シトロエンC5 Xハイブリッド(FF/8AT)
万人受けは必要ない 2022.05.19 試乗記 やはりシトロエンは普通じゃない。新たな旗艦「C5 X」はセダンとワゴンとSUVをクロスオーバー……とされており、聞いただけでは中身が全く想像できないクルマだ。というわけで(?)、フランスまで赴いてその謎を解き明かしてきた。カテゴライズが難しい
フランスのシトロエンは独創的なクルマづくりで知られる。1930年代の昔から前輪駆動車の可能性を信じていたし、1950年代にはサスペンションパーツとして金属がとぐろを巻いたやつではなくオイルとガスを封入したスプリングを採用した。スタイリングも他に似ていない。ステランティスのいちブランドとなった現在では、主要コンポーネンツを他ブランドと共有するため、キテレツ性、もとい独創性は薄まったが、スタイリングにせよメカニズムにせよ、昔からのファンが納得でき、新しいファンも獲得できる絶妙なところを突いていると思う。
そんななか、2021年に登場し、2022年中に日本にやってくるC5 Xは、どちらかというと古くからのファンに寄り添い気味のアクの強い内容で登場した。マツダのSUVと書き間違えそうになるので単語登録した。C5 Xは、まずスタイリングがユニークだ。決してトレンディーではない。「5ドアリフトバック」と呼びたくなる。リアハッチはその角度が最近では見かけないなだらかさだ。車高が高いわけではないが、ロードクリアランスは大径タイヤによって一般的な乗用車よりもしっかりと確保されている。とはいえ前輪駆動なので、各社が派生モデルとしてしばしば設定する“オールロード系”でもなさそうだ。
そして最新のファミリー顔。中央のダブルシェブロンの両端がそのまま上下2本の平行線となって左右に伸び、両端で上下に分かれてそれぞれヘッドランプユニットの一部となる。全幅の広いクルマに適用するとワイドさが強調される。人が両手で顔を左右に引っ張ったときのようだ。とにかくカテゴライズが難しい。セダンでもワゴンでもSUVでもない。近ごろは分類しにくいクルマをクロスオーバーと呼ぶが、車名のXはそういう意味なのだろう。いずれにせよ、これがシトロエンの新しい旗艦なのだ。
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パワートレインは2タイプ
1.6リッター直4ガソリンターボエンジンと、そのエンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド車(PHEV)の2種類が設定される。いずれも8段ATと組み合わせられる。今回試乗したのは「C5 Xハイブリッド」。シトロエンはPHEVをハイブリッドと呼ぶ。PHEVはグループ各ブランドの「シトロエンC5エアクロスSUV」「プジョー508」「DS 4」「DS 9」が用いるのとほぼ共通で、C5 Xには総電力量12.4kWhのバッテリーが搭載される。
走りは他の多くのPHEV同様、バッテリー残量に余裕がある場合、EV走行を基本とし、高い負荷をかければエンジンが駆動に加勢する。エンジンが最高出力180PS、最大トルク300N・mを、モーターが同110PS、同320N・mをそれぞれ発生する。両者が同時にピークパワーを発揮するわけではなく、システム上の最高出力は225PSとなる。
電動車の常として、このパワートレインならではの特徴があるわけではないが、発進から高速域まで余裕があり、何の不満もない。エンジンがかからない領域での音と振動のなさは、後述する素晴らしい乗り心地と組み合わせられることで一層価値を増す。
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おうような乗り心地
最近のシトロエン各モデルにはアドバンストコンフォートシートが備わる。長時間走行時の疲労の少なさはC5エアクロスSUVや「C4」で確認済み。もちろんC5 Xにも採用される。なんせ旗艦だから。肉厚の低反発系クッションがふんだんに用いられ、腰を掛けると、体が適度に沈み込み、面でホールドしてくれるのが心地よい。大昔の「DS」をはじめ、古いシトロエンのシートはふかふかなことで有名だが、とにかくふかふかなのが豪華と考えていた当時のシートよりも、科学的に開発されたアドバンストコンフォートシートのほうがずっと快適なはずだ。昔と張り合ってもしかたないのだが。
加えてかつての「ハイドロニューマチック」および「ハイドラクティブ」サスペンションに代わる新たな足まわりの特徴である「プログレッシブハイドローリッククッション」も当然装備される。セカンダリーダンパーを用い、不快な突き上げを低減するこのシステムによって、速度域や路面状況を問わず常にソフトな乗り心地が、前後左右の分け隔てなく乗員全員に振る舞われる。
他のシトロエンでその快適性は実証されているが、車体の大きなC5 Xと組み合わせると効果抜群で、小さな悩みならどうでもよくなるおうような乗り心地がもたらされる。万人向けではない。バウンシング系の上下動の大きさ、ロールの深さを嫌う人もいるだろう。ただスタイリングの時点で万人向けではないので問題なし。
昔の味を最新技術で再現
他のモデルにも備わる装備ばかりでは旗艦として格好がつかないということで、乗り心地改善策のダメ押しとして「アドバンストコンフォートアクティブサスペンション」というシステムが、ハイブリッドに限り装備される。
これらの結果、C5 Xはとてつもなく快適なクルマに仕上がっていた。これまでシトロエンで最も乗り心地がよいのはC5エアクロスSUVだったが、旗艦として華麗にこれを上回った。これに貢献しているのがアドバンストコンフォートアクティブサスペンションだと思う。入力を受けてボディーが動き過ぎるケースがあるシトロエン特有の挙動を適度に抑え込むので、高速域では他のシトロエンにはないフラットネスが備わっていた。グランドツーリングしたくなるクルマだ。
C5 Xはかつてのシトロエンの持ち味を、最新技術を用いて復活させた(現代的に解釈した)日本導入が待ちきれないモデルだった。ただガソリン車とPHEVのみなのが不満。ディーゼルはどうしたディーゼルは? 本国にも設定されていないので望み薄だが、電化一辺倒の昨今だからこそ、なんとかディーゼルを残す独創的知恵を発揮してほしい。
(文=塩見 智/写真=ステランティス/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
シトロエンC5 Xハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1865×1485mm
ホイールベース:2785mm
車重:1697kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:180PS(133kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-2500rpm
タイヤ:(前)205/55R19 97V/(後)205/55R19 97V(ミシュランeプライマシー)
ハイブリッド燃料消費率:1.3リッター/100km(約76.9km/リッター。WLTPモード)
EV走行換算距離:50km(WLTPモード)
充電電力使用時走行距離:50km(WLTPモード)
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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