アウディA1 1.4TFSI/フォルクスワーゲン・ポロTSI【試乗記(前編)】
似ていない兄弟(前編) 2011.06.05 試乗記 アウディA1 1.4TFSI(FF/7AT)/フォルクスワーゲン・ポロTSIハイライン(FF/7AT)……386万円/298万7000円
プラットフォームを共有する「アウディA1」と「フォルクスワーゲン・ポロ」。見た目も性格も全く違う2つのモデルの魅力を探るべく、リポーターは房総半島を目指した。
きっぱりと分かれる
蕎麦とうどんは、競合しない。ランチでカレーかラーメンか迷うことはあっても、蕎麦かうどんかは最初から決まっている。同じジャンルの食べ物なのに、どちらにも断固たるファンがいて、交わることがない。
「アウディA1」と「フォルクスワーゲン・ポロ」は、同じBセグメントに属すだけでなく、プラットフォームを共用する兄弟車である。でも、この2台でどちらにするか迷う人は、あまりいないように思う。共通点より相違点のほうが、はるかに目立つ。好みはきっぱりと分かれるはずだ。蕎麦とうどんほどに。
今回乗り比べたのは、A1はもっともベーシックなグレード、ポロは装備が豪華な上級グレードだ。A1が289万円でポロが242万円と47万円の差で、同一価格帯とは言えない。オプションを加えた価格はそれぞれ386万円と298万7000円で、さらに価格差は広がる。
エンジンはA1が1.4リッターターボ、ポロが1.2リッターターボで、出力は122psと105psだ。どちらも小排気量+ターボで高出力&低燃費を狙うユニットである。トランスミッションはA1が7段Sトロニック、ポロが7段DSG、要するに同じだ(ギア比は違う)。
3ナンバーと5ナンバーに分かれるのは、全幅の違いによる。A1が1740mmで、ポロは1685mmなのだ。全長は逆にポロのほうが25mm長い。大きく異なるのはタイヤサイズである。A1は215/45R16(オプション)の扁平(へんぺい)タイヤを履くが、ポロは185/60R15と穏健派だ。この違いは、乗り味に決定的な差をもたらしていたように思う。
フォルクスワーゲンの公式
「A1」も「ポロ」も、『webCG』ではさんざん取り上げていて、技術的な側面などについては論じ尽くされている。ここでは屋上屋を架すことはぜず、あくまで表層的な印象の違いから比べてみようと思う。うっかり自分の嗜好(しこう)に合わないほうを選んだらつまらないからだ。どちらがいいクルマか、という話ではない。結論から言えば、どちらもいいクルマなのだ。目指す境地が違うだけ。
乗り比べた道は、高速道路と一般道を約250kmのコースである。ワインディングロードは含まず、普通のファミリードライブを少しばかりハイペースにしたぐらいの乗り方だ。東京都心から首都高速を使い、レインボーブリッジからアクアラインを経て房総半島を目指した。
まずは、ポロに乗った。2009年10月の発売当初は1.4リッター自然吸気エンジンを積んでいたが2010年5月から1.2リッター直噴ターボ「TSI」ユニットに切り替えられた。フォルクスワーゲンが推進する<低排気量+ターボ=低燃費+高出力>の公式を、もっともわかりやすく体現しているモデルだ。
フォルクスワーゲンが小型車を扱う手つきには、昔から突出した巧みさがある。初代「ゴルフ」サイズであるポロには、その老練の技が詰め込まれていて、隙を見せない。先代も素晴らしい出来だったが、前期型では組み合わされた4段ATがいささか走りをスポイルしている気味があった。後期型の6段ATを経て現行型では7段DSGを得、文句のつけようのないパワートレインとなった。
トンネルを直進する快楽!
105psというパワーは、何ら不足を感じさせないものである。低回転から過給を開始するターボは、自らの存在感をアピールすることなく十分な力を供給してくれる。アクセルに反応する動作は、とても素直なものだ。ためらうことなく回転を高め、実に従順に速度を増していく。右足とクルマのつながりがダイレクトかつナチュラルだ。作りごとめいた演出がない。いや、そのナチュラルさこそが、高度な演出のたまものなのかもしれないが。
首都高速横羽線の浮島ジャンクションから、アクアラインへと進入した。すぐに海底トンネルに入り、最短距離の直線で東京湾を横断する。暗く壁に囲まれた道を、一途に直進する。退屈極まりない、実用一点張りのビジネスルートだ。普段ならひたすら耐え忍ぶばかりの時間だが、ふと、自分が運転を楽しんでいることに気づいた。不可解である。アクセルもステアリングも、ほとんど操作していないのに。
たぶん、「ポロ」と路面との関係性そのものが、快楽を生んでいたのだ。滑らかであるとはいえ、細かな凸凹が絶えず車体に入力を企てる。それを絶妙な仕草であしらいながら、高速で移動しているという感覚を体に伝えてくる。トンネル内で視覚的なノイズがないことが、微細な官能の揺れを受け止める環境を用意したのだろう。
はたして、トンネルを抜けて海ほたるを通過すると、マジックは消えてしまった。視覚が復活すると、やはり刺激の欠如した直進は手持ちぶさたである。前を行く「A1」を適度な距離をとって進んでいると、先を急ぐクルマが幾台も通りすぎていく。見比べるともなく眺めているうちに、A1の後ろ姿がなんともすてきな引力を放っていることを認めることになった。(後編につづく)
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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