第177回:フェラーリの事故今昔物語
2020.05.26 カーマニア人間国宝への道奇妙な算定基準
前回、自動車保険を「シトロエンDS3」から「フェラーリ348GTS」に入れ替えたら、追加保険料がたったの1万3800円だった! ということを書きましたが、思えばあまりにも不思議な現象だ。車両評価額はDS3が120万円、348が800万円なのに!
そこで、保険証書をよく見直してみたところ、驚愕(きょうがく)の事実が判明しました。
車両保険には、型式ごとに料率クラスというのが御座います。その型式のクルマがどれくらいの損害率かによって、決められておりまする。昔は6段階だったのが9段階になり、2020年からはなんと17段階に細分化されました。
その車両保険の料率クラスが、DS3は12なのに対して、348は9となっておったのです!
フェラーリの車両料率クラスは、常に最高といいますか最悪といいますか、6段階の時は6、9段階なら9が定番だった。17段階なら首席の17でアタリマエだろと思ったら、それがたったの9! しかも欠陥車の誉れ高い348が! 実際に欠陥車だったのは初期型だけみたいだけど、とにかくフェラーリの中でもかなりヤバイであろう348の事故リスクが低く算定されてるってどういうこと!?
そこで私はひらめきました。「フェラーリの事故率そのものが、劇的に下がっているんじゃないか! だから348が9なんじゃないか!」と。
さっそく我が代理店に確認しましたところ、拍子抜けな答えが返ってきました。
「清水さんの348は型式不明扱いでして、型式不明は自動的に9ということになっているんです」(代理店担当者)
ガックリ……。
フェラーリの事故率が減少?
いや、それでも、フェラーリの事故は減っている気がする。なにせ身近で話を聞かなくなっているから!
そこで私は、次なる推測にたどり着きました。
「昔のフェラーリは安全装置がほとんどゼロだったけど、今のフェラーリはとっても安全になって、それで事故が減ったのではないか!? 古いフェラーリも、オーナーの高齢化やスピードへの情熱の低下で飛ばさなくなって、それで事故が減ったのではないか!」と。後者はまんま自分のことですが。
フェラーリの事故といえば、2011年に中国道で発生した、フェラーリ8台を含む多重衝突事故が大変有名です。あれは全世界に衝撃を与えました。
あの事故は、前夜の雨が残った路面で1台のフェラーリがスピンし、そこに後続車が次々と突っ込んだという形でしたが、事故現場の映像を見ると、「F355」と「360モデナ」が多かったもよう。
F355はABSのみ、360はASR(トラクションコントロール)も付いているけど、私の経験では、全開状態ではクルマが横を向いてから効く。ミドシップフェラーリの中でも特に動きがシビアな360は、ケツの滑りが大変速く、横を向いてからトラコンが効いても間に合わない。
中古フェラーリ専門店コーナーストーンズで、多くのフェラーリの自動車保険を扱っている木村洋一氏(あんしん保険コンシェル代表)は数年前、こう語っていた。
「フェラーリの事故の大部分は、高速道路の本線料金所の先で起きています」
つまり、料金所ダッシュで横を向き、そのままガードレールに激突しているというのです! うおおおおーっ!!
でも、「F430」以降は操縦性や安全装置が大幅に改善された。いまだに自動ブレーキは付いてないけど、確実にスピンしづらくなった!
ヤンチャな飛ばし屋さんは、最新のフェラーリが好き。新しいフェラーリが安全になり、危険な(?)古いフェラーリは大事に乗られるようになって、それで事故が減ったのではないか!?
フルサポートがおすすめ
そこで今度は、木村氏に確認してみました。
「確かに事故は減ってますね。以前はスピンアウト全損がけっこうありましたが、ここ最近は何年も大きな事故はありません。自宅の車庫でこすっちゃった程度です。盗難やイタズラも皆無です」
フェラーリというと、盗難やイタズラが心配という方がいまだに多いが、実はフェラーリはあまり狙われないのであります。
盗難はほぼ皆無。近年の自動車ドロは途上国への輸出目的が大部分で、だから「ランドクルーザー」や「ハイエース」が大人気なのですが、フェラーリは途上国で人気がない。盗難届が出たフェラーリは本社に車台番号が記録され照会できるようになったので、先進国での市場価値もない。「一度でいいからフェラーリに乗ってブッ飛ばしてみてぇ!」というイカしたヤングの欲求も、トンと聞かなくなりました。
イタズラも、なぜかフェラーリはあまりターゲットにされない。私の解釈では、フェラーリはあまりにもか弱くデリケートな女王風情なので、どんな非道な人間も傷つけるのをためらうのです。希望的観測ですが。
ともあれ、フェラーリの事故は減っている(たぶん)! クルマの事故全体が減ってるので、当然っちゃ当然だけど。
それでもやっぱりフェラーリを買ったら、フルサポートの車両保険に入っておきたいものです。特にローンで買った場合は、クルマを失ってローンだけが残るという悲劇を生む可能性もありますので、断然加入をおすすめします。
私はかつて限定A(盗難とイタズラのみ担保)やエコノミー(自爆事故は対象外)の片道特攻で頑張ったけど、それは決しておすすめしません。「そんなの、ウチの店では清水さんだけです」と、エノテン(コーナーストーンズ代表・榎本 修氏)にも言われましたしねぇ。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第343回:おやじ、涅槃で待つ 2026.8.31 清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない?
-
第342回:どうしてこんなに高いんですか 2026.8.17 清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?
-
第341回:「スカイアクティブZ」は大丈夫か 2026.8.3 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「マツダCX-5」で出撃した。マイルドハイブリッドのパワートレインと進化したシャシーが織りなす走りを確かめつつ、ディーゼルエンジンがラインナップから消えた3代目CX-5について考えた。
-
第340回:一にエンジン、二にカッコ 2026.7.20 清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは?
-
第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない 2026.7.6 清水草一の話題の連載。いつもの首都高で試乗した「BMW 120d Mスポーツ」の価格が540万円ってマジか! と思っていたら、本国ではなんと4万1750ユーロ(邦貨約770万円)⁉ 安かったころ、もっと小さかったころのBMWに思いをはせた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。

















