第206回:四の五の言わずに東大へ行け!
2021.05.10 カーマニア人間国宝への道東大はフェラーリだ
どうも世の中、東大ブームらしい。数年前から『東大王』なる番組が大人気のようだし、先般は東大合格を目指すテレビドラマ『ドラゴン桜』の続編も始まった。
私はどちらも見たことないが、以前から、東大王というネーミングは実に素晴らしい! と感服していた。東大というだけでイヤミなのに、そこに王を付けるのだからイヤミの二乗! 逆にサワヤカっす!
ここで皆さま、何かに気づきませんか?
そう。東大という響きは、フェラーリに似ているのです。
東大というだけでイヤミなように、フェラーリというだけでイヤミ。どちらもあまりにも名門であるがゆえの共通項だ。
じゃフェラーリに王を付けたらどうなるか。
「フェラーリ王」
こりゃもう「シェ~!」じゃ済みませんなぁワッハッハ。
東大というだけで学歴の王様なのに、その王なのだからキング・オブ・キングス。同じくフェラーリというだけでクルマの女王なのに、その王なのだから気が遠くなる。フェラーリ王っていったい誰? やっぱりシューマッハ様!? うおおお~心から土下座。心から回復をお祈り申し上げております。
一方『ドラゴン桜』だが、中年になって以来マンガをほとんど読まなくなった私も、15年くらい前、確かコミックスの4巻まで読んで心底感動した。『ドラゴン桜』こそ、私が最後に読んだ長編マンガかもしれない。
フェラーリなど簡単だ!
しかも『ドラゴン桜』の数々の名セリフは、私にとって非常に親近感が湧くのである。“東大”の部分を“フェラーリ”に入れ替えれば、ほぼそのまま通用するからだ。
「東大など簡単だ!」→「フェラーリなど簡単だ!」
「四の五の言わずに東大へ行け!」→「四の五の言わずにフェラーリを買え!」
私は、「東大など簡単だ!」と言われたら笑っちゃうけど、フェラーリに関しては、20年以上前から似たようなことを言っている。それは、「国民全員がフェラーリを!」である。「貧乏人はフェラーリを買え!」とも言っている。それって、「バカやブスこそ東大へ行け!」(ドラマ中のセリフ)と同じことだよね?
ということで、東大やフェラーリは人生の特急指定券なわけですが、フェラーリに関しては、ひとつだけ心配がある。
それは、そのうちガソリンが買えなくなるんじゃないか……ってことだ。
私は、2050年にカーボンニュートラルが実現したとしても、ガソリン車の走行が禁止されることはなかろうと楽観しているが、ほとんどのクルマがEVやらFCVになったら、ガソリンスタンドが消えてしまう。そうすると必然的にフェラーリも走れなくなる!
バイオ燃料とか逃げ道は残るだろうけど、でもやっぱりちょっと心配。せっかくフェラーリ買ったのにガソリンがないなんて、せっかく東大出たのにプー太郎って感じでしょ?
安泰の特権階級
そんな折、大いなる希望を与えてくれるニュースがあった。4月28日の日本経済新聞に掲載された、『ポルシェ、水素でガソリン』という記事である。
内容をかいつまむと、ポルシェは、名車「911」をエンジン車として残す。そこで、顧客がCO2排出の心配をせずに済むように、再生可能エネルギー由来の「水素ガソリン(eフューエル)」の開発に乗り出すというのだ。
その想定価格は、2022年ではまだリッター10ドルだが、26年か27年には2ドルまで引き下げることを目指す。
リッター2ドル──つまり220円! それくらいなら喜んで払います! どうせ年間走行距離少ないんだし! 想定価格まで出してくれてるところが、本気っぽくてウレシイな!
つってもこれは、ポルシェがポルシェオーナーのために製造するもので、フェラーリには分けてもらえない。ポルシェディーラーに設置された急速充電器「ポルシェ ターボチャージャー」はポルシェ専用で「リーフ」も「ホンダe」も使わせてもらえないように、ポルシェの水素ガソリンは、ポルシェの独占なのである。
しかし、ポルシェが作れるなら他社にだって作れるはず。さすがにフェラーリには無理だろうが、トヨタはすでにホンダ・日産とともに、eフューエルの研究開発に乗り出している。トヨタならポルシェみたいにケチケチせず、きっとフェラーリにも分けてくれることだろう! 章男社長ありがと~~~~~!
これでフェラーリに関する心配は一切なくなった。まさに安泰の特権階級! 30年後も東大卒が日本を支配しているように、30年後もフェラーリは自動車生態系の頂点として君臨し続けていることでしょう。めでたしめでたし。貧乏人はフェラーリを買え!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。