「プラットフォーム」とはなんですか?

2023.06.20 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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クルマの「プラットフォーム」とは、そもそもなんでしょうか? その概念やシステムは、昔からあったのでしょうか? トヨタでは、かつての「セリカ」「カリーナ」「コロナ」のように販売チャンネルの異なる“兄弟車”が存在しましたが、例えば今の「GA-B」プラットフォームを共用している「ヤリス」「アクア」「シエンタ」は兄弟車と呼んでいいのでしょうか?

プラットフォームという概念は、お話のセリカやカリーナをつくりはじめたころからだんだん出てきたと思います。その後、取り扱い車種が増えるにつれて、「エンジンや足まわりなど“基本の部分”はそのままにして形だけ変えよう」「意匠に関係のない部分はとにかく共通化しよう」というクルマづくりが、世界的に主流になってきました。そのほうが、開発期間が短縮できてコストがかからないからです。

この、意匠に関係のない「車体」ともいわれる部分がプラットフォームにあたります。物理的には、さまざまなコンポーネンツが載る板状のベースと、そこにエンジンやサスペンション、シートなどを取り付けるための部品――実はこの“取り付け部”こそが自動車開発では極めて重要なのですが――までを含めてプラットフォームと定義できるかと思います。

その共有という点では、そっくりそのまま使いまわせることもあれば、いくらか変更を加えたうえで用いることもあります。ホイールベースをわずかに延長しただけとか、ほんのちょっと変えて最適化する、なんてケースも増えていますね。プラットフォームの変更はたとえわずかでも多額の費用がかかりますから、「できるだけ共通にすべき」というのがメーカー(会社)の基本的な考え方ではありますね。

でも商品企画の人間からすれば、製品間で同じものを使いまわすのはイヤなわけで、「少しでも変えたい」「できれば全部、新規でつくりたい」というのが本音です。これはどのクルマにもいえることですが、特にスポーツカーはプラットフォームで性能が決まるという面がありますから、それを他のモデルと共有するなんて、開発者に言わせれば「あり得ない話」なのです。

兄弟車については、ヤリス/シエンタ/アクアの例のようにプラットフォームを共有しているというだけの理由で兄弟車と呼ぶことは、一般的にはないでしょうね。ただ、どこまでをそう呼ぶか、はっきりした定義があるわけではありません。

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。