第675回:新型「日産ノート」の氷上性能を徹底チェック 「オーラ」に「NISMO」にFWDも4WDもまとめて試す
2022.02.09 エディターから一言 拡大 |
長野県の女神湖で日産の現行ラインナップに一気乗り。とりわけ2022年の目玉は新型「ノート」だ。上級モデルの「ノート オーラ」や「ノート オーラNISMO」、さらには前輪駆動(FWD)も四輪駆動(4WD)もまとめて氷上性能をチェックした。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
まるでローション相撲
毎冬恒例の氷上イベントといえば、世間ではディズニー・オン・アイスかもしれないが、われわれ自動車メディアにとっては日産試乗会on女神湖だ! 凍った湖面にコースを設定してスタッドレスタイヤ付きの日産車を走らせるのだ。十分に気温が下がらず、氷の厚さが足りずに開催できない年もあるが、2022年はまずまずの厚みが確保され、無事に走らせることができた。ただしめちゃくちゃ分厚いというわけでもなかったようで、複数のクルマを近くに集め(て荷重を集中させ)過ぎないようにという注意はあった。怖っ。
コースはスタート後、約80km/hに達するゆるーい左コーナー(ほぼストレート)があり、あとは5~30km/hで曲がるさまざまな曲率のコーナーの連続だ。凍って出来た路面なので低ミューなのは当然として、サーキットのコーナーのようにバンクがついておらず、非常にクルマを曲げにくい。加えて今年われわれが参加したのは午後だったため、日射によって表面が溶け、水膜が出来ていた。この世で最もグリップしにくい路面と言って差し支えないはずだ。毎年歩くような速度で走行するクルマのコントロールに四苦八苦する。お笑い芸人にとってのローション相撲のような仕事かもしれない。
前回この試乗会に参加した際、ノートはまだ先代で、「e-POWER」モデルは追加されていたものの、FWDしかなかった。今回は現行型ノートの4WDのほか、上級モデルのオーラのFWDと4WD、それからノート オーラNISMO(FWDのみの設定)も用意されていた。
電気と高相性の低ミュー路面
電気自動車の「リーフ」同様、100%電気モーター駆動のe-POWERモデルは、アクセル操作に対する反応が非常によいので低ミュー路を走らせやすい。このことは過去に同じ場所で何度か経験して分かっている。例えばエンジンで駆動するクルマだと、アクセルペダルを少しだけ踏んだ時に期待した反応が得られず、さらに深く踏んで今度は期待以上に駆動輪を回すことになり、そのことで横方向のグリップを失って外側に膨らんだり、トラクションコントロールを作動させてしまって思った以上に速度を殺してしまったりと、意図したとおりにコントロールできないことがある。モーター駆動なら一般的なドライバーがなし得る最小限のアクセル操作にもビビッドに反応するため、意図どおりに動かせないことはない。その意図が正しいかどうかはまた別の話だが、とにかく忠実だ。
ブレーキングもしかり。摩擦力を使うフットブレーキについてはエンジン駆動のクルマもモーター駆動のクルマも同じで、わずかに踏んだつもりがつい踏み過ぎて減速し過ぎたり、グリップを失って盛大にABSを作動させてしまったりすることがある。だがモーター駆動のクルマはアクセルオフのみで強い減速が得られるため、フットブレーキを使う頻度を減らすことができる。右足でペダルを踏み替えるよりも、単に右足に込めた力を緩めるだけのほうが、操作として絶対に簡単だ。
そうした利点をもったe-POWER搭載のノートが、2モーターの4WDになるとどうなるか、というのが今年の一番の関心事だ。最初に「ノート オーラG Fourレザーエディション」でコースイン。まず発進加速が強烈だ。速いのは最高出力136PS、最大トルク300N・mと、コンパクトカーにしては立派なスペックを誇っているからではなく、リアにも同68PS、同100N・mのモーターが組み込まれているからだ。といっても、前後のモーターが同時にピーク値を発揮できるわけではないので、前後モーターのスペックを足した数値がクルマの実力となるわけではない。クルマ全体として発揮できる最高出力は同じなので、ドライ路面ではスタートダッシュの一瞬を除くと力強さは同じだ。そもそもエンジンに前後モーターが最高出力を同時に発生させるだけの十分な発電能力がない。
回生にも役立つ電動4WD
ただツルツル路面でタイヤ1輪が路面に伝えられるトルクが限られているため4WDは有効だ。具体的な数値は分からないが、仮にこの路面で発進する際に1輪が路面に伝えられるトルクが最大20N・mとしたら、FWDなら40N・mだが4WDなら80N・mになる。それが4WDの最大の強みだ。そしてモーター駆動の場合、発進と同時に最大限の力に達せられる。この路面なら、スタートから数百mの勝負であれば後輪駆動(RWD)の「スカイライン400R」よりもよっぽど速い。この日、実際に試してみたから間違いない。
同じ理由でコーナリング時の安定性も4WDのほうが上だ。旋回時、駆動輪はグリップ力を縦方向と横方向に分散して使っているため、縦方向に使えるグリップ力は直進時よりも低い。この際、FWD車だと駆動していない後輪はグリップ力を余らせて追従していることになる。だからFWDだと低ミュー路でアクセルを踏み過ぎると前輪から外へ膨らんでいくのだ。それが4WDなら後輪もグリップ力を縦方向と横方向に分散して最大限の仕事をするため、縦方向のグリップ力が増し、より高い速度で旋回できる。
そして低ミュー路では、減速時にもモーター駆動の4WDの優位性が際立った。「モーター駆動のクルマはアクセルオフのみで強い減速が得られるため、フットブレーキを使う頻度を減らすことができる」と前述したが、アクセルオフによる回生ブレーキはエンジンブレーキ同様、モーターをはじめとする駆動系部品の抵抗によって発生する。このためFWDでは前輪にしか発生しない回生が、4WDだと前後輪で発生するため、より高い減速Gを得られるのだ。
今回、80km/h前後に達した時点でアクセルを戻すと、かなり強い減速Gが得られ、スムーズにコーナーへ進入することができた。次の周回で、試しにアクセルを戻したのと同じ位置で目いっぱいブレーキペダルを踏んでABSで減速してみたが、極めて低ミューの路面のため、得られる減速の度合いはほとんど一緒だった。FWDのノート オーラで同じことを試すと、フットブレーキのほうが短い距離で速度を減じることができた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
4WDのラインナップ強化を
いかに低ミュー路であっても、1cmでも短く止まりたい緊急回避の場面でこの特性を生かしてとっさにフットブレーキではなく回生ブレーキに身を任せようとはならないと思うが、スムーズに速度を減じたい場面でこの強い回生ブレーキは非常に有効だ。つまりe-POWERモデルはFWDでもエンジン駆動モデルに対し低ミュー路でクルマをスムーズにコントロールすることができ、4WDのe-POWERであれば、加速、旋回、減速のすべての状況で優位に立つことを体感できた。
日産はどうしてリーフに4WDを設定しないのか。降雪地域ではそもそもあまり売れないからというのもあるのかもしれない。ただし今年のどこかで登場する新型電気自動車の「アリア」は前後モーターによる4WDなのでこうした優位性をもっている。楽しみ。姿は随分前に明らかになっているので早く本格的に登場してくれないと発売前に新鮮味を失ってしまう。
ノート オーラNISMOは、ノート オーラとピークパワーは同じながら、よりレスポンシブな特性が与えられており、標準装備の夏タイヤを含め足まわりにも専用のチューニングが施されている。ドライ路面で乗るとノート オーラに対しファン・トゥ・ドライブ度3割増し。ただしこの低ミュー路ではスポーティーな特性を生かしきれず、ノート オーラと同じような走りにとどまった。ノート オーラNISMOには現状FWDしか設定がなく、4WDモデルの追加が期待されている。先代に設定された「NISMO S」というさらなるスポーティーバージョンが現行にはまだないので、NISMO Sとして4WDモデルが追加されるのかもしれない。また最後に、エンジニアへの取材のなかで、現在FWDしか設定のないSUVの「キックス」への4WDモデル追加についても、期待してよさそうな感触を得たことを報告しておきたい。
(文=塩見 智/写真=日産自動車/編集=藤沢 勝)

塩見 智
-
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気 2026.1.15 日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。
-
第857回:ドイツの自動車業界は大丈夫? エンジニア多田哲哉が、現地再訪で大いにショックを受けたこと 2026.1.14 かつてトヨタの技術者としてさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さん。現役時代の思い出が詰まったドイツに再び足を運んでみると、そこには予想もしなかった変化が……。自動車先進国の今をリポートする。
-
第856回:「断トツ」の氷上性能が進化 冬の北海道でブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1」を試す 2025.12.19 2025年7月に登場したブリヂストンの「ブリザックWZ-1」は、降雪地域で圧倒的な支持を得てきた「VRX3」の後継となるプレミアムスタッドレスタイヤ。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて進化したその実力を確かめるべく、冬の北海道・旭川に飛んだ。
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
NEW
スズキ・ワゴンR ZL(FF/5MT)【試乗記】
2026.1.28試乗記スズキの「ワゴンR」がマイナーチェンジ。デザインを変更しただけでなく、予防安全装備もアップデート。工場設備を刷新してドライバビリティーまで強化しているというから見逃せない。今や希少な5段MTモデルを試す。 -
NEW
クワッドモーター搭載で過去にないパフォーマンス BMWが示したBEV版「M3」の青写真
2026.1.28デイリーコラムBMW Mが近い将来に市場投入を図る初のピュア電気自動車の骨子を発表した。車種は明かされていないものの、「BMW Mノイエクラッセ」と呼ばれており、同時に公開された写真が小型セダンであることから、おそらく次期型「M3」と思われる。その技術的特徴を紹介する。 -
NEW
第100回:コンパクトSUV百花繚乱(前編) ―デザイン的にも粒ぞろい! 老若男女をメロメロにする人気者の実情―
2026.1.28カーデザイン曼荼羅日本国内でも、海外でも、今や自動車マーケットで一大勢力となっているコンパクトSUV。ちょっと前までマイナーな存在だったこのジャンルは、なぜ老若男女をメロメロにする人気者となったのか? 話題の車種を俯瞰(ふかん)しつつ、カーデザインの識者と考えた。 -
“走行性能がいいクルマ”と“運転しやすいクルマ”は違うのか?
2026.1.27あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマの「走行性能の高さ」と「運転のしやすさ」は本来、両立できるものなのか? 相反するようにも思える2つ特性の関係について、車両開発のプロである多田哲哉が語る。 -
スバル・ソルテラET-HS(4WD)【試乗記】
2026.1.27試乗記“マイナーチェンジ”と呼ぶにはいささか大きすぎる改良を受けた、スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」。試乗を通して、劇的に改善した“BEVとしての性能”に触れていると、あまりに速いクルマの進化がもたらす、さまざまな弊害にも気づかされるのだった。 -
【番外編】バイパー、磐越を駆ける
2026.1.27バイパーほったの ヘビの毒にやられましてwebCG編集部員が、排気量8リッターの怪物「ダッジ・バイパー」で福島・新潟を縦走! 雄大な吾妻連峰や朋友との酒席で思った、自動車&自動車評論へのふとしたギモンとは。下手の考え休むに似たり? 自動車メディアの悩める子羊が、深秋の磐越を駆ける。














































