トヨタbZ4X Z(FWD)
初手は手堅く 2023.01.25 試乗記 「21世紀に間にあいました。」の時代から、世に電動車を送り出し続けてきたトヨタ。その本格的電気自動車(EV)の第1弾が「bZ4X」だ。その仕上がりはひとこと手堅い。電気のメリットもデメリットも知り尽くしたトヨタならではのクルマといえるだろう。スタートのつまずき
「bZ」シリーズの第1弾として、兄弟車の「スバル・ソルテラ」とともに鳴り物入りでデビューしたトヨタのbZ4Xを街なかで見かけることはなかった。というのも、2022年5月の発売後わずか1カ月でリコールが発表されて出荷停止となり、10月末に販売を再開するまで、ほとんど半年も走りだすことができなかったからだ。
あらためてリコールの対象となった不具合の中身をおさらいすると、「ホイールの加工とハブボルトの仕様が不適切なため、ハブボルトの締結力が十分ではなく、連続した急加速や急減速の繰り返し等で当該ボルトが緩むことがあり、最悪の場合はホイールが脱落する恐れがある」というものだった。情報は海外市場からのもので実際にアクシデントにつながった例もないというが、原因究明と対策まで意外に時間がかかってしまった。EV特有の瞬発力と回生ブレーキの影響を見誤っていたのではないか、という疑問が当然生まれるが、トヨタの説明としてはEVだからということではない、としている。どちらにしても、いささかお粗末で残念な滑り出しになった。
上記の問題が解決するまではデモカーの貸し出しも停止となっていたが、その間に続々と内外の新型EVが登場し、すっかり影が薄くなってしまったことは否めない。そういえば、トヨタもEV出したんだったよね? という感じである。加えてトヨタ版のbZ4Xについては、ご承知のようにサブスクリプションサービスの「KINTO」とリース販売のみ(スバル・ソルテラは一般的な販売方式を採る)。bZ4XはFWD/AWDの両方が設定されるがグレードは「Z」のみ、今回試乗したbZ4X Z(FWD)の車両価格は600万円だが、KINTOの月額利用料はざっくり11万円ほどで(1~4年目。補助金を適用すると1~2万円下がる)、さらに契約時申込金が77万円必要だった。それが再発売に合わせて38万5000円に半減され、月額利用料金も若干引き下げられた。スタートのつまずきを取り戻そうというわけだ。
石橋をたたいてなおたたく
bZ4Xとスバル・ソルテラはEV専用に新開発した「e-TNGA」プラットフォームやパワートレインなどを共用する兄弟車である。ボディーサイズは「RAV4」よりちょっと大きく(全長は+95mm)、低い(全高-60mm)が、おおむね似たようなものだ。フロア下に平積みされる駆動用バッテリーの容量は71.4kWh、新開発の大型セルを96個パックしたもので、出力7kWまでの普通充電と150kWまでの急速充電に対応するという。
注目すべきはバッテリーの安定性、安全性に対する徹底的な対策だ。万一冷却液が漏れてもバッテリーには影響しないように、バッテリーパックの下側に水冷式の冷却システムを配置し、そのクーラントも専用の高抵抗タイプ(電気を通じにくい)を開発。またヒーターも備わり、低温下での充電性能確保など温度管理を徹底しているという。
さらにバッテリーは何重にも状態を管理することで万が一にも発火などしないように制御され、電池容量の劣化を防ぐ対策を施しており、10万km走行後でもほぼ90%の性能を維持するという。このあたりはさすがトヨタというべきか、初代「プリウス」以来総計1700万台以上の電動車両を生産してきた経験のたまものだろう。そのうえでサブスクに限るというのだから、慎重の上にも慎重を重ねたスタートというわけだ。ちなみにバッテリーセルはトヨタとパナソニックの合弁会社であるプライムプラネット・エナジーソリューションズが生産する。
斬新さより安心感優先
FWDモデルはフロントに204PS/266N・mを生み出すモーターを搭載、4WDは前後にそれぞれ109PS/169N・mを発生するモーターを積み、スバルの技術を生かした悪路用「Xモード」と「グリップコントロール」(クロールコントロールのようなもの)を装備する。ちなみにFWDモデルは細かな装備やトリムを除いてトヨタ/スバルで事実上同じ仕様で、4WDはソルテラのみドライブモードに「パワー」と回生ブレーキレベルを選択するシフトパドルが備わり、ダンパー設定と前後モーター制御も異なるという。
インテリアで目立つのは、プジョーの「iコックピット」のようにステアリングホイールの上端越しに眺めるメーター配置である。本来は操縦桿(かん)のようなワンモーショングリップステアリングホイール(しかもステアリングバイワイヤ方式)が前提のデザインらしいが、同システムはまず中国市場に投入した後、順次装着を拡大していくという。「トップマウントメーター」と称するデジタルメーターとダイヤル式のセレクターを除けば、個々のスイッチ類などは見慣れたトヨタのもので、使い勝手も上々で安心できる。ただしデジタルメーターの例によってちまちまと煩雑な表示は見にくいし、ステアリングホイールでメーターの一部が隠れることも難点だ。またステアリングホイール上に無数のスイッチが配置されるいっぽう、ドライブモードや回生ブレーキを強めるSペダルスイッチなどはセンターコンソールに備わり、運転中はちょっと使いにくい。
手堅さも良しあし
bZ4Xはトヨタの本格的EV第1作としては上々の洗練度といえるだろう。ペダル操作に対するパワーデリバリーはスムーズで、深く踏み込めば十分にパワフルだ(0-100km/h加速はFWDが8.4秒、4WDが7.7秒という)。乗り心地は基本的には滑らかだが、やはり他のEV同様しなやかさに欠けると感じる場面もあった。良路ではビシッと締まったフラットな姿勢を維持するが、舗装の荒れた一般道などでは予想以上のドシン、ゴロンという揺れに見舞われることもある(とはいえ「日産アリア」よりはずっと落ち着きがある)。
WLTCモードの一充電走行距離はbZ4XのFWDで559km(オプションの20インチタイヤ装着車は512km)とされているが、実際にはそれほど電費は伸びないようで、特に高速道路ではやや期待外れ、よほど条件が良くないと6km/kWhは望めない。
また既に指摘されているように、気になったのはなぜか他のBEVには備わるバッテリー残量(SOC)の%表示がないことだ。小さなバーグラフと残り航続距離、それに平均電費はメーター内に表示されるが、あとどのぐらい電池が残っているのかを具体的に示す数字はない。トヨタ側としてはEVに慣れていないユーザーに誤解を与えないためだというが(実際に開発陣のなかでも議論があったらしい)、それはちょっと気を回し過ぎというものだろう。またエアコンのオン/オフによって航続可能距離の数字が意外に大きく増減する。
何よりも安全マージンを十分に見込み、先進性のアピールよりも、ハイブリッドから乗り換えた初めてのユーザーでも安心感をもって使ってほしいという方針なのだろうが、やはり中途半端な印象は否めない。すべてのデータを提示してもらって自ら判断するほうが安心できると私は思う。EV第1弾が手堅いからといって、トヨタが遅れているなどというつもりは毛頭ないが(当たり前だがトヨタにはトヨタのビジネスがある)、急速に激戦区になりつつあるミドルクラスEV分野においてちょっと影が薄いことは否定できない。次をどうするのか、が注目である。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
トヨタbZ4X Z
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:1930kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:204PS(150kW)
最大トルク:266N・m(27.1kgf・m)
タイヤ:(前)235/50ZR20 104V XL/(後)235/50ZR20 104V XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:512km(WLTCモード)
交流電力量消費率:141Wh/km(WLTCモード)
価格:600万円/テスト車=630万8220円
オプション装備:ボディーカラー<ブラック×プレシャスメタル>(9万9000円)/235/50R20タイヤ&20×7 1/2Jアルミホイール<切削光輝+ブラック塗装、一部樹脂加飾、センターオーナメント付き>(3万3000円)/おくだけ充電(1万3200円)/カラードキャリパー<ブルー>(4万4000円)/リアスポイラー(3万3000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(4万1800円)/前後方2カメラドライブレコーダー<TZ-DR210>(4万4220円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1391km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

高平 高輝
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