トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”(4WD/6MT)【試乗記】
トロフィーは要らない 2021.02.27 試乗記 出自や立ち位置は微妙になりつつある「トヨタGRヤリス」だが、そのスポーツモデルとしての性能が第一級であることは間違いない。前代未聞の高出力3気筒ターボエンジンや異色の4WDシステムの仕上がりを一般道で試してみた。幻のサクセスストーリー
GRヤリスの第一義的な役割は、世界ラリー選手権(WRC)のトップカテゴリーでトヨタが勝つためのホモロゲーションモデルとして機能しつつ、市場では「公道に降り立ったWRCマシン」としてのカリスマ性を発揮することにあった。……と、ここで過去形にしたのは、GRヤリスはそもそも、WRCのワークス用ホモロゲ車両としては2021年シーズンを勝つため“だけ”の存在だったからだ。
というのも、WRCのトップカテゴリーは、来るべき2022年シーズンに現行WRカーから新規定の「ラリー1」に移行することになっている。ラリー1ではパワートレインがワンメイクのハイブリッド(エンジン部分は従来どおりの各社開発)になると同時に、車体もスペースフレームに市販車を模した外板を架装するプロトタイプ構造が認められる。つまりは2022年シーズンからはホモロゲモデルそのものが不要になるのだ。
ただ、新型コロナウイルスの影響で、トヨタは2020年早々にGRヤリスベースの2021年用マシン開発を断念。すでに開幕した2021年シーズンも従来型の改良マシンで闘っている。普通に考えれば来シーズンには新プロトタイプマシンに移行するので、このGRヤリスがWRCのトップカテゴリーで勝つというサクセスストーリーは幻に……といいたくなるが、一寸先もなにが起こるか分からないのが、このコロナ禍である。
トヨタを含めた各チームの来シーズン体制は未発表。途中まで進められていたGRヤリスを再開発して、2022年に投入を目指すとのウワサもある。また、この時勢のままでもトヨタはWRCワークス活動を続行するのかという懸念もなくはない。