2020年度の“一番安全なクルマ” 「スバル・レヴォーグ」の安全施策に見る傾向と対策
2021.06.09 デイリーコラムクルマの進化に合わせて拡充される試験内容
既にニュースでも報じられている通り、「スバル・レヴォーグ」が国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が実施した自動車アセスメント(JNCAP)において、2020年度の衝突安全性能と予防安全性能の総合評価で最高得点を獲得し、「自動車安全性能2020ファイブスター大賞」を受賞した。
JNCAPは1995年度から実施されている自動車の安全性能評価プログラムで、当初は前面衝突安全性能のみを評価していたが、年々評価項目を拡充し、2014年度からは緊急自動ブレーキ(AEB)などの予防安全性能も評価項目に加えている。さらに今回の2020年度からは、これまで別々に評価していた衝突安全性能と予防安全性能の点数を合算し、かつ事故自動緊急通報装置の有無も加味した結果を「自動車安全性能」として発表。5月25日から、試験車両の成績を開示している。
これまでも、スバル車はJNCAPで高い評価を得てきている。2007年度に3代目「インプレッサ」が同社のモデルとして初めて「JNCAP大賞」を受賞したのを皮切りに、最近では「XV」の2017年発売モデルとインプレッサの2016年発売モデルが、どちらも2016年度の衝突安全性能評価大賞と衝突安全性能特別賞を受賞。「フォレスター」の2018年発売モデルは、同年度の衝突安全性能評価大賞を受賞した。
事故の傾向を参考に車体設計や部材を見直し
このように、スバル車が衝突安全性で高い評価を得ているのには、伝統的に採用している水平対向エンジンが寄与しているという。現代のクルマでは、前面衝突試験や側面衝突試験ではもはや大きな差はつかないが、歩行者保護性能では、エンジン全高が低く、フロントフードとの間に衝撃吸収空間を確保しやすい水平対向エンジンの採用が有利に働くからだ。
現行型レヴォーグは、この定評ある衝突安全性にさらに磨きをかけた。スバルが米国での事故調査の結果を分析すると、スバルの販売台数100万台当たりの死亡事故数は、2019年に32件と、主要ブランドの平均の半分程度だったという。ただ事故の内訳を見ると、車両単独の死亡事故件数は年々減少しているのに対し、車両相互の死亡事故件数は近年わずかながら上昇傾向にあることが分かった。なかでも側面衝突での死亡事故が増えている。
その原因を調べると、北米の新車販売において、車両重量がセダン系の車種より重いSUVが増加していることにあると判明した。側面衝突時の相手車両の平均重量は2014年の約1.8tから2019年には約2.0tと、約200kgも増加していたのである。そこで現行型レヴォーグでは、センターピラーに高強度のホットプレス材を採用し、側面衝突時の車体の変形を抑えた。
2030年の死亡交通事故ゼロを目指して
一方で、国内の死亡事故を見ると、スバル車は販売台数100万台当たりの死亡事故件数は業界平均の半分以下となっている(2019年の実績。2015~2019年に初年度登録された車両を対象とした調査)。
業界全体では死亡事故に占める「歩行者・自転車事故」の比率が約3分の2を占めている。こうした事故における死亡率の低減には、先に触れた通りスバルの水平対向エンジンの採用が有利に働いているが、それでもフロントウィンドウ下端やフロントピラーまわりは、構造上衝撃の吸収が難しい。そこでスバルは、世界でもスウェーデンのボルボくらいしか採用例のなかった歩行者エアバッグを現行型インプレッサから採用し始め、その後XV、フォレスター、そして今回JNCAP大賞を受賞したレヴォーグへと採用を拡大してきた。
このように、以前より定評のある衝突安全性に磨きをかけたのに加え、レヴォーグでは新世代「アイサイト」の採用によって、緊急自動ブレーキや車線逸脱抑制などといった予防安全性能の評価で満点の82点を獲得。今回の大賞受賞につなげた。スバルは2030年に死亡交通事故ゼロという目標を掲げているが、目標達成に向けてまた一歩前進したといえそうだ。
(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=スバル、自動車事故対策機構/編集=堀田剛資)

鶴原 吉郎
オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。
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