BMW i4 eDrive40 Mスポーツ(RWD)
滑空感が気持ちいい 2022.09.30 試乗記 運動性能を極めようとすれば、どうしたってSUVよりもセダンタイプが有利だ。もちろん電気自動車(EV)でも事情は同じで、とりわけBMWの最新シリーズ「i4」は、EVのネガの部分がほとんど感じられない良作である。シングルモーターの「eDrive40 Mスポーツ」の仕上がりをリポート。想定外(?)の好電費
都内を出発する時の残り航続距離は350kmほどだった。当日の目的地まで100km足らずで、しかもほとんど高速道路と一般道だったから、まあ順調にいけば途中で充電することなく帰って来られるな、と走りだしながら計算する。それが皮算用に終わることが多いのが現在の電気自動車の常識ではあるものの、途中撮影やらで電池を多少減らしても、1回の途中充電で足りるだろうとの想定である。
ところが、目的地に着いた時点での航続距離は出発時とほとんど変わらない数字が表示されていた。本当にこういうこともあるんだ! とびっくりである。確かに関越道を走行中にずいぶん“好電費”じゃないか、と感じさせる点が多かった。いかにも抵抗が小さいような滑空感に加え、特にエコ運転していないにもかかわらず瞬間電費も優秀、航続距離の数字もなかなか減らなかったのである。高速道路に乗ると途端に意気地がなくなるEVが多いなか、i4 eDrive40は結局帰途も途中充電することなく、都内に帰った時もまだ200km近くを残していた。
フロア下に搭載するリチウムイオン電池の容量は83.9kWh、WLTCモードの一充電走行距離は604kmと発表されており、その数字を見てもかなり効率が高そうなことは想像できるが、ご承知のように大切なのは普段実際にどのぐらい走れるのか? という実用的データである。カタログ数値の八掛けぐらいかな、と推測しながら実際はそこまでも届かないEVがほとんどだ。もちろん走行条件に大きく左右されるのは言うまでもないが、このクルマなら電池を減らさない運転に気を使うことなく遠出をしてもいい、と思った。頭の隅にずっと居座る航続距離という気がかりがなくなると、まるでしつこい肩こりから解放されたように気持ちが軽くなるのである。
4シリーズ グランクーペベースのEV
i4は2022年2月に国内導入されたBMWの新型BEVである。「4シリーズ グランクーペ」をベースとしており、ボディーサイズやホイールベースは事実上同じ。モーター1基のi4 eDrive40と前後2基のモーターを積む4WDの「i4 M50」(1081万円)があり、前者にはさらにスタンダードモデル(750万円)とMスポーツ(791万円)の2車種が設定されている。後輪駆動のi4 eDrive40は最高出力250kW(340PS)と最大トルク430N・mを生み出すモーターを1基搭載する。前後2基のモーターを搭載し、システム合計で400kW(544PS)と795N・mを誇るi4 M50(初の完全電動Mモデルをうたう)ほどではないが、なかなかの高性能EVである。
試乗車であるi4 eDrive40 MスポーツにはBMW M社創立50周年のスペシャルエンブレムが取り付けられていた。今年生産の「M」および「Mパフォーマンスモデル」に装着されるこれは、創立直後(当時はBMWモータースポーツ社)の「3.0CSL」などのレーシングカーに装着されていたエンブレムをリバイバルしたものだという。
諸元表には交流同期電動機とシンプルに記述してあるだけだが、同期モーターにもいろいろと種類がある。i4シリーズに採用された自社開発の高効率モーターは、永久磁石ではなく電磁石を使った同期モーターのようだ。もちろん電費だけを重視したものではなく、i4 eDrive40の0-100km/h加速は5.7秒、最高速は190km/hでリミッター作動というから十分以上に駿足(しゅんそく)だ。ちなみにツインモーターのM50は同じく3.9秒、225km/hという。
回生かコースティングか
惰性でスルスルと伸びる空走感が印象的なi4 eDrive40だが、ひとつ特徴的なのは前走車の有無に応じて自動的に回生ブレーキの強弱をコントロールしてくれることだ。14.9インチのコントロールディスプレイ(12.3インチのインフォメーションディスプレイと連結されて「カーブドディスプレイ」を形成する)でアダプティブモードを選択しておけば、レーダーやカメラ等を使用して、前のクルマとの距離だけでなく信号機や交差点といった周辺状況も判断して回生ブレーキレベルをコントロールするという。
「アウディe-tron」も同様の制御を備えているが、そのさじ加減が巧妙で実際に役に立つ。今夏で生産終了した「i3」はいわゆるワンペダルドライブが強調されていたが、最近ではブレーキペダルを踏まずに停止するというEVは見かけない。ワンペダルによる強い回生Gは、運転しているドライバーはさておき、同乗者に評判が悪かったのだ。低速トルクが強力なEVで頻繁に前後に揺すられてはそれも当然である。さらに極低速で動く際にはやはりクリープしてくれたほうが都合がいい。
それゆえに最近は、例えば「日産サクラ」なども独立したスイッチを設けている。ただしサクラはドライブモードの切り替えスイッチ、Bレンジ、eペダルステップスイッチと回生ブレーキの利き具合を変更するスイッチがいくつも分散して設けられており、しかもBレンジセレクター以外は運転中にブラインドで即座に操作できる位置にない。その点、i4 eDrive40のアダプティブモードはお節介と感じさせることもなく、使いやすかった。
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滑るように走る
乗り心地も上々といえる。i4 eDrive40は可変サスペンションを持たないEVとしては、私の知る限り最も乗り心地がいいといえるのではないか。重いEVはどうしてもサスペンションを締め上げる必要があり、それゆえにピッチングや細かな上下動がつきものだが、このクルマはフラットなだけでなく、しなやかさもある。
車重は2tを超えるからさすがに硬めではあるが、SUVタイプとは違って車高の低いセダン型(ハッチゲート付きだが)はボディーコントロールの面で有利であり(ちなみにCd値は0.24という)、それはハンドリングについても同様。ガソリン車との違いをほとんど意識することなく、BMWらしく軽快にサラリと扱うことができる。室内の広さはもちろん、ラゲッジスペース容量も470リッターとガソリン車と変わらない。
本体価格で791万円は無論安くはないが、BMWの同クラスガソリン車と比べるとそれほど大きく違うわけではない。今のところ1000万円以下のEVのなかでは最も完成度が高い、と特にEVびいきではない私でも思う。次はやっぱりEVかな、と考えている方はぜひ試乗することをお勧めする。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW i4 eDrive40 Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1850×1455mm
ホイールベース:2855mm
車重:2080kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:340PS(250kW)/8000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)0-5000rpm
タイヤ:(前)245/45R18 100Y/(後)255/45R18 103Y(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3)
交流電力量消費率:157Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:604km(WLTCモード)
価格:791万円/テスト車=875万7000円
オプション装備:ボディーカラー<ミネラルホワイト>(10万円)/ヴァーネスカレザー<オイスター×ブラック>(0円)/ハイラインパッケージ(21万6000円)/コンフォートパッケージ(13万2000円)/Mスポーツパッケージ(0円)/BMWインディビジュアル ピアノフィニッシュブラックインテリアトリム(5万5000円)/地上波デジタルテレビチューナー(13万7000円)/Harman/kardonサラウンドサウンドシステム(7万2000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2217km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:356.3km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.8km/kWh(車載電費計計測値)

高平 高輝
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