューから約5年半、日本発売からでも4年という歳月での地道なランニングチェンジのたまものか。とにもかくにも、ステアリング反応がさらにリニアに、そして確実な手応えが増した感はある。
同じくパワートレインの印象も指摘するほどの変化は感じなかった。このセグメントとしては贅沢なDCTは自慢だが、意外にピーキーなトルク特性やリアエンジンレイアウト特有のむずかしさなのか、DCTのわりに市街地でどうにもギクシャクするクセも相変わらずだ。
「GT」が欲しい人はお早めに
ステアリングをフルに切ると前方の視界が横っ飛びするほどの小回り性能など、トゥインゴは混雑した市街地を小気味よく駆けるパリっぽいキャラクターを前面に押し出す。しかし、小排気量ターボ+DCTのパワートレインに起因するクセもあって、日本では高速になるほど印象が好転するのも、トゥインゴの変わらぬ特徴である。
低速では少しガタピシする乗り心地や、確実性が増したとはいえちょっと軽すぎの感があるパワステも、速度を増すごとにどんどん落ち着いてくるのが、昔ながらの“欧州風味”である。日本の制限速度の100km/hに達してもフラット感はさらに向上していくので、おそらくはフランスの高速制限速度である130km/hあたりにスイートスポットがあるのでは……と想像される。
こうしてトップギアのままスロットルペダルをじわりと微調整するような場面になると、この3気筒ターボもドンピシャにリニアな荷重移動に大いに役立つようになるのだ。
ところで、今回のマイチェンを機に、英国市場でのトゥインゴの販売が終了したことは、現地ではちょっとしたニュースとなった。しかも、オーストラリアでは最初からトゥインゴは販売されていない……といった事実から想像されるとおり、右ハンドルのトゥインゴは今や日本専用商品となってしまった。
欧州車の右ハンドルの生産は英国仕様から立ち上がって、追って日本仕様がスタートするケースが大半である。しかし、今回のトゥインゴ(の右ハンドル)は当然のごとく、いきなり日本仕様の生産から立ち上がっている。前記のようにメディアの試乗評価にバラツキがあるのは、生産初期特有の個体差がこれまで以上に生じているからかもしれない。
また、車体左側のエンジン吸気口が従来の「GT」と同じダクト形状になったのも今回の特徴だが、新しいトゥインゴにそのGTが設定される予定はない。ルノー・ジャポンはそれを見越してマイチェン直前にGTを多めに輸入したそうだが、それもすでに市中在庫のみとなっているらしい。トゥインゴGTがほしい向きは要注意だ。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ルノー・トゥインゴEDC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3645×1650×1545mm
ホイールベース:2490mm
車重:1020kg
駆動方式:RR
エンジン:0.9リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:92PS(68kW)/5500rpm
最大トルク:135N・m(13.8kgf・m)/2500rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81H/(後)185/60R15 84H(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:198万6000円/テスト車=201万9000円
オプション装備:フロアマットセット<ステッチ>(1万9800円)/ETCユニット(1万3200円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:3063km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:432.5km
使用燃料:34.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.6km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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