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ホンダZR-V e:HEV X(FF)

乗るといい! の見本 2023.03.27 試乗記 高平 高輝 どこかアメリカ市場のお下がり感が強かった「CR-V」に代わって、ホンダの国内SUVラインナップの上位を担う「ZR-V」。何とも捉えどころのないデザインではあるものの、そのドライビングフィールは極めて素晴らしい。ハイブリッドのエントリーグレード「X」の仕上がりをリポートする。

臨機応変か朝令暮改か

名前を引き継いだモデルチェンジでもガラッとスタイルを変えることが珍しくないホンダだから、新型SUVのZR-Vがなじみのない姿形で登場しても驚くには当たらない。とはいえ、「ヴェゼル」とCR-Vの中間に位置するミドルクラスSUVたるZR-Vはそのどちらにも似ていない、というよりあえて関連性をきっぱり断ったようなデザインである。

これがホンダのニューモデルです、と言われても何とも言葉に詰まるのが正直なところ、とりわけ日本車のなかでは一番あか抜けた、あるいはバタ臭いかつてのホンダ車で育った私のようなオジサンには、簡潔だがこれといって特徴のないスタイルは(一見マセラティのような縦桟グリルを除けば)率直に言って相変わらずあっちこっちに右往左往しているように映るのだ。ZR-Vは北米市場をはじめ海外にも広く展開するグローバルモデルゆえに、簡単ではないことを承知のうえの妄言ではあるけれど。

日本仕様のZR-Vには1.5リッター4気筒ターボと2リッター4気筒に2モーターを組み合わせたホンダ自慢の「e:HEV」の2種類のパワートレインがあり、それぞれにXと「Z」の2グレードが設定され、さらにすべての車種にFWDと4WDが用意されるという手厚いラインナップだ。今回の試乗車はe:HEVのX(FWD)である。ちなみに発売はもうちょっと先の2023年4月21日とされている。

「CR-V」と入れ替わるかたちでホンダの国内SUVラインナップに追加された「ZR-V」。2022年秋発売の予定が延期され、2023年4月21日に販売が開始される。
「CR-V」と入れ替わるかたちでホンダの国内SUVラインナップに追加された「ZR-V」。2022年秋発売の予定が延期され、2023年4月21日に販売が開始される。拡大
フロントマスクは既存のホンダ車のどれにも似ていない。縦桟のグリルはマセラティのようだ。
フロントマスクは既存のホンダ車のどれにも似ていない。縦桟のグリルはマセラティのようだ。拡大
北米では新型「HR-V」として販売される。HR-Vは先代モデルでは「ヴェゼル」の国外向けという位置づけだったが、車格が少し上がったことになる。
北米では新型「HR-V」として販売される。HR-Vは先代モデルでは「ヴェゼル」の国外向けという位置づけだったが、車格が少し上がったことになる。拡大
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さりげなく、使いやすい

ZR-Vのボディー外寸は全長×全幅×全高=4570×1840×1620mmでホイールベースは2655mmというもの。同じく4330×1790×1590mm、ホイールベース2610mmのヴェゼルに比べてふたまわりは大きく、むしろCR-Vに近い。ご承知のとおり国内向けのCR-V(ホイールベース2660mm)は既にカタログ落ちしており(海外向けには新型が発表されている)、ZR-Vはそのカスタマーも取り込む狙いがあるのだろう。いかにも北米向けといった風情のCR-Vに比べると、なるほど国内でも使いやすいはずと思われるサイズである。

それほど高くないシートに座っても同様の印象だ。シンプルな水平基調のインストゥルメントパネルは当然ながら「シビック」と似ており、操作性にも居住性にも不満はなく、視界も良好である。本革シート(背面など一部は合成皮革)が標準となるZに対して、Xはファブリックと合成皮革のコンビシート。とはいえダッシュボードまわりにはソフトパッドがふんだんに使用されており、さらにマルーンの色調といい、光り物を混ぜ込んだトリムパネルといい、何となく昔ながらの応接セットのような上級志向がうかがえる。これはこれで市場調査を反映した結果なのだろうが、またまたオジサンは、ホンダならもっと軽やかな雰囲気でもいいのではないかと不満だ。せっかくルーミーで視界もいいパッケージングなのに、なにもわざわざ重厚な雰囲気を演出しなくても、と考えてしまうのである。

パワーユニットは最高出力141PSの2リッター直4直噴エンジンと同じく184PSのモーターを組み合わせたハイブリッド。
パワーユニットは最高出力141PSの2リッター直4直噴エンジンと同じく184PSのモーターを組み合わせたハイブリッド。拡大
水平基調のインストゥルメントパネルをハニカムパターンのメッシュが横断する。全体の仕立ては「シビック」とほとんど変わらない。
水平基調のインストゥルメントパネルをハニカムパターンのメッシュが横断する。全体の仕立ては「シビック」とほとんど変わらない。拡大
シフトセレクターはプッシュボタン式。レザー調のソフトパッドが輝きを放つのがユニークだ。
シフトセレクターはプッシュボタン式。レザー調のソフトパッドが輝きを放つのがユニークだ。拡大

最近では一番のエンジン

最高出力141PS/6000rpmと最大トルク182N・m(18.6kgf・m)/4500rpmを生み出す直噴エンジン、および184PSと315N・mを発生する駆動モーターのスペックは「シビックe:HEV」のそれとまったく同一だ。そもそもシビックに搭載されたLFC型は、ボア・ストロークが「ステップワゴン」のもの(LFA型)と同一の2リッター直4だったために、その改良型だろうと思い込んでいたが、実はまったく別物といっていい新エンジンだった。LFC型2リッター直4は直噴システムとアトキンソンサイクルを採用して高圧縮比化、それに合わせてブロックや高剛性クランクシャフトも一新されているという。最大熱効率は世界トップレベルの41%を達成、しかもレギュラーガソリン仕様である。

もちろん、e:HEV用だから普段はエンジンで発電してモーターで走行するシリーズハイブリッドが基本(高速巡航域ではエンジン直結モードもあり)だが、実際に回したときの滑らかさや生き生きとした吹け上がりが気持ちいいことが新型エンジンの特長だ。シビックのようにアクティブサウンドコントロールの類いは備わらないようだが、回せば正直に聞こえるエンジン音も健康的で耳障りなものではない。さらにシビック同様、ZR-Vもスロットルペダルを深く踏み込めばまるでDCTを積んだエンジン車のように軽快に回転が上がり、そこで変速したようにいったん下がってまた上昇、といった上下動を繰り返すように制御され、その際にはデジタルメーターの左側のパワーメーターもタコメーターのように動く。電動化戦略を推進するホンダ(2040年までに全車EV/FCVにすると表明している)にとっては皮肉に聞こえるかもしれないが、最近ではすっかり耳にしなくなった「エンジンのホンダ」の面目躍如ではなかろうか。できれば純エンジン車に、それもMTで乗ってみたいエンジンである。

WLTCモードの燃費値は22.1km/リッター。山岳路をちょっと多めに走った今回の満タン法燃費は12.4km/リッターだった。
WLTCモードの燃費値は22.1km/リッター。山岳路をちょっと多めに走った今回の満タン法燃費は12.4km/リッターだった。拡大
シートはファブリックと合成皮革のコンビ表皮。主力の北米でも売るだけあって立派なサイズだ。
シートはファブリックと合成皮革のコンビ表皮。主力の北米でも売るだけあって立派なサイズだ。拡大
後席は足元にも頭上にも十分なスペースが確保される。センタータンクレイアウトの「ヴェゼル」などとは異なり、座面のチップアップやタンブルフォールディングはできない。
後席は足元にも頭上にも十分なスペースが確保される。センタータンクレイアウトの「ヴェゼル」などとは異なり、座面のチップアップやタンブルフォールディングはできない。拡大
10.2インチの液晶メーターはすっきりとした表示で見やすい。左のパワーメーターはエンジンの変速風制御に合わせて指針が上がったり下がったりする。
10.2インチの液晶メーターはすっきりとした表示で見やすい。左のパワーメーターはエンジンの変速風制御に合わせて指針が上がったり下がったりする。拡大

これぞ現代のシビック

エンジンが気持ちよければすべて良し、というわけではないけれど、それ以外のことはまあいいか、という気分になるのは本当である。ガソリンターボ仕様とこのハイブリッドの車重の差は100kgあるが、フットワークは軽快で、なによりシビックe:HEV同様にエンジン&モーターのレスポンスが小気味よくリニアなおかげで山道ではなおさらその印象が強い。乗り心地もむしろ重いハイブリッドのほうが落ち着いた感じだが、荒れた路面などではブルブルとした大きな振動が残ることもあり、この点はシビックのほうが明らかに洗練されている。

いかつい本格的クロスカントリータイプでもなく、かといってクーペのようなスタイリッシュ志向でもない、どこか捉えどころのないスタイリングに対する好みを脇におけば、ZR-Vは日常的に使うのにちょうどいい、かつ気持ちよく走ることもできるSUVである。いやSUVというジャンル分けがそのキャラクターを曖昧にしているのかもしれない。ブレッド&バターカーはもはや死語だが、肩ひじ張らずに気持ちよく使える実用ハッチバックと考えれば、これぞ現代におけるシビックなのかもしれない。

(文=高平高輝/写真=小林俊樹/編集=藤沢 勝)

左コーナーを行く「ZR-V e:HEV X」。落ち着いていて上質な乗り心地だが、「シビック」のほうがもう少ししっとりとしていた印象だ。
左コーナーを行く「ZR-V e:HEV X」。落ち着いていて上質な乗り心地だが、「シビック」のほうがもう少ししっとりとしていた印象だ。拡大
荷室の容量は395リッター。掃き出しの部分やホイールハウスの内張りが波板のようになっているのが面白い。
荷室の容量は395リッター。掃き出しの部分やホイールハウスの内張りが波板のようになっているのが面白い。拡大
後席は座面のチップアップ等はできないが、背もたれは60:40分割で前に倒せる。
後席は座面のチップアップ等はできないが、背もたれは60:40分割で前に倒せる。拡大

テスト車のデータ

ホンダZR-V e:HEV X

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4570×1840×1620mm
ホイールベース:2655mm
車重:1630kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:141PS(104kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:182N・m(18.6kgf・m)/4500pm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(ヨコハマ・アドバンdB V552)
燃費:22.1km/リッター(WLTCモード)
価格:329万8900円/テスト車=372万9000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット<プレミアムタイプ>(5万2800円)/ドライブレコーダー<前後車内3カメラセット>(6万7100円)/11.4インチHonda CONNECTナビ(29万2600円)/ナビ取り付けアタッチメント&パネルキット(1万7600円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2661km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:262.8km
使用燃料:21.2リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:12.4km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)

ホンダZR-V e:HEV X
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