第13回:“プラットフォーマー”への脱皮を目指すフォルクスワーゲンの苦悩(中編)

2021.08.31 カーテク未来招来
経営戦略「NEW AUTO−MOBILITY FOR GENERATION TO COME」を説明するVWのヘルベルト・ディースCEO。
経営戦略「NEW AUTO−MOBILITY FOR GENERATION TO COME」を説明するVWのヘルベルト・ディースCEO。拡大

2030年までに世界の自動車市場が2.5倍になるという、あまりに楽観的な市場予想をもとに将来戦略を立てたフォルクスワーゲン(VW)。彼らはなぜ、誰が見ても不可解に思うようなプランを示したのか? VWがどうしても株主に納得してほしかった「ある数字」とは?

VWの経営戦略「NEW AUTO」については、市場の成長予想などが非常に大胆だったのに対し、営業利益率の目標が控えめな点も目についた。写真はVWのアルノ・アントリッツCFO(最高財務責任者)。
VWの経営戦略「NEW AUTO」については、市場の成長予想などが非常に大胆だったのに対し、営業利益率の目標が控えめな点も目についた。写真はVWのアルノ・アントリッツCFO(最高財務責任者)。拡大
既存の計画では7~8%だった2025年の営業利益率の目標は、「NEW AUTO」では8~9%に引き上げられた。ただ、VWグループのコロナ禍前の利益率は7.6%であり、ここからわずか0.4ポイント上げれば達成できる計算になる。VWはこの目標を“野心的”と表現しているが……。
既存の計画では7~8%だった2025年の営業利益率の目標は、「NEW AUTO」では8~9%に引き上げられた。ただ、VWグループのコロナ禍前の利益率は7.6%であり、ここからわずか0.4ポイント上げれば達成できる計算になる。VWはこの目標を“野心的”と表現しているが……。拡大
2021~2025年の研究開発投資(R&D)と設備投資(CAPEX)の合計は1500億ユーロ。この約半分の730億ユーロを電動化とデジタル化に充てる計画だ。
2021~2025年の研究開発投資(R&D)と設備投資(CAPEX)の合計は1500億ユーロ。この約半分の730億ユーロを電動化とデジタル化に充てる計画だ。拡大

2025年までの投資額はおよそ20兆円

前回のリポートでは、VWの経営戦略「NEW AUTO−MOBILITY FOR GENERATION TO COME」における、かなり無理のある予測数字について指摘した。この戦略を練った人々は、筆者など及びもつかぬ優れた頭脳の持ち主のはず。それが、筆者のぼんくらな脳みそでも「ちょっとこれ、無理なんでねえの?」と思うような予測を出すのには、それなりの理由があったはずだ。そしてその理由とは、VWが「ある数字」について、株主にどうしても納得してもらわなければならなかったからだと思われる。

今回の戦略発表において、その数字は大げさな形容詞などなしに、実にさりげなく語られた。

「2021年から2025年までに、未来のテクノロジーに対して730億ユーロを投資する予定です。これは総投資額の50%に相当します。電動化とデジタル化への投資割合は、さらに増加します」(ヘルベルト・ディースCEO)。

そのあとすぐに、こう付け加えるのも忘れなかった。

「グループはまた、継続的に業務の効率を高め、今後2年間で固定費を5%削減するプログラムの達成に向けて、その道のりを順調に歩んでいます。また材料費をさらに7%削減し、ICE(内燃エンジン)ビジネスでは車種およびドライブトレインの数を減らし、より優れた価格ミックスを実現しながら最適化することを目標にしています」

今回の戦略発表で、VWは2021~2025年の研究開発投資と設備投資の合計が、1500億ユーロ(1ユーロ=130円換算で19兆5000億円)という途方もない金額になることを明らかにした。このうち未来のテクノロジー、すなわち電動化とデジタル化に充てる730億ユーロ(同9兆4900億円)は、その約半分を占める。一年あたりの総投資額は3兆9000億円で、そのうち電動化+デジタル化の投資が1兆8980億円ということになる。この「電動化+デジタル化投資」が、筆者の言う「ある数字」の正体だ。

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

フォルクスワーゲン の中古車
あなたにおすすめの記事
新着記事