トヨタ・クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”(4WD/6AT)/シトロエンC5 Xプラグインハイブリッド(FF/8AT)
ワインディングロードの死闘 2023.10.21 試乗記 「トヨタ・クラウン クロスオーバー」VS「シトロエンC5 X」の後編。高速道路の走りで勝負が決したかと思いきや、ワインディングロードを攻めてみると印象がガラリと一変。果たして軍配はどちらに上がるのだろうか。骨太な乗り味のクラウン
(前編からの続き)
取材日の夜明け前。自宅の近くの駐車場にとめた鮮烈な赤と黒の「クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”」に乗り込む。エンジンスタートのボタンを押すと、まずは車載インフォテインメントシステムが「今日は○月○日。CMの日です」と教えてくれる。なんて親切なんだ。と感心しながら走りだす。
トヨタ車共通の特徴は、走りだした直後の印象がものすごくよいことである。もちろんクラウンも例外ではない。ちょっとうねった一般道を低速で走っていても、乗り心地は快適で、ボディーのしっかり感が伝わってくる。ステアリングをはじめ、操作系は若干重めで、ドライビングフィールも骨太な感じがする。
早朝のことゆえ、道はすいている。首都高速に上がって中央道を目指す。アクセルペダルをガバチョと踏み込むと、2.4リッター直4ターボがグオオオッとうなりを上げて加速する。男性的でスポーティーなのだ、RS“アドバンスト”は。2.4リッター直4ターボはそれ自体、パワフルで、最高出力272PS/6000rpmを発生、最大トルクは460N・m/2000-3000rpmもある。しかも、エンジンと6段ATの間にはさみ込まれたモーターは82.9PSの最高出力と292N・mの最大トルクを誇る。強力なこのモーターが時にモーターのみで走行したり、エンジンをアシストしたりする。
スペック以上の軽快感
この「2.4リッターターボ デュアルブーストハイブリッドシステム」を搭載するRSは、後輪をモーターで駆動する4WDでもある。リアのモーターは80.2PSと169N・mで、「E-Fourアドバンスト」と呼ばれる統合システムが走行状態に合わせて前後トルク配分を緻密に制御する。首都高速を走りながら、ダッシュボードのスクリーンでパワーの流れを見ていると、ドライ路面を直進中でもアクセルオンのたびに後輪にも軽く伝達している。そうすることで姿勢をフラットに保とうとしてもいるのだ。
2.4リッター直4ターボのハイブリッドと後輪用モーターはシステム最高出力349PSを発生する。速いわけである。ターボの苦手な低回転域はモーターがカバーするから、感覚的な軽快感は数値以上のものがある。アクセルへの入力に対して、レスポンスよく、予想以上にスッと動きだす。実は車重が1930kgに達するヘビー級であることをドライバーに悟らせない。ただし、人間は状況に慣れる生き物なので、慣れるとそういうものだと思ってしまって、当初の感動を忘れる。それでもけなげにクラウンはスッと反応し続けている(はずだ)。
乗り心地に関しては3つの要素から成り立っている。第1にヘビー級の車重だ。一般に上屋は重いほうが乗り心地はよくなる。第2にナビゲーションの情報でダンパーの減衰力をあらかじめ最適制御する「NAVI・AI-AVS」を標準装備している。この電子制御の可変ダンパーは状況によってソフトな印象を与えることもある。第3にタイヤで、225/45R21という超大径のヨンゴー偏平のわりにトレッドの細いサイズのミシュランが快適性と静粛性の面で貢献しているものと考えられる。
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ワインディングロードで印象が一変
シトロエンC5 Xに乗り換えたのは、中央道の下り、相模湖のちょっと先の藤野PAだった。ちょっとばかし高めの敷居をまたいで運転席に着座する。スタートボタンを押して始動すると、プラグインハイブリッドのこのクルマは自動的に「エレクトリック」モードとなり、電池のエネルギーが残り数%でもモーターで走り始める。なので、動きだした直後のスムーズさと静粛性はクラウンにまったくひけをとらない。
C5 XのEV走行換算距離は65kmなので、東京都心から藤野PAまで普通に走ってくると、当然バッテリーは空っぽになる。いよいよ空になると、エンジンが勝手に始動して、前輪を駆動すると同時に、発電したエネルギーをバッテリーに送る。エンジン始動の際、音も振動も特に発しないのは上手なところで、少なくとも筆者は注意していたつもりなのに感知できなかった。
高速走行時の乗り心地は、あいにく期待したのとはちょっと違っていた。C5 Xは基本的に「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」という、ダンパー内にもうひとつダンパーを組み込んだシトロエン独自の足まわりを採用している。このPHCが往年の「ハイドロニューマチックサスペンション」を思わせるフワフワの乗り心地を実現しているのだ。
ところが「プラグインハイブリッド」モデルのみは、PHCを電子制御化した「アドバンストコンフォートアクティブサスペンション」という足まわりを標準で備えている。このアクティブサスペンションがオートルート並みの制限速度で高速巡航すると意外と硬くなる。少なくともフワフワではなくなる。うねった路面は気持ちよいけれど、目地段差のような路面ではハーシュネスを許す。クラウンから乗り換えると、ボディーの剛性感もやや低く感じる。静粛性もまたしかり。クラウンは車内のこもり音をスピーカーからの制御音で打ち消すアクティブノイズコントロールを装備しており、均一的な静かさを提供する。C5 Xは状況によって、うんと静かな場合と、ロードノイズと風切り音の侵入を、派手ではないものの、それなりに許す場合とがある。
高速巡航ではクラウンに軍配が上がり、筆者的に推しはクラウンか……と決めかけていた考えを改めたのは、河口湖方面の一般道と、西湖へと向かう、ちょっとしたワインディングロードだった。C5 Xのハンドリングを含めた走りっぷりがものすごくよいのだ。
パワーははっきりクラウンに劣る。クラウンのほうが断然速い。でも、クラウンはワインディングで全開にすると、おっかないほど速い。逆にC5 Xは全開にしても全然コワくない。1.6リッター直4ターボエンジンは最高出力180PS/6000rpmと最大トルク250N・m/1750rpmを、エンジンと8段ATとの間に挟まれたモーターは110PSと320N・mを発生するものの、システム最高出力は225PSにすぎず、クラウンの349PSに比べたら100PS以上もの差がある。
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どちらかを買えと言われたら
ただし、C5 Xの車重は1790kgと、クラウンより140kgも軽い。おまけにシステム最大トルクは360N・mもある。コーナーの半ばから出口めがけて全開にすると、モーターが320N・mの大トルクでもって比較的軽いボディーを瞬時に引っ張り、そこから直4ターボが加勢してのびやかに加速する。この連携が自然で好ましく、さらに直4ターボの快音と滑らかな回転フィールが余韻として残る。
コーナー進入時、「スポーツ」モードに切り替えても、ボディーは天地がひっくり返る、ほどではないにしても、深々とロールする。ヘタの横好きドライバーの筆者としては、大変「やってる感」がある。純然たる前輪駆動のおかげで、クルマの動きは終始安定している。凸凹路面はアドバンストコンフォートアクティブサスペンションが期待以上のしなやかさを披露し、ステアリングやお尻から、軟式テニスのゴムボールをウニュウニュしているみたいな気持ちよさを感じる。
対して、クラウンでのワインディングの全開走行は、私的には速すぎて楽しめない。もしかしてNAVI・AI-AVSによるものなのか、姿勢の制御に違和感を抱くこともあった。単純に申し上げると、もっと自然にロールしてほしいところで、妙に突っ張ってロールしない。ま、だから違和感がある、と表現しているわけである。
それと、軽くアクセルを踏んだときにはスッと動きだす感があるのに、コーナーの立ち上がりで全開にしたときに一瞬、遅れを感じる。もしかして、燃費の悪化を惜しむとか、制御上の合理的な理由から、全開時でもモーターが大トルクを発生しないセッティングになっているのかもしれない。
ワインディングロードを全開で走る。なんてことは、家が山の中にある方でもない限り、年に何度もないはずだ。なので、そのことで優劣を決めるのは早計である。C5 Xは乗降の際、敷居が若干高いとか、あるいはホイールベースがクラウンより65mm短いことによる後席居住空間の狭さとか、クラウンにはっきり負けているところもある。
ところが年に何回もないであろうワインディング体験によって、C5 Xプラグインハイブリッドと私との、『エヴァンゲリオン』で言うところのシンクロ率が100%になっちゃったのである。高速道路での印象はクラウンのほうが明らかによかったことを忘却の河に流してしまい、C5 Xのよき印象のみが残る。一般道でのあのしっとりした乗り心地。そして、私的にはなにを積む予定もないけれど、リアにゲートがあってラゲッジルームは四角形で広く、後席の背もたれを倒せば、クラウンよりもはるかに広くなるという汎用(はんよう)性……。
クラウンは大変よいクルマで、万人にオススメできる。けれど、もしもどちらかを買いなさい、と言われたら、私は喜んでC5 Xを選ぶ。
(文=今尾直樹/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース:2850mm
車重:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:272PS(200kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:460N・m(46.9kgf・m)/2000-3000rpm
フロントモーター最高出力:82.9PS(61kW)
フロントモーター最大トルク:292N・m(29.8kgf・m)
リアモーター最高出力:80.2PS(59kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)
システム最高出力:349PS(257kW)
タイヤ:(前)225/45R21 95W/(後)225/45R21 95W(ミシュランeプライマシー)
燃費:15.7km/リッター(WLTCモード)
価格:640万円/テスト車=722万5550円
オプション装備:ボディーカラー<ブラック×エモーショナルレッドII>(16万5000円)/ドライバーサポートパッケージ2(23万6500円)/リアサポートパッケージ(27万9400円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/ITSコネクト(2万7500円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エクセレントタイプ>(6万7100円)/HDMI入力端子(6050円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:9187km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:509.1km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.9km/リッター(車載燃費計計測値)
シトロエンC5 Xプラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1865×1490mm
ホイールベース:2785mm
車重:1790kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-2500rpm
システム最高出力:225PS
システム最大トルク:360N・m
タイヤ:(前)205/55R19 97V XL/(後)205/55R19 97V XL(ミシュランeプライマシー)
ハイブリッド燃料消費率:17.3km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:65km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:65km(WLTCモード)
交流電力量消費率:188Wh/km(WLTCモード)
価格:653万8000円/テスト車=662万6715円
オプション装備:メタリックペイント<グリアマゾニトゥ>(7万1500円)/ETC+取り付けブラケット(1万7215円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1万4123km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:338.0km
使用燃料:27.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.2km/リッター(満タン法)/12.6km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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