トヨタ・ヴィッツRS(FF/CVT)【試乗記】
「味わい」のあるコンパクト 2011.04.14 試乗記 トヨタ・ヴィッツRS(FF/CVT)……210万905円
コンパクトカー「トヨタ・ヴィッツ」のスポーティグレード「RS」に試乗。CVTモデルを駆って、その実力を確かめた。
走り出しから軽快感
先代型と比べると、目元がキリッと劇画調(?)に生まれ変わった「ヴィッツ」。その中でも「RS」グレードは、いかついバンパーを付けていちだんと二枚目な顔つきをしたスポーティなグレードである。ラインナップで一番力強い109psの1.5リッターエンジンを搭載し、引き締まった「RS」専用の足まわりを持つだけでなく、ステアリングにテレスコピック調整が付いていたり、後輪のブレーキもディスクになっていたりと、結構いろいろなところが“特別扱い”になっている。
サイドサポートが適度に効いた運転席に着き、シートのスライド機構とステアリングのチルトとテレスコを使って調整すると、好みのドライビングポジションがぴたりと決まった。スポーティモデルというのは、まずはこのクルマとドライバーのフィット感が大切だ。そしてCVTのセレクターをDに入れて動き出すと、次なる感動に出くわした。ノーマル「ヴィッツ」と比べて、いちだんと軽快に感じられたのである。
最近、このクラスの車重は1トンを切るようになってきていて、「ヴィッツ」も1リッターモデルは970kgである。それに対して「RS」は1030kg(オプション含まず)と、実は乗員1人分ぐらい重い。それにもかかわらず軽いのである。その“錯覚”のひとつに、ボディ全体にただよう剛体感の高さがあるように思える。「RS」のボディ剛性はノーマルモデルと比べて向上しているように感じられ、ステアリングの支持剛性も高かった。締め上げられたサスペンションがもたらす足どりはとても正確で、クルマ全体にぴしっと統一感が貫かれている。いかにも走りそうな気配に満ちている。
ファミリーカーでイケる!
軽い上屋に硬いサスペンションを組み合わせると、ヒョコヒョコと跳ね気味になるなど、乗り心地にそれなりのしわ寄せがくるものだ。しかしこの点も「RS」はうならされるものがある。従来型のように足まわりを突っ張らせて姿勢を維持するのではなく、硬いながらもちゃんとしなやかにストロークさせて、質感の高いフラット感を演出しているのである。さりげないことだが、これが実現できている日本のスポーツハッチはなかなか無かった。
加えて、突起のような路面のきつい不整を乗り越えた時の“当たり”も思いのほかマイルドだ。だから「高速道路はいいけど、一般道が硬くてねえ……」ということもない。大人4人の乗車に十分耐えうる広々とした室内とあいまって、これなら何ら問題なくファミリーカーとしていける。ノーマル「ヴィッツ」だけでなく、「ヴィッツRS」も大人になった。
一方で、硬いサスペンションがもたらすハンドリングは生きがよく、ノーマルとはひと味違う“張り”のあるドライビングを味わわせてくれる。ステアリングの中立付近のレスポンスが過敏すぎず、フィールはごく自然で好ましい。操っていて楽しいハンドリングである。エンジンパワーに対して足まわりのキャパシティが大きい、いわゆる“エンジンより速いシャシー”の印象があり、高速走行における体感的なスピード感は思いのほか低い。直進性も不満はない。そろそろ「ヴィッツ」も、ヨーロッパの小型車と互角にわたりあえる本格的な実力を備えてきたように思う。
エンジンに色気があれば……
メカニズム的には不満らしい不満が見つからない「ヴィッツRS」ではあるけれども、あえて言うなら「U」グレードの1.5リッターモデルとまったく同じスペックにとどまるエンジンを退屈に思う人は多いかもしれない。動き出しはスッと軽く、低中速域では十分なトルクを備えている。そこに音質の変化なり、吹け上がりの気持ち良さなり、スポーツモデルならではの“ドラマ性”が加われば言うことがないのだが、さすがにそこまでにはいたらなかったようだ。
このエンジンのスイートスポットは3000rpm以下である。そこを超えると、それまで耳に心地よかったエンジン音が、途端に威勢よくうなり始める。CVT特有のスムーズなレスポンスも、スポーツドライビングにおいてはダイレクト感に欠けるという評価につながりやすい気がする。その不満はMT仕様を選べば解決するが、欲をいえば今どき5段というのはちょっと寂しい。
結論として、新しい「ヴィッツRS」は、今までのトヨタの小型スポーツハッチとは何かが違っているように思えて仕方がない。その何かとは「味わい」だ。「ノア」や「ヴォクシー」のG'sバージョンや、あるいは「iQ」のGRMNバージョンにどこか共通するような作り込みの後味みたいなものが感じられるのである。歓迎すべき展開である。
(文=竹下元太郎/写真=峰昌宏)

竹下 元太郎
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
スズキDR-Z4S(5MT)【レビュー】 2026.1.7 スズキから400ccクラスの新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」が登場。“Ready 4 Anything”を標榜(ひょうぼう)するファン待望の一台は、いかなるパフォーマンスを秘めているのか? 本格的なオフロード走行も視野に入れたという、その走りの一端に触れた。
-
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.1.6 「三菱デリカミニ」がフルモデルチェンジ。ただし、先代のデビューからわずか2年で……という期間も異例なら、見た目がほとんどそのままというのもまた異例だ。これで中身もそのままならさらに異例だが、こちらは逆に異例なほどの進化を遂げていた。
-
スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.1.5 デビューから8年を迎え、大幅な改良が施された「スズキ・クロスビー」。内外装に車体にパワートレインにと、全方位的に手が加えられた“AセグメントSUVの元祖”は、フォロワーであるダイハツ・トヨタ連合のライバルとも伍(ご)して戦える実力を獲得していた。
-
NEW
第857回:ドイツの自動車業界は大丈夫? エンジニア多田哲哉が、現地再訪で大いにショックを受けたこと
2026.1.14エディターから一言かつてトヨタの技術者としてさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さん。現役時代の思い出が詰まったドイツに再び足を運んでみると、そこには予想もしなかった変化が……。自動車先進国の今をリポートする。 -
NEW
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.14試乗記「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。 -
NEW
30年の取材歴で初めてのケースも 2025年の旧車イベントで出会った激レア車
2026.1.14デイリーコラム基本的に旧車イベントに展示されるのは希少なクルマばかりだが、取材を続けていると時折「これは!」という個体に遭遇する。30年超の取材歴を誇る沼田 亨が、2025年の後半に出会った特別なモデルを紹介する。 -
NEW
第98回:「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」(前編) ―レースで勝つためなら歪なデザインも許される?―
2026.1.14カーデザイン曼荼羅“世界のTOYOTA”の頂点を担う、「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」。話題騒然の2台のスーパースポーツを、カーデザインの識者と大検証! レースでの勝利に振り切ったGR GTの歪(いびつ)な造形は、果たしてアリや、ナシや? -
NEW
東京オートサロンでの新しい試み マツダのパーツメーカー見学ツアーに参加して
2026.1.13デイリーコラムマツダが「東京オートサロン2026」でFIJITSUBO、RAYS、Bremboの各ブースをめぐるコラボレーションツアーを開催。カスタムの間口を広める挑戦は、参加者にどう受け止められたのか? カスタムカー/チューニングカーの祭典で見つけた、新しい試みに密着した。 -
最近のターボ車が“ドカン”とこないのはなぜ?
2026.1.13あの多田哲哉のクルマQ&A内燃機関車のなかで、ターボ車の比率が高まりつつある。しかし、過給に際して、かつてのような「ドカン」と急激に立ち上がるフィーリングがなくなったのはなぜか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。































