ホンダ・ヴェゼルe:HEV PLaY(FF)/マツダMX-30(FF/6AT)
“違う”って素晴らしい 2021.08.09 試乗記 今や世界的に人気ジャンルとなっているコンパクトSUV。各社が投入するバラエティー豊かな製品のなかから、ホンダの最新モデル「ヴェゼル」とマツダのクーペSUV「MX-30」に試乗。百花繚乱(りょうらん)のマーケットの、今に触れた。同じコンパクトSUVなのに全然違う
なるほど、同じようなサイズで価格帯も近くて、でも全然違うクルマなのか……。マツダMX-30とホンダ・ヴェゼルの「e:HEV PLaY」をとっかえひっかえ乗りながら、そんなことを考えた。
この2台はともに全長が4.3m台で、価格も300万円の前後がメイン。でも、実際に試乗したらどちらにしようか迷うことはないだろう。それくらい違う。
例えばこの2台は、乗り心地が全然違う。タウンスピードで快適なのはヴェゼルのほうで、路面の凸凹をふんわりと乗り越えていく。ただし高速道路に入るとこのふんわりが少し鼻について、もう少し上下動の少ない引き締まった乗り心地を求めたくなる。
対するマツダMX-30は、タウンスピードだと路面からの突き上げが気になる。不快というほどではないにしろ、荒れた路面でフロアから伝わるザラザラとした感触はあまり快適とはいえない。ところが高速道路に入ると生まれ変わり、フラットな乗り心地が心地よい。ワインディングロードでも、ドライバーの狙いを忠実に反映する、正確なハンドリングが印象に残る。
いま話題の2台のコンパクトSUVを乗り比べるこの企画、取材をする前は、あまり違いがなかったらどうしようかとビビっていた。けれども、実際に乗ってみると乗り心地とハンドリングに対する考え方だけでもこれだけ大きく違う。あまり違いがないどころか、何もかも違った。
まずはここで取り上げる2台の紹介から入りたい。
新時代のクルマの在り方を模索する
まずマツダMX-30は、簡単に言えば同社のコンパクトSUVである「マツダCX-30」のおしゃれクーペ版だ。基本骨格は共通で、2655mmのホイールベースと4395mmの全長も同じ。ただし、ボディー後端にかけて急降下するルーフラインは、明らかに後席の居住性よりカッコよさを重視したもの。SUVらしいどっしりとした土台に、天地方向に薄いクーペっぽい上屋を載っけたたたずまいが個性的で面白い。
フロントマスクも、「魂動」デザインを打ち出してから統一感を持つようになった“マツダ顔”とは一線を画している。なにより、マツダが「フリースタイルドア」と呼ぶ観音開きの前後ドアが異彩を放っている。
前後ともほとんど直角に開く観音開きドア、正確にはフロントドアが82°でリアドアが80°とのことだけれど、実際に使ってみると意外と面倒くさい。運転席側の後席を開けるには、まず運転席を開かなければならない。リアドアが開いた状態だと、フロントドアを閉じることもできない。
そうか、カッコよさのためには不便もヤセ我慢しなければいけないということか、と納得しようとしたけれど、少し事情が違うようだ。このガバッと開く観音開きドアは、車いすに乗ったまま乗り降りができるボディー構造を視野に入れたケーススタディーとのこと。ラインナップされるBEV仕様やサステイナビリティーに配慮した内装素材なども含めて、実はただのおしゃれクーペ版ではなく、次の時代のクルマの在り方を考える任も背負ったモデルなのかもしれない。
マツダMX-30を見ながら思い浮かぶのは、「アバンギャルド」という言葉だ。もともとは軍隊で使われた言葉で、前方(avant)に位置する部隊を意味する。このクルマはマツダのラインナップにおける異端児に見えるけれど、最前線に立って新しい時代をリサーチする切り込み隊長でもあるのだ。
マツダMX-30にはBEV仕様やフルタイム4駆仕様も用意されるけれど、今回試乗したのは最もベーシックなマイルドハイブリッドシステムとFF(前輪駆動)の組み合わせだ。トランスミッションには6段ATが搭載される。
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今やホンダの基幹車種
マツダMX-30がアバンギャルドであるとすれば、ホンダ・ヴェゼルは本隊だ。
日本自動車販売協会連合会のデータによれば、今や日本で販売される乗用車の約3割がSUVだという。グローバルで見ても、2013年にデビューした先代にあたる初代ヴェゼルは7年間の累計で384万台を販売している。コンパクトSUVのヴェゼルは、今やホンダの屋台骨を支えるモデルのひとつだといえる。
面白いのは、売らなければいけないモデルだからといって、デザインに関してはキープコンセプトのコンサバなモデルチェンジにしなかったところだ。
従来型が鋭利なキャラクターラインを多用して存在感を出そうとしていたのに対して、新型ヴェゼルは「フィット」や「ホンダe」と同じように、カタマリ感と個性的なフロントマスクで個性を演出している。違うのは顔がイカついということだけれど、そこが気になる方はホンダアクセスが用意するグリルを装着するという手もある。
外観は刷新されたけれど、プラットフォームは従来型を熟成させたもの。ホイールベースの2610mmに変わりはなく、全長がプラス35mm、全幅がプラス20mmと、わずかながら育っている。
フロントマスクに目を奪われがちであるけれど、クーペ風のルーフラインを持つマツダMX-30と並べると、全体にスクエアな形状で、オーセンティックなSUVのスタイルを採っていることがわかる。
ホンダ・ヴェゼルには、ガソリンエンジン仕様と4駆仕様も用意されるけれど、試乗したのはe:HEVと呼ばれる2モーター式ハイブリッドのFF仕様。PLaYというのは内装と装備が充実した上級グレードだ。
提案性のMX-30、居住性のヴェゼル
インテリアは両車とも水平基調のデザインで、開放感を演出している。実際、どちらも前席は広々としていて、運転席に座るとコンパクトカーだという気がしない。一方で、細部を見ると外観同様にマツダMX-30がアバンギャルドであるのに対して、ホンダ・ヴェゼルは慣れ親しんだホンダの乗用車だ。
具体的には、マツダMX-30は海底火山で隆起した島のようなセンターコンソールが斬新だ。個性的なL字型のシフトセレクターや、各部に用いられるマツダこだわりのコルク素材、ドアの内張りに使われるペットボトルのリサイクル素材など、このクルマの内装には語るべきポイントがたくさんある。
ただ、居住性では相対的に後席が広々として感じられるホンダ・ヴェゼルに軍配が上がる。マツダMX-30の後席は前述したようにアクセスが面倒くさいだけでなく、乗り込むと閉塞(へいそく)感が強いからだ。
まぁ、マツダMX-30はあくまでカッコ優先のSUVクーペだから、後席の居住性を比較して論じても意味がないともいえる。居酒屋の座敷の座布団とバーのスツールを比べるようなものだ。
さて、走りだすと、両車の差異がいよいよ興味深い。内外装のデザインが斬新に感じるマツダMX-30であるけれど、走行フィールは従来のクルマっぽい。一方、止まっているとマツダMX-30の個性に押されがちなホンダ・ヴェゼルe:HEV PLaYであるけれど、走行感覚はこっちのほうが“イマっぽい”のだ。(後編へ続く)
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ホンダ・ヴェゼルe:HEV PLaY
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4330×1790×1590mm
ホイールベース:2610mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:131PS(96kW)/4000-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3500rpm
タイヤ:(前)225/50R18 95V/(後)225/50R18 95V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:24.8km/リッター(WLTCモード)/30.4km/リッター(JC08モード)
価格:329万8900円/テスト車=341万7744円
オプション装備:ボディーカラー<サンドカーキパール&ブラック>(2万7500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(2万8600円)/ドライブレコーダーフロント用<32GBキット>(4万2900円)/工賃(1万9844円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:4021km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:159.2km
使用燃料:7.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:20.2km/リッター(満タン法)/19.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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マツダMX-30
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1795×1550mm
ホイールベース:2655mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:156PS(115kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:199N・m(20.3kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:6.9PS(5.1kW)/1800rpm
モーター最大トルク:49N・m(5.0kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(ブリヂストン・トランザT005A)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)/16.9km/リッター(JC08モード)
価格:242万円/テスト車=296万8880円
オプション装備:ボディーカラー<セラミックメタリック・3トーン>(6万6000円)/ベーシックパッケージ(7万7000円)/セーフティーパッケージ(12万1000円)/ユーティリティーパッケージ(8万8000円)/モダンコンフィデンスパッケージ(11万円)/360°セーフティーパッケージ(8万6880円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:7368km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:240.3km
使用燃料:23.8リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.1km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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