第167回:新型フィットは色がイイ
2020.03.17 カーマニア人間国宝への道新型「フィット」に好印象
新型「フィット」は柴犬。柴犬といえば素朴で純朴な和犬。私はNHKの『小さな旅』とか『さわやか自然百景』といった純朴な番組が大好きで、中でも『新日本紀行』は冨田 勲のオープニング曲を聴いただけで目頭が熱くなるのだが、柴犬にはそんな懐かしいイメージがある。
そういったNHKの純朴な番組のファンである私は、自然、フィットに好感を持った。いまどき柴犬なんてうれしいじゃないか! 『新日本紀行』のデジタルリマスター再放送と同じくらいうれしい。
私は、先代フィットHVの7段DCTがとても好きだった。それが「e:HEV」にチェンジし、7段DCTが消えたのは残念ではあるが、新型は走りも含めかなりよかったです。ヤケにコーナリング性能が高くて、その分乗り心地は硬めだけど、視界がいいし室内は広いし燃費もいいしインテリアもいいし自動ブレーキもほぼ最先端だし、ふだんの足にちょうどいい!
考えてみれば、燃費が自慢の小型ハイブリッド車でヤケにコーナリングがいいというのは、以前乗っていた「アクア」に似ている。
アクア、ずっと「カッコ悪いな~」と思いながら乗ってたけど、飽きなかったんだよね。その第一の原因は、私が買った初期型アクアは重心が低くて足が固くて、ステアリングレスポンスがシャープだったから! これを言ってもあまり本気にしてもらえないのですが、「このシャープさは『フェラーリ458イタリア』にソックリだ!」と思っていた。両方のオーナーだった私が断言します。
ふだんの足は主に近所を走るわけなので、フル加速やフルブレーキング、限界コーナリングとは完璧に無縁なれど、フツーに曲がるとき反応よくスッと曲がってくれると、なんだかとっても気持ちいい。それで「カッコ悪いなぁ」と思いながらも、4年半アクアに乗り続けたのでした。
「アクア」に勝る美点
つまり新型フィットは、私にとっては新型アクアだ! アクアがモデルチェンジしないので、代わりにフィットがしてくれた! 7段DCTがなくなって、タイヤとエンジンの直結感が薄らいだ点もアクアっぽい。でも曲がるのが気持ちいいから許しましょう!
フィットのもうひとついい点。それはボディーカラーだ。
新型フィットの2トーンカラーは、国産車としては出色にセンスがいいと思うのです。「ネス(NESS)」のシルバー系+ライムグリーンはスポーツウエアっぽいし、「ホーム(HOME)」のミッドナイトブルービーム・メタリック&シルバーはとっても上品。
それに比べると、「アクアXアーバン」の2トーンは、想像を絶するほどセンスが悪かった。白と紫とか、黒とオレンジとか、これっていったいどういう組み合わせなの!? 色彩感覚おかしくない? と思ったものです。通常のボディーカラーもセンスがなくて、私はヤケクソでオレンジを選んだけど、あのオレンジもクレヨンみたいにベタッとマットでセンスがなかった。
ところが新型フィットは、その色彩感覚がイイ。これは大きな美点だ。クルマの色ってすごく重要だから。
近所のホンダディーラーに、エアーライトブルー・メタリックのフィットが展示してあるのですが、それを見ると「新型フィットのデザインって、こんなに平凡なのか~」とガックリする。
ところが「ネス」の2トーンを見ると「新型フィット、センスイイネ!」と180度変わる。
クルマに無関心な女子は、クルマの形は全部同じに見えるっていうけれど、さすがに色だけは見分けられる。実はクルマって、形より色のほうが重要だったりして。
若きフェラーリ乗りとの再会
というわけで、新型フィットのプレス試乗会にて、買うなら「ネス」のシャイニンググレー・メタリック&ライムグリーンかな~、などと思った私ですが、実は朝、受付にて、とある若者から声をかけられていた。
若者:清水さん! やっと会えました! タカフミです!
それは、広報部員と思われる青年であった。
私:え?(誰?)
若者:覚えてませんか? 以前コーナーストーンズでお会いしました!
私:あ、そういえば……。
数年前、世話になっている中古フェラーリ専門店コーナーストーンズに遊びに行った際、たまたま来店していた青年がいたのでした。彼はその場で中古フェラーリを買いました。確かその時彼は、「H社の研究所勤務です」と語っていた。
国産自動車メーカーに勤める青年が、20代でフェラーリを買う。実に素晴らしいことだと、私もエノテン(コーナーストーンズ榎本 修代表)も感激し、涙を流してよろこんだのでした。その彼と、なぜかフィットのプレス試乗会で再会したというわけです。
若者:あの時清水さんとお話ししたことがきっかけで、広報部への異動を希望して、それがかなったんです!
私:えっ!? そ、そーなの!?
そこから話は、大変マニアックな方向に展開するのでありました。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。