第12回:“プラットフォーマー”への脱皮を目指すフォルクスワーゲンの苦悩(前編)

2021.08.23 カーテク未来招来
欧州におけるEV推進派の急先鋒(せんぽう)として注目を集めるVWだが、2021年7月に発表された将来戦略の中身は、製品のEV化だけにとどまらない、より挑戦的なものとなっていた。
欧州におけるEV推進派の急先鋒(せんぽう)として注目を集めるVWだが、2021年7月に発表された将来戦略の中身は、製品のEV化だけにとどまらない、より挑戦的なものとなっていた。拡大

2030年へ向けての経営戦略を発表した、ドイツのフォルクスワーゲン(以下、VW)。彼らの計画には他のメーカーにはない壮大な野望が含まれており、それがゆえの苦悩も感じられるものとなっていた。単なる完成車メーカーからの脱皮をもくろむ、VWの戦略を解説する。

2030年までの経営戦略「NEW AUTO−MOBILITY FOR GENERATION TO COME」を発表するVWのヘルベルト・ディースCEO。
2030年までの経営戦略「NEW AUTO−MOBILITY FOR GENERATION TO COME」を発表するVWのヘルベルト・ディースCEO。拡大
プラットフォーマーとは、ビジネスやサービスが展開されるプラットフォーム(基盤)を提供する事業者のこと。個人用コンピューター向けにOSを販売した米マイクロソフトが先駆けとされており、今をときめく“GAFA”(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などもこれにあたる。
プラットフォーマーとは、ビジネスやサービスが展開されるプラットフォーム(基盤)を提供する事業者のこと。個人用コンピューター向けにOSを販売した米マイクロソフトが先駆けとされており、今をときめく“GAFA”(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などもこれにあたる。拡大
2021年7月22日に行われたVWの年次株主総会の様子。新型コロナウイルス感染症の影響により、前回に続きオンラインでの開催となった。
2021年7月22日に行われたVWの年次株主総会の様子。新型コロナウイルス感染症の影響により、前回に続きオンラインでの開催となった。拡大

他とは趣を異にするVWの戦略

……なんだか完成車メーカーや部品メーカーの電動化戦略を紹介するリポートみたいになってきたこの連載だが、今回から3回にわたって取り上げるVW編で、それも取りあえず打ち止めとなる。おいおい、3回もあるのかよ、と思われた読者もおられると思うので最初におわびさせていただきたい。 

なぜ長くなってしまうのか。これまで紹介してきたボルボやルノー、それにステランティスの戦略は、いわばどうやって製品の電動化を進めるか、そのためのプラットフォームやバッテリー調達をどうするか、というのが内容のメインだった。これに対してVWの戦略は、もちろんプラットフォーム戦略やバッテリーの調達戦略も内容に含まれてはいるが、メインテーマはもっと大きい。すなわち、VWが今後10年の間に、ビジネスモデルをどう転換しようとしているのか、それが最大のテーマなのだ。もっとわかりやすく言えば、VWは向こう10年で、自らを“完成車メーカー”から“プラットフォーマー”へ脱皮させようとしているのである。せめて前後編で、と思ったのだが、テーマが壮大なためにどうしても2回では収まらなくなってしまった。

さて、2021年7月22日の年次株主総会においてVWのヘルベルト・ディースCEOは、同年7月13日に明らかにした2030年までの経営戦略「NEW AUTO−MOBILITY FOR GENERATION TO COME」によって、「われわれは2030年までにVWを再発明(Reinvention)する」と宣言した。ずいぶん大げさな物言いだが、確かにVWが発表した将来戦略は、これまで紹介してきた各社のそれのなかでも、最も風呂敷を大きく広げたものだった。

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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