ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ 開発者インタビュー
電動化をアフォーダブルに 2021.12.14 試乗記 ダイハツ工業技術統括本部 製品企画部
エグゼクティブチーフエンジニア
仲保俊弘(なかほ としひろ)さん
「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」のハイブリッドモデルは、なぜ実績十分のトヨタ方式ではなく、独自のシリーズ式を採用したのだろうか。さらに、シリーズ式で先行する日産とはどんな違いがあるのだろうか。開発のキーマンに聞いてみた。
シリーズ式を採用した必然
5ナンバーのコンパクトSUV、ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズが発売されたのは2019年11月。2年を経てのマイナーチェンジだが、ダイハツにとっては“マイナー”どころか大変革のモデルである。初の本格的ハイブリッド車であり、新エンジンを搭載しているのだ。開発を主導したエグゼクティブチーフエンジニアの仲保俊弘さんに、新型モデルとダイハツの将来に向けた計画について話を伺った。
――1965年から電動車の研究を始めていたということですが、ハイブリッド車もそのなかに入っていたのでしょうか?
仲保俊弘さん(以下、仲保):以前からハイブリッドをやらなければと考えていて、準備は相当前からやっています。2005年に商用車の「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」を発売しましたが、あれは限られた数でした。今回はハイブリッドを世の中に出すということで、全社を挙げて開発してきましたね。
――初の試みですから、どんなハイブリッドシステムを採用するかについては議論があったんでしょうね。
仲保:マイルドハイブリッドも含めて、あらゆる可能性を考えました。ただ、ハイブリッドシステムを使う意味はCO2の排出量を減らすことや燃費を良くすることにあるので、本格的なハイブリッドをやるべきだと考えたんです。
――トヨタグループに属しているわけですから、トヨタ方式を採用するというのが手っ取り早そうですが……。
仲保:もちろん、トヨタの「THS II」は優れた技術で、ダイハツからはトヨタに人を派遣して教えていただきました。やはり先人から学ぶというのは大切なことですから。5、6年前から、延べ50人以上は出向したと思います。われわれもシリーズ式ハイブリッドの研究を進めていて、軽くて小さなクルマ、小排気量ということを考えるとシリーズのほうがいいんじゃないかということになりました。
――方針が決まったのはいつごろですか?
仲保:かなり前です。ユニットの開発には時間が必要ですから。4、5年はかかっていますね。
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軽ハイブリッドをできるだけ早く
――THS IIは使わなくても、トヨタグループだったことでメリットはあったんでしょうね。
仲保:まったくのゼロから始めなくてよかったのは好都合でした。ジェネレーターやパワーコントロールユニット(PCU)、バッテリーなど、共通部品もあります。コスト的にも有利ですし、開発期間を短くできます。
――電動化は避けて通れない流れになっていますが、今回ハイブリッド車を発売したのはこれから10年、20年後を見据えたうえでの第一歩ということですか?
仲保:将来的にEVを出すということになれば、シリーズハイブリッドは駆動がモーターのみの制御ですから、技術を生かしやすいという判断はありますね。
――開発のなかには、軽自動車も視野に入っていますよね。
仲保:小さなクルマに有利なシステムということは、常に頭にあります。基本的には今回の技術を生かしながら、軽自動車をできるだけ早い時期に出しなさい、とハッパをかけられていますよ(笑)。
――ダイハツはいつも新技術を軽自動車に投入し、それをコンパクトカーに広げるというかたちをとっているイメージがありますが……。
仲保:確かに、軽で培った技術を大きなクルマに転用して良品廉価を実現していくというのが基本的な思想です。ただ、ハイブリッドを採用するのはCO2を減らして、燃費を良くしていくためですから、軽自動車では“効果シロ”と払っていただくお金を見合うようにするのが厳しいんです。軽自動車はもともと燃費がすごくいいわけですよ。ハイブリッドを付けた時の“効果シロ”を考えると、ハードルが相当高い。ライフサイクルアセスメント(LCA)で考えた時に小型車に適用したほうが大きな効果が得られるということで、今回は小型車を選択しています。基本的な思想は変わっていないんですけど、効果の大きいところからやり始めたということです。
素を磨くことが大切
――ハイブリッドが注目されるのは当然ですが、新しいエンジンの採用も大きなトピックですよね。
仲保:ダイハツでは十数年ぶりと聞いています。ブロックからヘッドから、全部新しくしました。ハイブリッドとか電動化は大事ですけれど、根本的な素のところを良くしていきましょうと。燃焼効率を上げた新しいエンジンを出していかないと、遅れてしまいますから。
――欧州メーカーのなかには、もう内燃機関の開発はやめますと言っているところもあります。
仲保:親会社のトヨタもいろいろなところで発信していますけど、選択肢を広げることが重要です。足元の状況を見ると、全部電気自動車にしたところで本当にCO2を減らすことができるのでしょうか。むしろ、素を磨いた燃費のいいエンジンを、お買い求めやすい価格で提供するということが大切かなと思っています。
――熱効率が40%というのは、本当にトップクラスの数字ですね。
仲保:わが社もトヨタと肩を並べました、ぐらいの気持ちはあります(笑)。40というのはキリのいい数字なので、目標にしました。燃焼室で早く着火して均一な噴霧状態を作って燃やすというところでいろいろ工夫をしています。コンピューターシミュレーションや可視化の技術が進んでいるのが大きかったと思います。
――モーター駆動は、エンジン駆動とはかなり走りのテイストが異なると思いますが、この分野で先行している「日産ノート」などは研究したんですか?
仲保:かなり勉強させていただいてはいます。それで、なるほどと思ったり、ここはもっと良くなると考えたり。燃費を良くするためにはなるべくエンジンをかけないほうがいいんですが、そのタイミングなどはいろいろ研究しました。
――エンジン車にはなかった苦労がある?
仲保:エンジンがかかったりオフになったりするわけで、そこをスムーズにするのが難しいところですね。音や振動というところでは工夫する余地があって、まだまだ途上だと思っています。大きなクルマからダウンサイズする方にガマンを強いるクルマにしてはいけないんですよ。
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こだわったのは燃費と価格と電動感
――モーター駆動のクルマはワンペダル運転が可能で、ロッキー/ライズも「スマートペダル」を採用していますね。ノートは初代ではアクセルオフで強力に減速しましたが、2代目では作用が弱まりました。「トヨタ・アクア」の「快感ペダル」はもっとマイルドです。スマートペダルはどんな味つけですか?
仲保:ワンペダル感というのはかなり意識していて、それなりに感じられると思います。現行ノートよりも強力ですね。完全に停止するにはブレーキを踏む必要があります。最後はドライバーが止めるというのはトヨタの考え方と同じです。
――初代ノートや「BMW i3」のような完全なワンペダル運転は、ユーザーから受け入れられなかったということでしょうか。
仲保:難しいところです。正解はありません。慣れは必要ですが、スマートペダルは街なかではかなりの部分をワンペダルで運転できます。回生を多くすることで燃費が良くなりますので、いろいろな要素を勘案して減速度を決めました。不快だというお客さまもおられますので、オフにもできます。
――既存の1リッターターボと比べると、モード燃費は1.2リッターの純エンジンモデルで従来モデルより約10%向上して、ハイブリッドモデルだと5割ぐらい良くなっていますね。これはちょっと驚異的です。
仲保:燃費と価格、電動感には、こだわって開発しました。
――そのなかで、ライバルと比べてここは圧倒的に勝っていると考えるポイントはどこですか?
仲保:それはもう、アフォーダブルな価格ですね。
――ノートのベーシックグレードよりは少し高いですが、コンパクトカーとSUVという違いがあります。それに、ノートは「プロパイロット」がオプションですね。
仲保:ロッキー/ライズは全車に「スマートアシスト」が付いていますので。
――ということは、ノートより安い?
仲保:はい、そう思っています。
終始控えめな言葉遣いだった仲保さんだが、価格についての質問にはきっぱりとした口調で答えた。ロッキー/ライズは、やはり“良品廉価”というダイハツの基本思想を体現したクルマなのだろう。
(文=鈴木真人/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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