MINIクーパー 3ドア(FF/7AT)
続けてくれてありがとう 2021.08.23 試乗記 2021年5月にマイナーチェンジを受けた「MINI 3ドア」の最新モデルに試乗。従来型からの進化のポイントをチェックするとともに、オールドミニのスタイルを受け継ぎ、3世代20年にわたり歴史を重ねてきた“ニューMINI”の足跡に思いをはせた。まだそんな話してるの?
元オールドミニオーナーのwebCG編集部員から、ニューMINIを指して「これはミニじゃない」と断言する人がいまだにいると聞いた。いささか驚き、黙って話の続きに耳を傾けていると、「そんなことを言う人に限って、昔のミニを所有したことがない」のも、この手の“あるある”だという。そういえば、自分にも似たような会話経験がある。
所有して25年になる自分のクルマで某現場に行ったとき、代理店の男性スタッフがわがオンボロを見て、なぜか突然「30年はたたないと僕はクラシックと認めない」と切り出した。別になにかを認めてほしいわけではないので返事はしなかった。けれど、たたずまいなどから30代前半にしか見えなかった彼に対し、まずは1台のクルマを四半世紀持ち続けてから、ないしは四半世紀前のクルマがどういうものかを知ってから意見を持つべきだし、どこかで聞いたような考えを代理的に発言しても誰の共感も得ないよと、心のなかで諭してやった。
いやいや、こんなところで年若に復讐(ふくしゅう)を果たしたいわけではなく、クルマを語るのはむずかしいですねと同感してほしかっただけです。
それにしても、「これはミニじゃない」というのはどうなんだろう。いわゆるニューのMINIが発表されたのは2001年。それから3度のフルモデルチェンジが行われたそうだが、いずれにせよニューになって20年もたっているのに「~じゃない」はさすがに厳しい。それよりもオールドを引き継ぐかたちでニューが20年も継続している事実を称賛すべきだ。ありがたいことじゃないですか。ニューがいてくれるからオールドの存在に光が当たる部分もあるわけだし。
もちろん、「じゃない」と断言した人の心情も理解できないわけではない。つまるところクルマを語るのがむずかしいと感じるのは、それぞれの意見に触れた際に、自分の寛容さを試されるから、ということなのでしょう。
……失礼、今回はミニ/MINIの話でした。
新しくもMINIの規範から外れないデザイン
2021年5月末に国内販売が開始された最新型は、MINIがニューになってから3代目のモデルのマイナーチェンジ版に当たるという。
リリースされたのはボディータイプが3ドア、5ドア、コンバーチブルの3種類。エンジンタイプはガソリン/ディーゼルそれぞれに3気筒と4気筒があるので、ざっくり言って4種類。全種ターボを装着しており、最高出力で見ると「ONE」の102PS (75kW)/3900rpmから「ジョンクーパーワークス」の231PS (170kW)/5200rpmまで、6仕様のエンジンがラインナップされる。なんというバリエーションの豊富さ。選ぶのに迷う楽しさを与えてくれるのもニューの特長ですな。
見た目の部分でチェンジが顕著なのは、顔まわり。LEDヘッドランプの全車標準装備と同時に、フロントグリルが大型化。その中央を横に貫くバンパー(なのねコレ)がボディー同色となった。オールドというかクラシックを感じさせたグリルのメッキ装飾が、大幅に控えめになったのも従来型との差別化らしい。ただ、これもイメージを覆すほどではないので、20年続くニューの“くくり”から外れたデザインには見えない。肯定的な意味合いで。
室内の特記事項は、タッチ操作が可能な 8.8インチのセンターディスプレイが全車標準装備になったことと、機械式メーターと液晶ディスプレイを組み合わせたマルチディスプレイメーターパネルの採用でしょうか。前者は、オールドの1960年代モデルに備わっていた通称“センターメーター”の名残的設計。そうした先達(せんだつ)へのオマージュが随所にあるわけだから、やはりむげに「ミニじゃない」はないんじゃない? と思うのですが、いかがでしょう。
そのセンターディスプレイの下に備わる各種アナログスイッチなどは、今に始まったことではないがニューの細部デザインの秀逸ポイントだ。こういうところ、これからもぜひ残していただきたい。
追記すると、アダプティブクルーズコントロール(ACC)にストップ&ゴー機能が備わったほか、MINIブランドとして初となるレーンディパーチャーウオーニングや、前車接近警告機能、衝突回避・被害軽減ブレーキといった予防安全・運転支援システムが標準装備された(ONEを除く)。要するに、今日的スペックのキャッチアップに手抜かりなし。
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どうにも気になる「ゴーカート・フィーリング」
webCG編集部が用意してくれたのは、最高出力136PSを発生する1.5リッター直列3気筒ガソリンターボの「MINIクーパー 3ドア」。エンジン的には、ONEより34PS高く、「クーパーS」より56PS低いラインナップの中間的スペックだ。乗り比べたら違う感想を持つかもしれないが、クーパーの出力に不満は感じなかった。
ただし、否定的に聞こえないといいのだけど、カタログがうたう「ゴーカート・フィーリング」はちょっと違うように思った。そもそも、20世紀の間に十分な熟成を経た今どきのクルマで、鉄枠フレームにエンジンむき出し搭載のゴーカート感覚は出せないはずだ。
もちろん、この文言がオールドのミニでよく使われた表現を出自にしていることは理解している。しかし、オールドがゴーカートっぽいダイレクトというか荒い乗り心地に感じられたのは、41年間も基本設計が変わらなかったことに起因する相対的な退化が理由だ。もともとの設計は、極めてコンパクトな車体ながら最高に快適な移動ができることを目指していた。その技術レベルが50年代末から60年代相当だっただけで、そのあたり、ミニを引き取ったBMWがどう解釈しているかは知らない。
しかし、オールドを知らない人がニューに乗ったら、「確かにゴーカートみたいね」と感じる可能性は否めない。ステアリングには鼻先がくいっと切れ込むダイレクトな操作感があるから、それがほかでは味わえないおもしろさに思えたなら、カタログのコピーなどなんでもいいのかもしれない。
60年の歴史における正統なスタイル
……とまぁ、寛容なき自動車評についてボヤいたりするくせに、カタログの文言に妙なかみつき方をするのも、クルマを語るむずかしさだと納得していただけたら幸いです。あるいは、リポートも終盤になって明かすのも照れの極みだけど、実は私にオールドミニの専門誌制作に9年ほど携わっていた過去があるから、あれこれ無用に気になるのかもしれない。
久しぶりにニューに触れた率直な感想は、「やっぱりこれもミニだ」というものだ。嫌みのなさやかわいらしさといったミニならではの個性は健在だし、なによりしかるべきモデルチェンジが繰り返され、プロダクトとして相対的に古くなっていないのがうれしい。だから誰かに「小さくて元気なクルマはないか?」とたずねられたら、迷わずニューの3ドアを薦めるだろう。それが都合60年におよぶ、このクルマの歴史における正統のスタイルであることを理由に。
では、「5ドアは?」と聞かれたら……。表情が曇らないよう注意しながら、それはオールドになかったからと、心のなかで諭そうとするかもしれない。そんな心持ちでは「これはミニじゃない」と断言した人のマインドとなにが違うのか、自分でもよくわからなくなるけれど。
(文=田村十七男/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
MINIクーパー 3ドア
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3865×1725×1430mm
ホイールベース:2495mm
車重:1210kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:136PS(100kW)/4500rpm
最大トルク:220N・m(22.4kgf・m)/1480-4100rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88W/(後)205/45R17 88W(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)
価格:329万円/テスト車=439万4000円
オプション装備:デジタルパッケージプラス(14万1000円)/CLASSIC TRIM(39万円)/17インチアロイホイール テンタクルスポーク シルバー<7J×17>+205/45R17タイヤ(13万7000円)/アラームシステム(4万8000円)/ホワイトボンネットストライプ(2万1000円)/ITSスポット対応ETC車載器システム(6万2000円)/harman/kardon製HiFiラウドスピーカーシステム(11万円)/ドライビングアシストパッケージプラス(19万5000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2277km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:285.9km
使用燃料:20.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.9km/リッター(満タン法)/14.2km/リッター(車載燃費計計測値)

田村 十七男
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