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お得なのはどれだ? 各社の新車サブスクリプションサービスを比べてみる

2023.03.01 デイリーコラム 工藤 貴宏

そもそもクルマのサブスクとは?

近ごろクルマのサブスクがはやっているらしい……。

なんてことを書くと聡明(そうめい)な読者諸兄からは「現金で払ったほうが安い」とか「レンタカーをずっと借りているようなもの」とか、揚げ句の果てには「単なるリースじゃないか! 表現を変えてごまかすな」なんていう貴重なご意見を頂戴するのは火を見るより明らかなネタではある。だがしかし、編集サイドから「サブスクについて書いてねー、よろしく!」なんて言われてしまったら炎上覚悟で従わないわけにはいかないのが自動車ライターという職業。というわけで今回は、クルマのサブスクの世界について紹介してみよう。

確かに「現金で買ったほうがトータルで安い」というのは一部の例外はあるけれど基本的に事実だ。「レンタカーを借りているようなもので自分のものではない感じがヤダ」とか「車検証の名義が自分のものではないからダメ」と感じる人もいるかもしれない(それに弊害があるとは思えないが)。

とはいえそれらはローンでの購入だって同じこと。「ですよねー、そう思う人は無理ですよねー。可能なら現金で買ったほうがいいですよねー」と答えるしかない。おそらく賃貸物件に住んだことのない人なのだろう。

なので、今回の記事はそういった人が対象ではないことをまずお伝えしておこう。

「単なるリースが呼び方を変えただけじゃないか」というのもまあ合っていて、内容的にはカーリースである。ちなみに自動車ローンとカーリースの違いは、ローンは基本的に車両購入費用だけを対象に月々のお金を支払う(税金や整備・車検などの費用は別途必要)のに対し、カーリースは車両のほか税金やメンテナンスそして車検までを含めたコミコミ金額を毎月定額の利用料として払うこと(ボーナス払い併用ができるプランもある)。とどのつまり、面倒なことは全部任せられるのだ。月々の金額は高くなるがボクのようなめんどくさがりとは相性がいいし、納税や車検などで突然の出費がないのも心強い。

トヨタが2019年に始めたクルマのサブスクリプションサービス「KINTO」。トヨタ車だけでなくレクサス車も選べる。
トヨタが2019年に始めたクルマのサブスクリプションサービス「KINTO」。トヨタ車だけでなくレクサス車も選べる。拡大
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トヨタの「KINTO」が向いている人とは?

ちなみにサブスクとはいってもクルマの場合は動画や音楽とは違って「毎月定額を払えば好きな時にいろんなクルマを借り放題の共同所有」というわけではなく、「1台のクルマがあてがわれてそれを好きに使える」というのが一般的。そういう意味では、クルマを使うことに関してはローンで買うのとそう変わらないのだ。

そんなサブスクの代表といえば、なんといっても「KINTO(キント)」だろう。トヨタのサブスクで、結論から言うと、これが最も向いているのは初めてクルマを所有する人、若い人、そして高齢の人だ。

KINTOには、一般的なカーリースやサブスクとは大きく異なる点がある。それは車両保険も含めた任意保険まで定額で支払いに含まれていること。しかも、年齢を問わず金額が変わらないのが素晴らしい。ご存じのように任意保険の料金は条件によって異なり、若い人や初めてクルマを買う人、そして年配の人は高くなる。若い人が新車を買おうと思って車両保険まで付けたら「これは無理だ!」と思える保険料見積もりとなるのはまず避けられない。

しかしKINTOなら車両保険込みでドライバーの条件を問わず均一料金として月々の利用料に含まれる。だから、任意保険が高くなる人にとってはメリットが大きいのだ。

まあ、逆に言えば任意保険料が安く済む人にとってはうまみが少ないのだけど……。

というわけでKINTOの利用料金は、少し高いように見える。しかし任意保険(もちろん車両保険も)も含まれていて、あとはガソリン代と高速代と駐車場代さえ払えばOKのコミコミ価格だと思えば意外に高くはない。それどころか、任意保険料が高くなってしまう人ならクルマを買うよりもトータルで安くなるのだから、検討して損はないだろう。KINTOは、若者にできるだけ気軽にクルマを所有する手段を提供するという狙いがあるような気がする……というのはきっと気のせいではないんじゃないだろうか。

「KINTO」専用グレードに設定された新型「プリウス」の「U」グレード。販売用グレードは2リッターだが、Uは1.8リッターのハイブリッドだ。
「KINTO」専用グレードに設定された新型「プリウス」の「U」グレード。販売用グレードは2リッターだが、Uは1.8リッターのハイブリッドだ。拡大

納期の早さも見逃せない

ちなみに契約中に事故を起こした場合でも5万円の免責を払えば大丈夫(契約終了時の減点もあるが、それはクルマを現金やローンで買ったとしても同じこと)。また、タイヤなどの消耗品も費用に含まれているし、クルマが故障した場合も追加支払いなく修理してもらえる。賃貸物件でガス給湯器などの備品が壊れても入居者の負担なく修理してもらえるような感覚といっていいだろう。

そしてもうひとつ。KINTOには納車が長期化している今だからこそ見逃せない大きなメリットがある。それは納期が早いことだ。

公式ウェブサイトを見ると、購入では納期「5カ月程度」とされている「ヤリス」はKINTOなら「1.5~2カ月程度」と半分以下。同様に「6カ月以上」とされている「ノア」も「1.5~2カ月程度」と短い。

いち早くクルマが手元に欲しいなら、これは大きなアドバンテージ以外の何物でもないわけですよ。

また、KINTOには後から機能を追加するサービスが用意されているのもメーカーならではの新しい試み。車種にもよるが、ブラインドスポットモニターやトラフィッククロスアラートなどの安全装備に加え、AC100V・1500Wのアクセサリーコンセント、電動スライドドア、電動テールゲート、ステアリングヒーターなどが用意されている。それらは車両製造時に組み込む機能で本来は後付け不可なのだが、手元にある車両に装着できるというのだから画期的な取り組みだ。こんなことは普通にクルマを購入した場合はあり得ないし、よく実現できたと感心する。さすが自動車メーカーならではだ。「bZ4X」や「モリゾーセレクション」のようにKINTO専用車両まであるのも面白い。

またGRモデルに関してはトヨタ自動車や販売店が主催するサーキット走行会に限りサーキット走行が許されているのも走り好きには見逃せないポイントではないだろうか。

トヨタの本格的電気自動車の第1弾である「bZ4X」は「KINTO」およびリース販売専用だ。
トヨタの本格的電気自動車の第1弾である「bZ4X」は「KINTO」およびリース販売専用だ。拡大

日産とホンダのケースは?

ほかのメーカー系サブスクの特徴はどうか?

例えばホンダの「楽まる」は、契約終了後に車両を買い取れるのがメーカー系サービスのなかでは特徴的だ。7年契約なら追加出費なく車両をもらえるので、1台のクルマに長く乗りたい人にも向いている。

また、返却時も30万円までの修理費用なら追加請求されないのも太っ腹だ。

日産にも「ClickMobi(クリックモビ)」というサービスがあり、ほかとは違う大きな特徴は一般的にはクルマのサブスクでは禁じ手となっている喫煙やペットの乗車が認められていること。ユーザーのライフスタイルによっては、大きな魅力となりそうだ。

というわけで、クルマのサブスクにもやっぱり向きと不向きはある。とにかく向いているのは「面倒が嫌いで税金やメンテまで込みのコミコミ定額料金にしたい人」。個人事業主なんかでクルマにかかる費用を減価償却せずにまるっと経費扱いにしたい……なんていう人にも向いている(だから企業は多少割高でも結果的に出費を抑えられるのでリースでクルマを使うことが多い)。

あと、年齢を問わず負担額が変わらない任意保険まで含めたプランとしているKINTOに限って言えば、任意保険料が高くなる人は金額的にもメリットが大きいから利用するのが賢いだろう。

いっぽうで向いていないのは、1台のクルマを乗りつぶす人、走行距離が多い人(プランにより異なるが1カ月当たり1000kmを超えると返却時に追加料金が発生するプランがほとんど)、頻繁にクルマを乗り換える人など。もちろん、車両を買い取れるホンダの楽まるのようにそれらの条件を回避できるプランもあるから調べてみるといいんじゃないだろうか。

というわけで、ご利用は計画的に!

(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業/編集=藤沢 勝)

ホンダのサブスクリプションサービス「楽まる」は2021年にスタート。最終的にクルマを保有できるところが他社にはない特徴だ。
ホンダのサブスクリプションサービス「楽まる」は2021年にスタート。最終的にクルマを保有できるところが他社にはない特徴だ。拡大
日産の「ClickMobi」には「日産サクラ」や「エクストレイル」などの人気車種がラインナップされている。
日産の「ClickMobi」には「日産サクラ」や「エクストレイル」などの人気車種がラインナップされている。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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