フォルクスワーゲン・ティグアンTDI 4MOTION Rライン(4WD/7AT)/パサート オールトラックTDI 4MOTIONアドバンス(4WD/6AT)
誠意大将軍に任命! 2019.02.08 試乗記 フォルクスワーゲンの4WDモデルの雪上性能を探るべく、『webCG』取材班は長野県の斑尾高原へ。「ティグアンTDI 4MOTION」と「パサート オールトラックTDI 4MOTION」に試乗して感じた、フォルクスワーゲンのクルマづくりの神髄とは!?本気で走れるシチュエーション
フォルクスワーゲンが2018年に日本へ導入したニューモデルのうち、「まだ本気出していないんじゃないか」とギモンの目を向けたくなるものがあった。例えて言うなら右足しか使っていないサッカー選手で、「ホントは左足でパスもシュートもできるんじゃないの?」と疑いたくなる、そんなモデルがあったのだ。
それが「TDI」と「4MOTION」を組み合わせたモデル、つまりディーゼルの四駆だ。いずれのモデルもオンロードの試乗会ではゆったり快適に走り、“いいモノ”感も伝わってきた。けれど、例えばTDIと4MOTIONを組み合わせたティグアンでドライ路面を走る時、四駆の走行モードを切り替えるダイヤルはあまり注目を集めることもなく、ひっそりとたたずんでいるのだった。
しかし、いよいよ4MOTIONが本気を出す時がやってきた。フォルクスワーゲンが、斑尾高原で雪上試乗会を開催したのだ。スキーリゾートの広大な駐車場に特設したクローズドコースと周辺の一般道で、4MOTION+TDIのパフォーマンスを確認した。
取材の前々日に大雪に見舞われたという会場付近の景色は真っ白と、絶好のコンディション。われわれwebCG取材班は「ティグアンTDI 4MOTION Rライン」でクローズドコースを走り、「パサート オールトラックTDI 4MOTIONアドバンス」で一般道に出た。
前後トルク配分は100:0から50:50まで
コースに出る前に、フォルクスワーゲンの四駆の歴史を簡単におさらいしておきたい。
フォルクスワーゲンの市販四駆モデル第1弾は1984年の「パサートヴァリアント シンクロ」。センターとリアのディファレンシャルをマニュアル操作で切り替える四駆システム、つまりこの時点ではまだパートタイム式四駆だった。以来、ビスカスカップリング、トルセンデフという方式を経て、スウェーデンのハルデックス・トラクションのハルデックスカップリング式が採用されるようになり、日本にも2000年よりこの仕組みを採用した四駆モデルが導入されている。
フォルクスワーゲンのインストラクターの方によると、ハルデックスカップリングとはオンデマンド式、つまり必要に応じて前輪駆動の状態から油圧でクラッチをつないで後輪にトルクを伝える方式とのこと。抵抗を減らす(=燃費を向上させる)ために普段は前輪で駆動しながら、走行状況に応じて適切なトルクを瞬時に後輪に伝える仕組みだという。
ハルデックスカップリングはその後、第5世代にまで進化。システムはどんどん洗練され、油圧を電動ポンプで発生させるようになったほか、ABSやESC(横滑り防止装置)といった電子制御デバイスと連携して、車両の動きをトータルでコントロールするようになっている。ちなみに通常のトルク配分はフロントが100%の前輪駆動で、状況に応じて後輪には最大で50%のトルクが配分され、前後50:50となる。
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基礎能力の高さがあればこそ
ティグアンTDI 4MOTION Rラインでクローズドコースに出る。まずは路面のところどころに穴が掘られたモーグルセクション。わざと前輪の片側を穴に落とし、空転させてみる。ドライバーからは見えないけれど、空転する前輪の対角線上にある後輪は浮いているようだ。
けれどもここでドライブモードセレクターのダイヤルを操作して「スノーモード」を選び、じわじわとアクセルペダルを踏み込むと、あっけなく脱出できた。あまりに簡単に脱出したので拍子抜けするほど。
続いてあまりESCが介入しない設定の「オフロードモード」を選ぶと、空転の時間が少し長くなるものの、やはりあっさり脱出。ここからわかるのは、もちろん4MOTIONの能力も高いけれど、しっかりと足が伸び縮みする豊かなサスペンションストロークや、大きな凸凹でも腹を擦らないボディー設計など、電子制御デバイスに頼らずともしっかり走る基礎能力の高さがあるということだ。
急な下り坂ではヒルディセントアシスト機能、つまりアクセルやブレーキの操作をしなくても、クルマ任せでゆっくりと安定して下ってくれる機能を確認。正直に申し上げて、他社製品の同じ機能と比べて大きな違いがあるわけではない。けれども、この機能があるのとないのとでは安心感は大違い。頼りになります。
スラロームや円旋回のセクションでは、さまざまなドライブモードを切り替えながら試し、なるほどスノーモードがいかに姿勢を安定させるかを肌で知る。今回のクルマはミシュランのスタッドレスタイヤ「X-ICE3+」を装着していたけれど、この組み合わせだったらどこでも行けると思えるぐらいにピタッと走る。
オフロードモードを選んでESCがあまり介入しないようにすると、安全なクローズドコースということでドリフトが楽しい。Aカメラマンから「最後の方はドリフトが決まっていた」と拍手されたけれど、ここでも電子制御システムに頼らずともコントロールしやすいという、基本能力の高さを感じた。基本ができている上に4MOTIONやESCが加わるから、鬼に金棒なのだ。
たかが30mm、されど30mm
続いてはパサート オールトラックTDI 4MOTIONアドバンスで雪が残る峠道へ。2リッターのディーゼルターボを積むのはティグアンと同じだけれどチューンは異なり、ティグアンTDI 4MOTIONの最高出力が150psだったのに対してこちらは190ps。また、ティグアンが7段DSGと組み合わされていたのに対し、こちらは6段DSGとなる。
一般道へ出て真っ先に感じるのは、盤石と表現したくなる安定感、安心感である。除雪されていない道を探して峠を上り、深い轍(わだち)のある路面や圧雪路面、溶けかけの路面などなど、さまざまなタイプの雪道を走ったけれど、4MOTIONとミシュランX-ICE3+の組み合わせは、涼しい顔で駆け抜ける。
運転を続けるうちに、この安定感が四駆とスタッドレスだけに起因するものではないことがわかってくる。例えば深い轍の上で車線変更をするような場合でも、サスペンションがよく動いてフラットな姿勢を保つ。このしつけの良さも安心感に寄与している。ノーマルの「パサートヴァリアント」より30mm高められた最低地上高も、こうした場面や除雪の完了していない駐車場ではたかが30mm、されど30mmと思える。
また、上り坂で加速するような場合は、微妙なアクセル操作を反映してくれ、つまりじわじわと踏み込めばじわじわとトルクが供給される。ドンッと下品な加速にならないからこれも安心だ。アクセル開度とトルクの出方の関係が、本当に運転やクルマが好きな人によって念入りにチューニングされているという印象を受ける。
ティグアンで感じたように4MOTIONもTDIもスゴいけれど、同時にフォルクスワーゲンが根っこの部分でよくできているということも感じた試乗会だった。クルマに乗る人のこと、雪道を走る人のことがよくわかっている。誠意大将軍だ。
webCG編集部が用意してくれた某国産コンパクトSUVではなく、ティグアンかパサート オールトラックで東京に帰りたいと言うと、編集部のFさんは「値段が違うから仕方ないじゃないですか」と冷たく言い放つのだった。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ティグアンTDI 4MOTION Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4500×1860×1675mm
ホイールベース:2675mm
車重:1730kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/3500-4000rpm
最大トルク:340Nm(34.7kgm)/1750-3000rpm
タイヤ:(前)215/65R17 99T/(後)215/65R17 99T(ミシュランX-ICE3+)
燃費:17.2km/リッター(JC08モード)
価格:524万円/テスト車=589万3400円
オプション装備:ボディーカラー<オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト>(6万4800円)/レザーシートパッケージ(31万3200円)/DCCパッケージ(21万6000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(5万9400円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:6068km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
フォルクスワーゲン・パサート オールトラックTDI 4MOTIONアドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1855×1535mm
ホイールベース:2790mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190ps(140kW)/3500-4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1900-3300rpm
タイヤ:(前)245/45R18 100H/(後)245/45R18 100H(ミシュランX-ICE3+)
燃費:17.3km/リッター(JC08モード)
価格:569万9000円/テスト車=575万3000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(5万4000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:5520km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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