フォルクスワーゲン・パサート オールトラックTDI 4MOTIONアドバンス(4WD/6AT)
SUVブームへの一石 2020.07.16 試乗記 フォルクスワーゲンのクロスオーバーモデル「パサート オールトラックTDI 4MOTION」に試乗。ディーゼルエンジン+4WDのパワートレイン、そしてベース車よりも最低地上高30mmアップのシャシーが織りなす、その走りの魅力とは?4WDとディーゼルの組み合わせ
そもそもは“ビートル”の上を行くフォルクスワーゲンブランドのフラッグシップとして企画され、当時の「アウディ80」と共通の縦置きパワーパックを採用。1973年に送り出された初代モデルが「パサート」の起源である。
1988年デビューの3代目以降はアウディ車とのランニングコンポーネンツ共有化が改められ、2015年にフォルクスワーゲングループ最新のFFモデル用プラットフォーム「MQB」を採用したモデルへと刷新されて現在に至るのが、いわゆる「B8」型と称される現行シリーズだ。
今回紹介するのは、フォルクスワーゲンが「ヴァリアント」と称するステーションワゴンボディーをベースに4WDシャシーやSUV風味のコスメティック、いくばくかの専用装備を加えるとともに地上高を高めることなどで実際のオフロード性能向上も意図した、パサート オールトラックTDI 4MOTIONだ。
ちなみに、フォルクスワーゲンがディーゼルエンジンを日本に再導入したのは2018年2月14日。当初は「日本仕様のフォルクスワーゲン車としては20年ぶりのディーゼル」ということも話題となったが、現在ではこのパサート オールトラックをはじめ「ゴルフ/ゴルフヴァリアント」に「ゴルフトゥーラン」「シャラン」「ティグアン」、そして“普通のパサート”と、ディーゼルエンジン搭載のフォルクスワーゲン車はよりどりみどりという状況だ。
しかし、導入が延々と先送りされた揚げ句に、自らのスキャンダルによって電動化へと大きく舵を切らざるを得なくなった今の段階になってからの、こうした日本でのディーゼルモデルの充実ぶりは、皮肉という印象が拭えないものでもある。
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充実の安全・快適装備
オールトラックという固有のモデル名が与えられたとはいえ、前述のようにベースとされたボディーはステーションワゴン版のヴァリアント。従って、広いキャビンに広大なラゲッジスペースというパサートヴァリアントでのパッケージングの特徴は、もちろんそのまま受け継がれている。そもそも、全長は4.8m級で全幅も1.8mをオーバー。さらにホイールベースもほとんど2.8mと、恐らくは多くの人がイメージするであろう以上に大柄なのがパサートのステーションワゴンなのだ。
ちなみに、日本では貨物車を連想しがちな“トラック”なる呼称も、実はココで使われているのはそれを意味する“truck”ではなく、「足跡」や「わだち」、「走路」を意味する“track”のほう。すなわち、オールトラック=Alltrackなる呼称は、“あらゆる道”を意味するこのモデルの万能性の高さを示唆するフレーズということになる。
もっとも、こうして随所にSUV風味がちりばめられたモデルとはいえ、「押し出し感の強さこそが命」という一部のライバルとは異なって、そのルックスは端正な雰囲気。アンダーガード付きの前後バンパーやホイールハウスのエクステンション、専用デザインのサイドシルなどが採用されはするものの、“これ見よがし”な雰囲気は少しも漂わず、SUV嫌い(?)な人でも抵抗なく付き合えそうなスタイリングが特徴だ。
控えめな見た目の演出はインテリアも同様で、うっかりすればこちらも“特別なパサート”であることを見逃しそうになる出来栄えである。
そうした自己主張が少なめな内外装の印象に対してパサート オールトラックでは、渋滞時支援機能付きの全車速追従機能付きクルーズコントロールやブレーキ機能付きの後退時衝突警告システム、パワーテールゲート、3ゾーンオートエアコン、ステアリングヒーター、ヒーテッドウオッシャーノズルなどはすべて標準装備。基本アイテムは充実している。
今回試乗した上級グレードである「アドバンス」の場合には、さらにアラウンドビューモニターやデジタルメータークラスター、ベンチレーション機能付きのパワーレザーシートなどに加え、電子制御式可変減衰力ダンパー「DCC」や同じく電子制御式のデフロックシステム「XDC」といった走りに関わるメカニズムまでもが標準装備される。また、電動パノラマスライディングルーフをオプション選択することができるのも、こちらのグレードに限られる。
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動力性能に不満なし
比較的簡便なハルデックス方式の4WDとはいえ、そうして追加された後輪の駆動系にパワーテールゲートも備え、さらには前述のように比較的大柄なボディーサイズもあって、その車両重量はあとわずかで1.7tと、決して軽いとはいえないものだ。同じパワーパックを搭載するFWD仕様のヴァリアントと比べると、その重量増は80kgである。
実際、2000rpmを前にすでに最大トルクを発するエンジンをもってしても、特にスタートの瞬間の加速感は軽快とは言い難い。そうした印象には「騒々しい」とまではいかないものの、ガソリンユニットのそれとは明確に異なるディーゼル特有のノイズがもたらす感覚も微妙に加担しているかもしれない。
もっとも、それでも自然吸気のガソリンユニットであれば4リッター級に相当する最大400N・mというトルクはやはり強力で、トルクバンドの“ツボ”にはまれば、なかなかの素早さを味わわせてくれたりもする。最高出力を発する上限は4000rpmで、そんなスペックを目にすると思わず「それだけ!?」と言いたくなってしまうが、実際にはそこを超えてさらにタコメーターの5000rpm以上に引かれたレッドゾーンに近づいても、さしたるパワーの落ち込みは感じられないのだ。
総じて、「ひとたび走り初めてしまえば、何の不満も感じない」というのが、このモデルの動力性能である。
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オールラウンドなパサート
予想通りというべきか、そんな動力性能のキャラクターもあって大の得意科目となっているのが、高速クルージングのシーンだ。
100km/hクルーズ時に1700rpmというエンジン回転数は、まさに「間もなく最大トルクの発生ポイントに差し掛かる」というところ。それだけに、わずかなアクセルの踏み増しに対して、キックダウンの気配も皆無のまま力強く背中が押されていく感覚は、十分過ぎるほど魅力的。「あぁ、やっぱりディーゼルは良いナ」と感じる賛同者を増やす根源にもなりそうだ。
もちろん、フォルクスワーゲン車ならではといえる高速安定性の高さも、クルージングシーンでの魅力に拍車を掛けている。優れた燃費と相まっての、“1タンク=1000km”を確実に超える航続距離の長さも特徴のひとつ。あえて上乗せされたSUV風味は別として、「高速走行性にたけた、脚の長い4WDステーションワゴン」という部分だけに焦点を絞っても十分に食指が動く。
一方、荒れた路面での走行シーンを代表として、必ずしもその乗り味が洗練されていないと感じられる領域があるのは、このモデルのちょっと残念なポイントだ。具体的には振動のダンピングに時間がかかりがちなボディーや、ユニフォーミティー=真円性にやや欠けて感じられるシール剤入りタイヤが放つテイストなどである。さらに、DCCのノーマルモードでは少々揺すられ感が強く、ならばとコンフォートモードを選べば、時としてダンピングが物足りないと思えるフットワークのセッティングなども、洗練度が十分ではないという印象につながる。
いかにも流行に乗ったかのような大型SUVに乗るのは抵抗があるが、ちょっとした悪路や表通りに出るまでの非除雪の区間は安心して通り抜けたいものだし、自身のライフスタイルからすれば広いラゲッジスペースも必須――という、そんな要望をこれまでひそかに抱いていたユーザーも、決して少なくはないだろう。
見た目のドレスアップのみならず、地上高のアップやヒルディセントアシストの採用などで実際の踏破性向上にまで挑んだオールトラックをうたうパサートは、まさにそうした欲張りなユーザーの声に応える、要は最もオールラウンドなパサートでもあるということだ。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサート オールトラックTDI 4MOTIONアドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1855×1535mm
ホイールベース:2790mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190PS(140kW)/3500-4000rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1900-3300rpm
タイヤ:(前)235/45R18 94W/(後)235/45R18 94W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:17.3km/リッター(JC08モード)
価格:569万9000円/テスト車=575万3000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(5万5000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:8037km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:212.1km
使用燃料:16.4リッター(軽油)
参考燃費:12.9km/リッター(満タン法)/14.3km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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