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第164回:ポルシェ全然知らない人間

2020.02.25 カーマニア人間国宝への道 清水 草一

新型「ポルシェ911」にプチ試乗

先日この連載で、996型「911カレラ ティプトロニックS」を“おっさんポルシェ”として取り上げ、大きな反響(?)をいただいたが、そうこうしている間に、ついに私にも新型「911」すなわち992型に試乗する機会が巡ってきた。JAIAの大試乗会で抽選が当たったのです! おかげで「カレラS」と「カレラ4S」に乗ることができました、ワーイ!

私は自動車ライターをなりわいとしているが、911を含めポルシェにはとんと疎い。正確に記述すると、ポルシェ911はカーマニアにとってウルトラスーパー普遍的なアイドルであり、カーマニア中のカーマニアである自動車ライターの皆さまの中にも愛好者(ヲタク)が大層多い。ヲタクの皆さまは愛の対象物である911について猛烈に詳しいので、相対的に私はド無知の部類に入る。

自分はポルシェに関して無知であると自覚しているがゆえに、いっそこのままのほうがユニークでは? と思っている。自動車メディア界において、“ポルシェ全然知らない人間”は希少。すなわちバリューがある! おかげで大変ニュートラルかつシロートっぽい観点から911を俯瞰(ふかん)することができると自負している。それで得したことはないですが……。

さて、おっさんポルシェが300万円台で買えるのに対して、新型の992型は新車価格1359万円(カレラ)から1804万円(カレラ4S)と大変お高い。

万万が一と思って中古車サイトをのぞいて見たが、カレラが1390万円から、カレラ4Sは1850万円からと、新車価格よりむしろお高くなっておりました。オプションがいっぱい付いてるんでしょうから、それでもお買い得かもしれませんが、いずれにせよおっさんポルシェが夢のように安く感じる。

新型「ポルシェ911」(992型)の車両本体価格は1359万7222円~。写真の「カレラ4S」は1804万8148円~。
新型「ポルシェ911」(992型)の車両本体価格は1359万7222円~。写真の「カレラ4S」は1804万8148円~。拡大
“ポルシェ全然知らない人間”として、新型「911」に試乗。
“ポルシェ全然知らない人間”として、新型「911」に試乗。拡大
当連載第161回で紹介した“おっさんポルシェ”こと「911カレラ」(996型)。オーナーのS氏は300万円台でこのクルマを購入。
当連載第161回で紹介した“おっさんポルシェ”こと「911カレラ」(996型)。オーナーのS氏は300万円台でこのクルマを購入。拡大
ポルシェ 911 の中古車

武骨な乗り味

やっぱり300万円で買えるおっさんポルシェ最高! 911買うなら996型カレラ ティプトロニックSに限る! となってしまったらそれ以上書くことがないので、992型の第一印象に進んでみたいと思います。

まず見た目。これはポルシェ911の文法から一歩も出ていない安心感満点なものだ。誰が見ても911そのもの。911に無知な私でも、911は変わっちゃダメ! ずっとそのままでいて! と思っているので文句ない。やっぱおっさんポルシェの黄ばんだ涙目はダメだよネ!

続いて乗り味についてですが、おっさんポルシェの1000倍シャープ&ダイレクト。パワフルそのものでスーパーエリート的だった! もうまったく別の乗り物! 最新のポルシェこそ最善のポルシェと言いますが、おっさんポルシェだけが激安なのも納得、一緒にするなと言われても仕方あるまい。ますます涙が出るぜ! おっさんポルシェ。

ただ、おっさんポルシェではなく先代の991型に比べると、新型は武骨で戦車っぽくなったような気がして、その点は不満でした。

991型のベーシックグレードはものすごく乗り心地がしなやかで、全体に女性的で大変色っぽかった。それに比べると新型(カレラSとカレラ4S)は武骨!

どっちも試乗したのは15分ぽっちだったので詳しくはわかりませんが、自分の好みとはちょっと違う方向に進化(男性化)したように思えた。

特にカレラ4Sは、あまりにも限界が高すぎて、何も起きない雰囲気で面白くなかった。その点RRのカレラSは、公道レベルでもリアが張り出す感じがあってスキ! そう思いました。

が、なにせ自分はポルシェ全然知らない人間。これで合ってるんだろうか?

そこで私は、ポルシェに詳しいヲタクの人に確かめてみることにした。同業者の山田弘樹君である。

996型の「911」は“涙目”と呼ばれるヘッドランプが外観上の特徴となる。
996型の「911」は“涙目”と呼ばれるヘッドランプが外観上の特徴となる。拡大
新型「911カレラ4S」の走りは限界が高すぎて面白みに欠ける印象。(写真=池之平昌信)
新型「911カレラ4S」の走りは限界が高すぎて面白みに欠ける印象。(写真=池之平昌信)拡大
新型の「カレラS」「カレラ4S」ともに3リッター水平対向6気筒ターボエンジンを搭載。最高出力はともに450PS。(写真=池之平昌信)
新型の「カレラS」「カレラ4S」ともに3リッター水平対向6気筒ターボエンジンを搭載。最高出力はともに450PS。(写真=池之平昌信)拡大
新型「カレラ4S」のインテリア。
新型「カレラ4S」のインテリア。拡大
新型「カレラ4S」のリアビュー。
新型「カレラ4S」のリアビュー。拡大

ポルシェヲタクの見解

山田君の評価はこのようなものだった。

山田:カレラSはフロントサスが柔らかくて、スッと入る感じが良かったです。カレラ4Sはフロントがガッチリし過ぎていて、少し面白みに欠ける。僕はカレラSのほうが好きです。

カレラSとカレラ4Sの違いについては、微妙に理由は違えど好みが一致した。で、全体としてはどうなのか。

山田:992型は991型に比べて、さらにボディーも良くなってるし、当たり前ですけど上を行ってます。ただ992型は、まだ素のカレラに乗れてないんですよね。だから正確なことは言えないんですけど、一番好きなのはパワーも適度な二輪駆動のカレラS。普段乗りだとわからないですけど新型のボディーはすごくて、もう「GT3」じゃなくてもいーや、とさえ思います。出たらまたGT3が良くなっちゃうんでしょうけど。

ポルシェヲタクは、ボディー剛性を猛烈に重視するようである。

山田:991型カレラSでは、雪道で乗る機会があって、時速30kmくらいですけど峠道をずーっとドリフトしながら、ものすごく気持ちよく走ることができたんです。あれでコテンパンに好きになりました。やっぱ911はカレラSです。

991型か992型かよりも、グレードのほうが重要なようだ。さすがヲタク!

山田:ついでに言うと、僕はMTじゃなくても全然オッケーです。今のMTはPDKと共用してるから昔ほど操作感は良くないし、第一ギアがたくさんありすぎて(7段)大変。2ペダルのほうが運転も左足ブレーキが使えたりして奥深さが出せると思うんだけど、マニュアルのほうが人気ですよねぇ。

とにかく991型も992型も、ヲタク的にはカレラSが最高らしい。つまり991型でもいいってことだろう。

私も、991型のカレラ/カレラSは、ものすごく良かったと思っている。雪道は走ってないけど。ということで、次回はその点を、ポルシェ全然知らない人間なりに掘り下げてみたい。

(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

モータージャーナリストの山田弘樹君。(写真=webCG)
モータージャーナリストの山田弘樹君。(写真=webCG)拡大
新型「カレラS」(写真右)と、筆者の愛車、「フェラーリ328GTS」(写真左)。
新型「カレラS」(写真右)と、筆者の愛車、「フェラーリ328GTS」(写真左)。拡大
「ポルシェ911」(991型・写真右)と、筆者のかつての愛車「トヨタ・シエンタ」(写真左)。
「ポルシェ911」(991型・写真右)と、筆者のかつての愛車「トヨタ・シエンタ」(写真左)。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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