ホンダ・レブル1100 Dual Clutch Transmission(6AT)
優しさこそが宝 2021.07.01 試乗記 大人気の「レブル250」をそのまま大きくしたかのような、ホンダの新型バイク「レブル1100」。自動変速が可能なそのATバージョンは、乗り手やステージを選ぶことのない、懐の深い走りを味わわせてくれた。あぁ ありがたい!
「ホンダ・レブル1100 Dual Clutch Transmission」は日本で、いや、世界で最も乗りやすいリッターバイクではないか……と言えるほど多くのモデルに試乗しているわけではありませんが、同車がビックリするほど乗り手に優しいことは間違いない。
まず、700mmという低いシート高がありがたい。メディアをにぎわしバイク好きの間で話題になりやすいのはフルカウルのスポーツモデルだけれど、一方で、国産・輸入車を問わずクルーザータイプの二輪がコンスタントに売れているのは、その足つきのよさからくる安心感ゆえだろう。レブルシリーズの末弟たる「レブル250」などは、デビュー翌年の2018年から、軽二輪部門の国内販売台数トップを3年連続で獲得している。身長165cm足短めの昭和体形(←ワタシです)にして、シートにまたがって両足がベッタリ接地するうれしさは、「つるしのジーンズだと丈が足りなくてェ」なんてシレッと言い放つスタイリッシュなあなたにはわかるまい。うらやましいゾ。
レブル250、「レブル500」に加え、新たにレブル1100が登場するにあたって設定されたDCTモデルも、リッター超えバイクへのハードルをグッと押し下げた。ライダーは、右グリップそばに設けられた「D」ボタンを押してスロットルをひねるだけ。するとホンダのリッタークルーザーは、パラレルツインの不等間隔なビートを刻みながらスルスルと走りだす。クラッチ操作は不要。DCT仕様のレブル1100は、AT大型二輪免許でも乗れるリッターバイクである。大排気量の2気筒が低い声を響かせる裏で、交互にアクティブなギアを切り替えているのだろう。静かにカタコン、カタコンいいながらDCTが自動でシフトアップしてくれる。ギア数は6枚だ。
いかにも「ホンダのバイクだなァ」と感心させられるのがライディングポジションで、もちろん上体を起こしたアップライトな姿勢だが、余裕をもって腕を伸ばしたところにグリップがあり、足を前に放り出すことなく、軽く膝を曲げてステップに載せられる。クルーザータイプに乗っていることを十分意識させながら、総じて自然で無理がない。レブル250/500からの排気量アップ組はもちろん、「たまにはアメリカン(死語!?)にでも乗ってみるか」とネイキッドやスポーツタイプから乗り換えた人でも、多少の違和感を個性と捉えこそすれ、不快に感じることはないだろう。
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クルーザー的スポーツバイク
ハンドリングもしかりで、パワーユニットとギアボックスが意外と横幅を取るため「タンクを両足でしっかりホールドして」という乗り方にはなじまないが、素直で癖のない走りをみせる。タイトカーブでステアリングが思いのほか切れ込むようなことはないし、逆に、ハンドル操作にあらがってまっすぐ進もうとする強情さもない。端的に言って、コワくない。
レブルシリーズは、フロントフォークを寝かしてルックス面でクルーザーな雰囲気を強調しているが、実際のステアリング軸をわずかに立たせて、見た目の迫力とニュートラルなハンドリングを両立させている。
フロントに130/70R18サイズのタイヤを履くレブル1100のキャスター角は28度、トレール量は110mm。参考までに、空冷4気筒を積むネイキッド「ホンダCB1100」は、タイヤサイズが110/80R18で、ほかはそれぞれ27度と114mmである。レブル1100の工夫がスペックにも表れている。ホンダは、それこそこの手のバイクがアメリカンと呼ばれて人気だった時分から、“クルーザーの姿をしたスポーツバイク”を追求してきたフシがあるから、これまでの努力が「21世紀のレブルシリーズでみごとに結実した!」と評することができると思う。
レブル1100の、エンジンそのものを構成の一部とするダイヤモンドフレームにつられるのは、スーパーアドベンチャーたる「アフリカツイン」由来の1082cc直列2気筒。新たに中低回転を重視したチューンが施され、最高出力87PS/7000rpm、最大トルク98N・mを発生する。スロットル操作を電気信号としてエンジンに伝える「ライド・バイ・ワイヤ」を採用。「スタンダード」「スポーツ」「レイン」そして「ユーザー(設定)」と4種類のライディングモードが用意される。
スタンダードでのんびり走ると、低回転域からの大トルクを生かして、DCTは速やかにギアを上げ、速度計が55km/hに達するころにはトップの6速に入っている。穏やかで力持ち。それでいて、2000rpm付近でもグズらず233kgのボディーを運ぶ粘り強いエンジンだ。
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使いでのある走行モード
スポーツモードでは一転、パワーユニットのアウトプットが上げられ、サウンドも高まり、レブル1100のアグレッシブな顔が現れる。できるだけギアを保持する“引っ張る走り”になるので、街なかでは少々煩わしいが、“曲がり”の続くコースなどで乗り手がやる気を出すとキチンと応えてくれる。自分程度の乗り手だと、レブル1100DCT、十二分にスポーツクルーザーです。
ユーザー設定を使えば、パワーの出方やギアチェンジの特性に加え、トラクションコントロールやエンジンブレーキの強度まで変えられるところが、さすがは最新モデル。より積極的に“攻めたい”むきには、DCTをマニュアルモードにして能動的にギアを選ぶことも可能だ。
レブル1100の優しさを痛感したのが、全面的に走りがおとなしくなるレインモード。スロットルを開けてもパワーの上昇が抑えられ、ピークパワーも削られる。平時に試して「気の抜けたモード」とメモしたワタシはバカでした。というのも……。
幸か不幸か大雨のなか試乗バイクを返却することになり、ところどころ川が流れる道路上を、トラコンを控えさせながら太いトルクでトロトロ走れるのがいい。ギア操作に気を使うことなく、路面と周囲の状況に気を配れるのもポイントが高い。頻繁にストップ&ゴーが繰り返される都市部では、足つきのよさは安全装備の一部だ。ホンダ・レブル1100 DCTは、世界で最もユーザーフレンドリーなリッターバイクである(確信)。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2240×830×1115mm
ホイールベース:1520mm
シート高:700mm
重量:233kg
エンジン:1082cc 水冷4ストローク直列2気筒 OHC 4バルブ
最高出力:87PS(64kW)/7000rpm
最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/4750rpm
トランスミッション:6段AT
燃費:18.7km/リッター(WMTCモード)/31.5km/リッター(国土交通省届出値)
価格:121万円

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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