BMWアルピナD3 Sツーリング(4WD/8AT)
しみじみ惚れ惚れ 2021.09.15 試乗記 アルピナとして初めて48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した「D3 Sツーリング」に試乗。最高巡航速度270km/hを誇るパフォーマンスとWLTP値で13.0km/リッターという燃費性能を両立した、スポーツディーゼルの走りとは?端正さが際立つ
生産台数の少なさゆえに知る人ぞ知るといった立ち位置のアルピナだが、最近は従来よりも広く認知されているように思う。アルピナに注目が集まっているのは、いつも引き合いに出される本家BMWの「M」が明らかにアグレッシブなデザインを導入していることと関係があるのかもしれない。
高性能であることは言うまでもないが、アルピナは相変わらず端正で上品で控えめであることを旨としており、自己主張が強すぎるのはちょっと、と考えるクルマ好きをより引きつけているのではないかと推察するのだ。昨年(2020年)初めてエントリーした日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)で新型「B3」がパフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した効果かもしれない。ちなみにCOTYには年間500台程度の販売台数という制限があったのだが、いつの間にか撤廃されたことでアルピナもエントリーできるようになったという。
何度も繰り返してきたが、アルピナの年間生産台数は以前から最高でも1700台程度(そのうち日本向けはおよそ2割)、Mとは生産台数が二桁違う。その中から新型や人気車種に生産能力を振り分けるから、他の量産メーカーのように注文すればいつでも買えるというわけではない。いわばつるしの定番商品ではなく生地からオーダーするスーツのようなものだ。
2020年に発売された新しいD3 Sは現行G20型/21型「3シリーズ」の「セダン」と「ツーリング」をベースにしたアルピナのディーゼルモデルで、2021年初めにデリバリーが始まった。今回試乗した車両はステーションワゴン版のツーリングである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
タフに仕立て直した直6ディーゼルターボ
本家BMWの日本仕様では、B57型直6ディーゼルターボは「X5」以上の大型SUVや「Mパフォーマンス」モデルにしか設定されておらず、通常の3シリーズや「5シリーズ」で6気筒のディーゼルターボが選べるのはアルピナだけ。しかも新型はアルピナとしては初めて48V駆動のBSG(ベルトスタータージェネレーター)を備えたマイルドハイブリッド仕様となった。
いわゆる新世代ディーゼルは4気筒でも十分パワフルでスムーズであることはご存じの通りだが、最新型直6ディーゼルの滑らかさと力強さはまた別格であり、初めて乗る人ならディーゼルとはまず気づかないはずだ。例によって吸気系や冷却系などにアルピナ独自の手が加えられた(それでもガソリンターボエンジンほどではないというが)直6ディーゼルツインターボは、最高出力355PS(261kW)/4000-4200rpm、最大トルク730N・m(74.4kgf・m)/1750-2750rpmを発生する。
最大トルクはガソリンツインターボのB3よりも強力だから、ボディーのどこにも表記はないものの当然アルラット(4WD)だ。0-100km/h加速は4.8秒(セダンは4.6秒)、これまた例によって巡航最高速度と公表されるトップスピードは270km/h(同273km/h)と発表されている。さらにスペックシートには「20インチのクラシックホイールを装着の場合3km/h低下します」という細かく律義なただし書きが加えられている。
ビールのグラスに容量の目盛りを刻むほど万事に細かいドイツ本国では、本当に最高速ですっ飛んでいく、そしてわずかでも公称値に届かないと不平を言う、うるさいカスタマーがいるのだろう。それに応えるためには瞬間風速の最高速ではなく、そのスピードを何時間でも維持できるように冷却系も潤滑系もタフに仕立てなければならない。アルピナが独自にエンジンを組み直すのにはそういう背景がある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
すべて昔ながらというわけではない
従来通り外観は控えめだが(今後フロントグリルはどうするのだろう?)、さすがのアルピナも時代の変化に対応したというべきか、これまでとは違う点がいくつかある。
最新の3シリーズ同様、フルデジタルメーターが採用されているのはもちろんだが、それに加えてステアリングホイールの握りが太い。ブルーとグリーンのアルピナカラーでステッチが入っているのだから、「Mスポーツステアリングホイール」そのままではないはずだが、リムの太さはMと同じでまるでソーセージのようだ。
ちょっとアルピナらしくないと残念に感じたが、このD3 Sにも装備されている最新のADAS用センサーなどの都合で仕方ないらしい(それでもできるだけきつく巻き直してあるという)。この太いリムに合わせてということか、標準仕様であるボタン式マニュアルシフト付き8段「スイッチトロニック」に加え、新型ではオプションでシフトパドル仕様も選べるようになった。
シートは本来アルカンターラとセンサテック(合皮)の組み合わせが標準。例によってシリアルナンバー入りのプレートが付くが、ボディーの内外装のどこにも「BITURBO(ビターボ)」や「ALLRAD(アルラット)」の文字は見当たらない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
走る人ほどわかる
さらにアルピナの変化をうかがわせるのがタイヤ&ホイールだ。アルピナに興味がある人はすぐに目を留めたはずだが、新型D3 Sにはセンターキャップ付きの鍛造「クラシックホイール」が装着されている。繊細な20本スポークデザインが特徴のアルピナクラシックホイールはもともとアルミ鋳造タイプで、センターキャップの内側にエアバルブが設けられており(スポーク部が中空構造)、リム部分には何もない簡潔で繊細なデザインが特徴だった。
鍛造になってスタッドが露出しているデザインになったはずなのだが、昔ながらの落ち着いたデザインを好む声も多かったのか、あるいは盗難防止を考えたためか、センターキャップ付きも用意されたという。
実はこの20インチホイール&タイヤはオプション(46万円)で、標準装備は星型スポークの19インチダイナミックホイールとなる。以前はタイヤとホイールは一本化されており、それに合わせ込んだ足まわりを仕立てるのがアルピナの流儀だった。新型はどちらのサイズでもタイヤは専用開発の「ピレリPゼロ」だが、従来に比べれば乗り心地も明らかにより引き締まっている。
とはいえもちろんMほどではなく、当たりは滑らかで洗練されている。どんな場面でもパワートレインのきめ細やかなスムーズさとたくましさは文句なしだが、特に高速道路でのクルージングは極上である。日常的に長距離を走る人ほど、アルピナD3 Sの上質な高性能にしみじみ感じ入るはずである。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
BMWアルピナD3 Sツーリング
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1825×1470mm
ホイールベース:2850mm
車重:1940kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ツインターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:355PS(261kW)/4000-4200rpm
エンジン最大トルク:730N・m(74.4kgf・m)/1750-2750rpm
モーター最高出力:11PS(8kW)/--rpm
タイヤ:(前)255/30ZR20 92Y/(後)265/30ZR20 94Y(ピレリPゼロ)
燃費:13.0km/リッター(WLTCモード)
価格:1117万円/テスト車=1329万5000円
オプション装備:ボディーカラー<BMWメタリックペイント サンセットオレンジ>(18万円)/パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)/サンプロテクションガラス<リアドアウィンドウ、リアウィンドウ>(9万円)/ガルバニックフィニッシュ(2万2000円)/ランバーサポート<運転席&助手席、電動式>(3万5000円)/リアシートヒーティング(6万円)/地上デジタルTVチューナー<12セグ/ワンセグ自動切り替え>(13万6000円)/アルピナセーフティーパッケージ<アクティブプロテクション、ドライビングアシストプロフェッショナル、BMWレーザーライト、パーキングアシストプラス、ヘッドアップディスプレイ>(59万8000円)/アルピナラグジュアリーパッケージ<ヴァーネスカレザーインテリア、アルピナクラシック20インチホイール&タイヤセット[鍛造]、アコースティックガラス、レーザーフィニッシュダッシュボード、harman/kardonサラウンドサウンドシステム>(79万8000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:5482km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:260.2km
使用燃料:21.92リッター(軽油)
参考燃費:11.9m/リッター(満タン法)/12.7km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
-
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】 2026.2.14 トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.2.11 フルモデルチェンジで3代目となった日産の電気自動車(BEV)「リーフ」に公道で初試乗。大きく生まれ変わった内外装の仕上がりと、BEV専用プラットフォーム「CMF-EV」や一体型電動パワートレインの採用で刷新された走りを、BEVオーナーの目線を交えて報告する。
-
ホンダN-ONE RS(FF/6MT)【試乗記】 2026.2.10 多くのカーマニアが軽自動車で唯一の“ホットハッチ”と支持する「ホンダN-ONE RS」。デビューから5年目に登場した一部改良モデルでは、いかなる改良・改善がおこなわれたのか。開発陣がこだわったというアップデートメニューと、進化・熟成した走りをリポートする。
-
日産キャラバン グランドプレミアムGX MYROOM(FR/7AT)【試乗記】 2026.2.9 「日産キャラバン」がマイナーチェンジでアダプティブクルーズコントロールを搭載。こうした先進運転支援システムとは無縁だった商用ワンボックスへの採用だけに、これは事件だ。キャンパー仕様の「MYROOM」でその性能をチェックした。
-
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】 2026.2.7 モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”(後編)
2026.2.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。ハイブリッドシステムを1.8リッターから2リッターに積み替え、シャシーも専用に鍛え上げたスポーティーモデルだ。後編ではハンドリングなどの印象を聞く。 -
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】
2026.2.14試乗記トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。 -
核はやはり「技術による先進」 アウディのCEOがF1世界選手権に挑戦する意義を語る
2026.2.13デイリーコラムいよいよF1世界選手権に参戦するアウディ。そのローンチイベントで、アウディCEO兼アウディモータースポーツ会長のゲルノート・デルナー氏と、F1プロジェクトを統括するマッティア・ビノット氏を直撃。今、世界最高峰のレースに挑む理由と、内に秘めた野望を聞いた。 -
第860回:ブリヂストンの設計基盤技術「エンライトン」を用いて進化 SUV向けタイヤ「アレンザLX200」を試す
2026.2.13エディターから一言ブリヂストンのプレミアムSUV向けコンフォートタイヤ「アレンザLX100」の後継となるのが、2026年2月に発売された「アレンザLX200」。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて開発された最新タイヤの特徴を報告する。 -
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(前編)
2026.2.12あの多田哲哉の自動車放談イメージキャラクターの「デリ丸。」とともに、すっかり人気モノとなった三菱の軽「デリカミニ」。商品力の全体的な底上げが図られた新型のデキについて、元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんが語る。 -
ホンダアクセスが手がけた30年前の5代目「プレリュード」に「実効空力」のルーツを見た
2026.2.12デイリーコラムホンダ車の純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスがエアロパーツの開発に取り入れる「実効空力」。そのユニークなコンセプトの起点となった5代目「プレリュード」と最新モデルに乗り、空力パーツの進化や開発アプローチの違いを確かめた。





































