第596回:新型「B3セダン」を東京モーターショー2019で世界初公開 アルピナ社の今と未来を、ボーフェンジーペン社長に聞く
2019.10.31 エディターから一言 拡大 |
海外ブランドがほとんど姿を消した今回の第46回東京モーターショー(開催期間:2019年10月23日~11月4日)にも独アルピナはこれまで通りブースを構え、世界初公開となる新型「B3セダン」をお披露目した。1987年以降、欠かすことのない17回連続の出展からは、日本市場重視の姿勢が見てとれる。来日したアルピナ社のアンドレアス・ボーフェンジーペン社長にその理由と同社の今、そして展望を聞いた。
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今も昔も独立独歩
あいさつ程度に言葉を交わしたことはあるが、きちんと時間を割いてもらってお話を伺うのは初めてである。せっかくの貴重な機会ゆえに、気になっていた細かなうわさもあらためて確認させてもらった。たとえば、アルピナはワインビジネスがもうかっているから、台数が少なくてもやっていけるのだ、といううわさがある。それは本当だろうか?
「いえいえ、それはおっしゃる通り都市伝説のようなものでしょう」とボーフェンジーペン社長。「実際のところ、ワイン部門は全体の売り上げの1割程度です。自動車部門270人に対して、ワインビジネスに関わるのは15人しかいません」
それにしても、世界中の自動車メーカーがグループ化していく中でアルピナは依然として独立独歩である。自動車そのものが大きく変化していく今後もアルピナはそのユニークなポジションを守っていくのだろうか。
「正直に言えば、15年先、20年先のことは私にもわかりません。しかし、私たちには54年にわたるBMWとの協力関係があり、幸いなことに製品も高い評価を受けています。今もアルピナはファミリービジネスとして独立したマニュファクチャラーです。大切なのは、独立しているからこそ、私たちには自分たちの製品をどう考えるかの自由があるということです」
日本上陸40周年の節目
E12型「BMW 5シリーズ」をベースにした「BMWアルピナB7ターボ」が初めて日本に上陸してから、今年(2019年)はちょうど40年の節目である。1987年の初参加から一度も欠席せずにアルピナ(総代理店のニコル・オートモビルズとともに)が東京モーターショーに皆勤していることは前述の通り。それほど日本はアルピナにとって有数のマーケットであり(多い時には年間生産台数の4分の1が日本で販売される)、根強いファンも多いのだが、実際のところ、その名は聞いたことがあっても詳しいことはよく知らないという方が大半かもしれない。
2015年に創立50周年を迎えたとはいえ、何しろ生産台数が限られているため、実際に見て乗った経験のある人は少なく、また普通の自動車メーカーのようにテレビコマーシャルなどで自己主張しないので、いまだにしょせんBMWのチューニングカーだろう、というような不正確な捉え方をしている人も少なくない。
あらためて繰り返せば、2015年に創立50周年を祝ったアルピナ(正式社名は創業者の名前を冠した「アルピナ・ブルクハルト・ボーフェンジーペンGmbH+Co.KG」)は、「BMW 1500」用のキャブレターの開発からスタートし、歴代のBMW各車をベースに極めて端正で高品質、そして高性能なセダンとクーペ(最近ではついにSUVも加わった)をつくり続けて来たユニークな自動車メーカーである。
れっきとしたマニュファクチャラーとして認められているうえに、たとえばメルセデス・ベンツのブランドのひとつとしてグループ企業となっているメルセデスAMGとは対照的に、現在に至るまでアルピナはBMW本体との資本関係を持たないが、それでいながらBMWとの深い協力関係を維持しているという実に珍しいポジションを守り続けている。生産能力は今でも年間最大1600台というから、フェラーリやランボルギーニはもちろん、AMGとは文字通りけた違いである。
「ダブルシフトを組めばもう少し増やせるのですが、今のところその必要があるとは考えていません」とボーフェンジーペン社長は言う。
アルピナ製EVは登場するか
「BMWの純粋なEVは『i3』しかなく、ハイブリッド車も4気筒エンジンをベースにしたモデルしか今のところ存在しません。それがアルピナの顧客が求めるものかというと、そうは思えません。もちろん、検討はしていますが、技術の進化を見極めながらということになるでしょう。48Vのマイルドハイブリッド(の採用)については、おそらく今後10年以内には内燃エンジンはすべてそうなると考えています」
実は10年前にアルピナは、エミッション対策などを見据えて技術センターを開設したのだという。
「小規模ゆえ今のところRDE(リアルドライビングエミッション)は免除されていますが、今後に備えなければなりません。CO2排出量に関しては、販売台数ごとの基準に従ってEU委員会と交渉し、その規定を満たさなければなりません。安全面はBMWに委託していますが、エンジンのエミッション、ノイズ、そしてブレーキ性能は私たちが独自にホモロゲーションを取る必要があります」
実はEU域内の販売台数が1万台以下、および1000台以下にボーダーラインがあり、小規模メーカーにはそれぞれの排出基準が定められているが、少しずつ台数が増えてきたアルピナは1000台のラインに達しつつあるという。
「私たちの本分がロードカーであることに変わりはありません。ただほとんど知られていないことでしょうが、カスタマーレーシングカーの『BMW M6 GT3』のエンジンの初期ロットはアルピナが組み立てたものです。ラリーレイド用のMINIのディーゼルユニットもアルピナが担当しました。自分たちで参加していなくてもBMWモータースポーツ社を通してモータースポーツとも関わっています」
この話を聞いて思い出したことがあり、古い資料を探ってみたら、やはり1998年のニュルブルクリンク24時間レースのウイニングクルーにハンス・ヨアキム・シュトゥックやマルク・デュエツと並んでアンドレアス・ボーフェンジーペンの名前があった(「BMW 320d」でディーゼル車としての初制覇)。彼は若い頃にはフォーミュラやツーリングカーレースで活躍したレーシングドライバーであり、その後BMWに加わり、「Z8ロードスター」の開発に携わったエンジニアでもある。ごく普通に家業を継いだだけではない、2代目社長のかじ取りに今後も注目である。
(文=高平高輝/写真=峰 昌宏、webCG/編集=櫻井健一)
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高平 高輝
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