ホンダが二輪車の電動化戦略を発表 2030年までに年間350万台の販売を目指す

2022.09.13 自動車ニュース webCG 編集部
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ホンダが市場投入を予定している、大型の電動二輪車。ライディングを楽しむ“FUN領域”のモデルである。
ホンダが市場投入を予定している、大型の電動二輪車。ライディングを楽しむ“FUN領域”のモデルである。拡大

本田技研工業は2022年9月13日、2040年代にすべての二輪製品でのカーボンニュートラルを実現することを目標とした、二輪車の電動化戦略を発表した。

ホンダの二輪事業戦略について説明する竹内弘平副社長。
ホンダの二輪事業戦略について説明する竹内弘平副社長。拡大
二輪事業におけるカーボンニュートラルの取り組みについて説明する、野村欣滋常務執行役員。
二輪事業におけるカーボンニュートラルの取り組みについて説明する、野村欣滋常務執行役員。拡大
ホンダは2026年に5%、2030年に15%と、段階的に電動二輪車の販売比率を拡大。ICEの改良によるCO2削減と合わせ、2040年代のカーボンニュートラル実現を目指すとしている。
ホンダは2026年に5%、2030年に15%と、段階的に電動二輪車の販売比率を拡大。ICEの改良によるCO2削減と合わせ、2040年代のカーボンニュートラル実現を目指すとしている。拡大
すでに日本やベトナムで商品を展開しているコミューター領域の電動車。パーソナルユースのモデルについても、2025年までに2つの新機種を投入するという。
すでに日本やベトナムで商品を展開しているコミューター領域の電動車。パーソナルユースのモデルについても、2025年までに2つの新機種を投入するという。拡大
「EM」とは最高速度25~50km/hのカテゴリーに属する電動モペット(Electric Moped)、「EB」とは同25km/h以下のカテゴリーに属する電動自転車(Electric Bicycle)のこと。中国で大量に普及しており、ホンダはこの市場にも現地企業と協業して製品を投入する。
「EM」とは最高速度25~50km/hのカテゴリーに属する電動モペット(Electric Moped)、「EB」とは同25km/h以下のカテゴリーに属する電動自転車(Electric Bicycle)のこと。中国で大量に普及しており、ホンダはこの市場にも現地企業と協業して製品を投入する。拡大
“FUNモデル”の電動二輪車については、大型車3機種に加え、キッズ向けのモデルも投入する予定だ。
“FUNモデル”の電動二輪車については、大型車3機種に加え、キッズ向けのモデルも投入する予定だ。拡大
コミューターと“FUNモデル”を合わせ、ホンダは2025年までに10機種以上の電動二輪車の投入を計画している。
コミューターと“FUNモデル”を合わせ、ホンダは2025年までに10機種以上の電動二輪車の投入を計画している。拡大
電動車の展開に際しては、バッテリー、PCU、モーターを組み合わせた電動二輪車用プラットフォームを開発。これを仕向け地や商品性に合わせたフレームと組み合わせることで、多様な商品を手ごろな価格で展開するとしている。
電動車の展開に際しては、バッテリー、PCU、モーターを組み合わせた電動二輪車用プラットフォームを開発。これを仕向け地や商品性に合わせたフレームと組み合わせることで、多様な商品を手ごろな価格で展開するとしている。拡大
バッテリーには、目下研究開発を進めている全固体電池も採用する予定だ。
バッテリーには、目下研究開発を進めている全固体電池も採用する予定だ。拡大
ホンダが開発した交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack(ホンダモバイルパワーパック)」。
ホンダが開発した交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack(ホンダモバイルパワーパック)」。拡大
インドでの電動三輪タクシーと、バッテリーシェアリングサービスに使用する交換ステーション。
インドでの電動三輪タクシーと、バッテリーシェアリングサービスに使用する交換ステーション。拡大

エンジン車の改良によるCO2削減も推進

ホンダは2050年に、自社の関わるすべての製品と企業活動においてカーボンニュートラルを実現することを目指しており、二輪事業についても、2040年代にカーボンニュートラルを実現するとしている。

一方で、同社は先進国のみならず、二輪車をライフラインとして活用する新興国でも多数のコミューターモデルを販売。そうした地域では、各国政府のインセンティブや規制、充電インフラの充実度によって、電動モデルの普及が大きく左右される。そこで今後は内燃機関(ICE)の改善にも継続的に取り組みつつ、環境戦略の主軸として二輪車の電動化を加速させるとした。

まずICEについては、二酸化炭素(CO2)の排出削減に取り組みつつ、カーボンニュートラル燃料に対応するモデルの開発を推進。フレックスフューエル(E100)対応モデルをすでに販売しているブラジルに加え、インドでも2023年以降にフレックスフューエル(E20)対応モデルを、2025年にフレックスフューエル(E100)対応モデルを発売するという。

2025年までに10モデルの電動二輪車を投入

一方、電動化戦略については、2025年までに生活の足となるコミューター、ライディングを楽しむ“FUNモデル”の両方において、合計10モデル以上の電動車を投入。今後5年以内に年間100万台、2030年には、販売構成比の約15%にあたる年間350万台レベルの電動二輪車の販売を目指すと発表した。

特にコミューターに関しては、ホンダはすでに「ホンダe:ビジネスバイク」シリーズを展開しており、日本郵便やベトナムの郵便事業会社でこれらのモデルが活用されている。また郵便事業会社と共同実証を開始しているタイでも、2022年9月中に「ベンリィe」の生産・販売開始を計画。これらのモデルには、航続距離の短さや充電時間の長さといった電動車の課題解決につながる、交換式バッテリー「モバイルパワーパック」を採用するという。さらにパーソナルユースにおいても、2024年から2025年の間に2モデルの電動二輪車を投入。アジア、欧州、日本で販売するとしている。

また、現状で電動二輪車の世界市場(約5000万台)の9割以上を占めるという電動モペット・電動自転車(電動アシスト自転車は除く)に関しては、最大市場の中国で現地のサプライヤーインフラを活用して商品を展開。今後は2024年までに、よりコンパクトで低価格なモデルを中国、アジア、欧州、日本に計5モデル投入する予定となっている。

一方、FUNモデルの領域では、現在開発を進めているプラットフォームを活用した大型モデルを、2024年から2025年の間に日本、米国、欧州に計3モデル投入。これとは別に、キッズ向けモデルも投入するとしている。

これらの電動化戦略を実現するため、ホンダは電動車の主要3部品であるバッテリー、PCU、モーターを組み合わせた電動二輪車用プラットフォームを開発・展開。特にバッテリーについては、現在開発中の全固体電池の導入を目指すという。

バッテリーの規格共通化やシェアリングサービスも推進

これら商品ラインナップの拡充に加え、ホンダはインフラなどにおける利便性の改善や付加価値の向上を通しても、電動二輪車の普及を促進すると説明する。

例えば充電インフラ整備の一環として、バッテリーシェアリングを拡大。インドネシアではモバイルパワーパックとその搭載車を利用したシェアリングの運営会社を合弁で設立し、バリ島で事業を展開している。さらにインドでは、電動三輪タクシー(リキシャ)向けのバッテリーシェアリングサービス事業を2022年内に開始予定で、そのほかのアジア各国でもバッテリーシェアリングの取り組みを計画しているという。日本でも、国内二輪メーカー3社およびENEOSホールディングスと共同で、共通仕様バッテリーのシェアリングサービス提供と、そのためのインフラ整備を目的とする新会社Gachaco(ガチャコ)を2022年4月に設立。同年秋には、二輪車向けバッテリーシェアリングサービスを開始する予定となっている。

交換式バッテリーの規格共通化にも取り組んでおり、日本ではJASO TP21003「二輪電気自動車用交換式バッテリーのガイドライン」をベースに、国内の二輪メーカー4社で共通仕様に合意(参照)。欧州でも電動二輪車および小型電動モビリティーの普及を目的とした交換式バッテリーのコンソーシアムに参加しており(参照)、インドでもパートナー企業とともに規格共通化を推進しているという。

さらに、電動二輪車の普及に際しては、従来のハード売り切り型主体のビジネスからハードとソフトウエアを融合した事業への変革を推進。子会社のDrivemode(ドライブモード)社と共同でソフトウエアを開発し、コネクテッド領域における新価値創造を推し進めるとしている。

具体的には、航続可能距離を踏まえた最適ルートや、充電スポットの案内、安全運転コーチングやアフターサービスの支援など、さまざまな機能を備えたUX(ユーザーエクスペリエンス)を、2024年に発売予定の電動コミューターから順次提供開始。将来的には、二輪事業にとどまらずさまざまなホンダ製品が連鎖し、より大きな価値を創出するコネクテッドプラットフォームの構築に取り組むと説明している。

(webCG)

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