フェラーリF8トリブート(MR/7AT)
御せる神馬 2019.10.28 試乗記 40年以上の歴史を積み重ねてきたフェラーリのV8モデルにオマージュをささげる新型車「F8トリブート」。その走りは、驚くほどの速さと乗りやすさを両立させた“チャレンジの集大成”というべきものだった。止まらない進化
フェラーリの販売の主力となる、V8ミドシップラインの刷新。それすなわち、スーパーカーのセグメントにおいて、何かしらのパラダイムが変わる可能性を秘めていることに異論はないだろう。
F8トリブートは、前型にあたる「488GTB」から搭載される3.9リッター直噴V8ツインターボのさらなるポテンシャルアップに加えて、エアロダイナミクスの刷新やシャシーコントロールシステムの改善など、運動性能にまつわる隅々にまで手が加えられた。それだけでなく、内装も基本造作や装備類が現代的にアップデートされるなど、スタティックな商品力も強化されている。なにより、「458イタリア」から続いたデザインの流れを更新し、フェラーリ独自のスタイリングをまとったこともファンの中では大きな意味を持つだろう。
“トリブート”という名に純然たる内燃機関車両との別離を思い浮かべるのはやむなしとはいえ、その点についてフェラーリの側からは何の言及もない。むしろ一時代を築いた型式名称F142系アーキテクチャーに対する感謝をその集大成に込めたと受け取ってほしいようだ。
搭載されるV8ユニットは、488GTBから受け継いだF154型。ボア×ストロークは86.5×83mmと、「GTC4ルッソT」&「ポルトフィーノ」にも搭載されるそれ、あるいはマセラティの「クアトロポルテ」&「レヴァンテ」用に供給されるそれの、いずれともストロークの数値が異なるオリジナルスペックで、排気量は3902ccとなる。
骨格素材はオールアルミを継承、そして中身は「488チャレンジ」や「488ピスタ」のノウハウを投入し、コンロッドをチタン製とするなどの材料置換を施したほか、クランクシャフトやフライホイールは1kg以上の軽量化が施され、慣性質量は17%低減されている。もちろんバルブやスプリング、カムなどのヘッド系も専用チューニングが施され、併せてピストンも変更。燃焼室圧は10%の向上をみている。
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