第246回:スーパーカーは死せず
2022.11.28 カーマニア人間国宝への道宇宙戦艦は速すぎる
私はカーマニアだが、ロケットと飛行機も愛好する者である。なにしろロケットと飛行機は、燃料を燃焼させることで前に進む。つまり内燃エンジン車の親戚だ。幼稚園時代は、クルマもジェット機みたいにマフラーから火を噴きながら走ってほしい! と切に願っていた。
成人してからは、ジェットエンジンで地上を走るのは無意味であることを悟り、内燃エンジンに萌(も)えるようになったが、その究極がフェラーリだった。
私にとってフェラーリは、当初からクルマを超えた芸術的な存在だったが、10年前、「458イタリア」を買った時は、「これはUFOだ! 宇宙戦艦だ!」と震えた。
エンジンは、それまでのフェラーリV8の延長線上にあったけれど、Eデフによる左右駆動力配分によって、UFOのように左右に瞬間移動する。思えばその動きは、推力偏向システムによって物理法則を超えた(ような)機動が可能な「第5世代ジェット戦闘機」だったのである。
が、加齢により宇宙戦艦が速すぎると感じるようになり、5年前に「328GTS」に回帰。それはもう、UFOからレシプロ戦闘機に先祖返りした感覚だった。
328のV8をブチ回すと、第2次大戦期の戦闘機で、自らの五感に頼りながら敵と格闘する感覚を味わえる。うおおおお、これぞ絶頂! オレは大空のサムライだ!
といっても、決してUFOが嫌いになったわけではない。目や体がついていかなくなっただけで。
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戦闘機はすべてスーパーカーだ
今回私は、実在するUFOを見に行くことにした。三沢基地(青森県)の「F-35A」(航空自衛隊所属)である。
F-35Aは、代表的な第5世代戦闘機。機体は、ステルス性を持たせるために異様に直線的で重量感があり、フェラーリというよりランボルギーニに近い。
以前私は、百里基地(茨城県)で「F-4ファントム」と「F-2」の飛行を見学した。昔、厚木基地(神奈川県)で米海軍の「F-14トムキャット」や「イントルーダー」「FA-18」も見た。どれもこれも、それぞれの年代ごとのカッコ良さに満ちていて、どれもこれも震えがきた。戦うために生まれた戦闘機は、すべてスーパーカーなのだ!
が、第5世代ジェット戦闘機はまだ見たことがない。この目で見なくては死ねん!
三沢までの足は、当然わがスッポン丸ことフェラーリ328GTS──ではなく、「マツダ・ロードスター」を選んだ。どちらも名機中の名機。パワーは違えど、名機に変わりはない。328で青森まで行くと疲れそうだし、墜落も心配なので、遠征は現代の名機が吉である。
実際、ロードスターはGTとしても素晴らしかった。ロードスターでのロングドライブは生涯初めてだったが、全然疲れないね! ドラポジが最高だし、シートも素晴らしい。足は超しなやかで直進安定性も高い。パワーは控えめだけど、だからこそ自らマシンを操り、ムチをくれるヨロコビを味わえる。ブルーインパルスの「T-4練習機」という感じでしょうか。
ということで、三沢基地というか三沢空港の展望デッキに到着したのが午後3時過ぎ。軍用機の飛行予定は非公開だが、飛ぶんだろうかF-35Aよ。この時間だと、たぶん着陸のはず。来てくれF-35A!
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ファントムに近いレトロ感
待つこと約20分。デッキ上の軍用機オタクらしき人物が、望遠カメラを持って動き出した。来るのか! 来るのか来るのか! 何が来るのか!? 敵の動きは友軍の動きを見て知るのみ。
ごう音が聞こえてきた。
あ、あれは……。うおおおおおおおおおおお~~~~~っ! まぎれもなくF-35A!
F-35Aは、いったん滑走路を4機編隊でパスし、旋回して東からアプローチ。機首を大きく上げた着陸姿勢はファントムに近く、重戦闘機感満点だ。スーパーカーで言えば新型「カウンタック」、いや「ウルス ペルフォルマンテ」か。
「キイィィィィィ~~~ン」という耳をつんざくサウンドは、翌日見た米空軍の「F-16」に比べても明らかにデカく、これまたファントムに近いレトロ感があった。
実はF-35Aは単発単座の軽量戦闘機。クルマで言えばV8ではなく、直4ターボのAMGというところなのだが、音といい見た目といい、印象としてはムダのカタマリ! 実にスーパーカーらしかった。
航空機は電動化が極めて困難だ。燃料をバイオ化するなどのカーボンニュートラル対策は可能だが、あと100年くらいは燃焼による推進に頼らざるを得ないだろう。なかでも戦闘機はその筆頭だ。
スーパーカーはいずれ電動化されるのだろうが、戦闘機はまだまだ油を燃焼させ続けるはず。私も生涯燃焼しながら死んで生きたいであります! 涙が出る。
◆F-35Aの飛行シーン(圧巻です)
◆F-16の飛行シーン(F-35Aとの音の違いに注目)
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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