クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

ボルボXC40リチャージ アルティメット シングルモーター(RWD)

時宜にかなう電気自動車 2023.08.07 試乗記 サトータケシ 2024年モデルへの移行にあたり、大胆にも駆動方式が変更されたボルボの電気自動車(BEV)「XC40リチャージ」。後輪駆動車となった最新型ではどんな走りが楽しめるのか、装備・機能の特徴も含めてリポートする。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

企業の姿勢が見て取れる

さまざまな企業や政府が、「203×年までにエンジン車の販売(生産)を終える」とか、「やっぱり終えるのをやめます」などとアナウンスをしている。ホントのところはどうなのかと思うけれど、ボルボに関しては確実にBEV専業メーカーに向けて歩を進めているようだ。

2023年1月から6月までのグローバルの実績だと、新車販売におけるBEVの割合は16%で、ボルボの場合は6台に1台がBEVになっている。ちなみに昨2022年は8%だったというから、倍増だ。

現状、ボルボのBEVは今回試乗した「XC40リチャージ」と「C40リチャージ」の2モデルしかないが、近い将来、コンパクトSUVスタイルのBEVである「EX30」がラインナップに加わることを考えると、BEV移行のスピードはさらに加速すると予想できる。

ボルボは2025年までに、新車販売におけるBEVの割合を50%にし、2030年までにBEV専業メーカーになるという目標を掲げているけれど、この調子でいくと2025年の目標は達成できるかもしれない。ヨーロッパに比べてBEVの割合が低い日本でも、ボルボの場合は新車販売のうち11.2%がBEVだという。

ただし、BEVを増やすことだけがボルボの真の目的ではない。2040年までにバリューチェーン全体でクライメートニュートラルを実現し、2050年に全世界でゼロエミッションを達成することが最終的な目的だ。

事実、東京・御成門のボルボ・カー・ジャパン本社で使用する電力は再エネで、各地のディーラーも、切り替え可能なところから順次再エネに切り替えられているという。

もうひとつ付け加えると、ボルボは全世界のすべての生産工場と事業所において、同性カップル、代理親、養父母を含めて、新たに父親・母親になったすべての社員に24週間の有給育児休暇が与えられる。CO2削減にばかり目を向けがちであるけれど、ボルボのこうした取り組みからは、本気でSDGs(持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)に向き合う企業姿勢が伝わってくる。

2024年モデルから後輪駆動車となったボルボのBEV「XC40リチャージ」。四輪駆動車は海外ではラインナップされるが、2023年7月の時点では日本に導入されていない。
2024年モデルから後輪駆動車となったボルボのBEV「XC40リチャージ」。四輪駆動車は海外ではラインナップされるが、2023年7月の時点では日本に導入されていない。拡大
フロントに内燃機関を持たないBEVとあって、オーソドックスなグリルは備わらない。なお、今回の試乗車の車体色は、「クラウドブルー」と呼ばれるニューカラー。新色としてはほかに「ヴェイパーグレー」も追加されている。
フロントに内燃機関を持たないBEVとあって、オーソドックスなグリルは備わらない。なお、今回の試乗車の車体色は、「クラウドブルー」と呼ばれるニューカラー。新色としてはほかに「ヴェイパーグレー」も追加されている。拡大
84個のLED光軸で構成される「ピクセルLEDヘッドライト」。各光軸を独立して自動調節し、周辺のドライバーや歩行者の幻惑を防ぐ。
84個のLED光軸で構成される「ピクセルLEDヘッドライト」。各光軸を独立して自動調節し、周辺のドライバーや歩行者の幻惑を防ぐ。拡大
給電口は車体左側に配置される。リア(写真)が急速充電用で、フロントが普通充電用となる。
給電口は車体左側に配置される。リア(写真)が急速充電用で、フロントが普通充電用となる。拡大
ボンネットの下には、容量31リッターのラゲッジスペースが確保される。リッド(ふた)が備わるものの、夏場の庫内は熱くなるので要注意。
ボンネットの下には、容量31リッターのラゲッジスペースが確保される。リッド(ふた)が備わるものの、夏場の庫内は熱くなるので要注意。拡大
ボルボ XC40 の中古車webCG中古車検索

今風にして北欧風

いささか前置きが長くなったけれど、こうした背景を頭に入れながら、大がかりな変更を受けたボルボのBEV「XC40リチャージ アルティメット シングルモーター」に試乗する。

最新2024年モデルの最大の変更点は、これまでは前輪駆動だったものが後輪駆動に改められたことで、そのほかにバッテリーの大容量化、自社でデザインしたモーターの採用など、多岐にわたる改良が施された。

ドライバーズシートに座ってシステムを起動、する前に、インテリアを見渡す。XC40リチャージとC40リチャージは、本革を使用しない最初のボルボ車なのだ。内装の多くは、合成素材とリサイクル素材で構成される。

手縫いのステッチが美しいステアリングホイールは、何も知らなければレザーだと勘違いするぐらい、手触りがいい。スエード調のシートもしかりで、合成素材でここまで“いいモノ感”を出せるのかと感心する。美味なカニカマにカニ肉が使われていないのを知ったときと同じレベルの驚きを覚えた。

ボルボXC40リチャージは、開閉可能なパノラマガラスサンルーフを全車標準装備しており、室内は明るい。この明るさによって清潔で機能的な北欧デザインの特徴が強調されて、インテリアはドイツ車ともラテン車とも異なる、個性的な雰囲気となっている。

ここであらためてシステムを起動、「オッケー、グーグル」と呼びかけて目的地を設定する。ボルボ車に乗るたびにGoogleのOSの精度や使い勝手は向上していて、この進化のスピード感はクルマというよりスマホだ。……とまぁよく考えたら、車載のOSもOTA(Over The Air)でアップデートしているわけで、OSの進化スピードがスマホと同じなのは当然といえば当然なのか。

車内に物理的なスイッチ類は少なく、機能の多くはセンターディスプレイ内のメニューが担う。シンプルな造形と相まって、インテリアはすっきりとした印象だ。
車内に物理的なスイッチ類は少なく、機能の多くはセンターディスプレイ内のメニューが担う。シンプルな造形と相まって、インテリアはすっきりとした印象だ。拡大
見た目も感触も本革巻きのようなステアリングホイールだが、レザーフリーの観点から合成皮革で仕立てられている。
見た目も感触も本革巻きのようなステアリングホイールだが、レザーフリーの観点から合成皮革で仕立てられている。拡大
シートの表皮はスエード調のテキスタイルとマイクロテックのコンビネーション。調節機構は電動式となる。
シートの表皮はスエード調のテキスタイルとマイクロテックのコンビネーション。調節機構は電動式となる。拡大
3人掛けの後席。ブルーが鮮やかなドアの内張りやカーペットには、ペットボトルの再生材が用いられている。
3人掛けの後席。ブルーが鮮やかなドアの内張りやカーペットには、ペットボトルの再生材が用いられている。拡大
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は73kWhで、8年16万kmの製品保証が付帯する。一充電走行距離(WLTCモード)は590km。
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は73kWhで、8年16万kmの製品保証が付帯する。一充電走行距離(WLTCモード)は590km。拡大

楽しさにつながるステアフィール

発進加速は滑らかでスムーズ、力強くてなんの不満もない。都市部で走っている限りは、押し出されているとか、後ろ足で蹴っているとか、後輪駆動を感じさせるようなフィーリングは一切ない。ただひたすら洗練されたパワートレインだ。

ではハンドルの手応えのよさに後輪駆動らしさがあるかと問われると、前輪駆動だったXC40リチャージのステアリングフィールを正確に思い出すことは不可能なので、比べようがない。

ただひとつ、はっきりと言えることは、タイヤと路面がどのように接しているかという情報を、きめ細かに伝えてくれるということだ。ハンドルの手応えがスッキリしている。

特にこのスッキリ感を強く感じるのが、ハンドルを切った状態が長い時間にわたって続く高速コーナー。タイヤがどこを向いているか、路面がどんなコンディションなのかが明瞭にわかるから、自信を持ってハンドルを握ることができるし、そのことがファン・トゥ・ドライブにもつながる。

やはりフロントタイヤに駆動と操舵のひとり2役を押し付ける“ワンオペ”の前輪駆動よりも、後輪駆動のほうがステアリングフィールをよくすることにかけては、たけているように思う。

「XC40リチャージ」(後輪駆動車)のモーターは、ボルボが新たに自社開発したもので、従来の前輪駆動モデルのユニットに対して出力は3%、トルクは27%アップした。車体の前後重量配分は45:55で若干リアヘビーになっている。
「XC40リチャージ」(後輪駆動車)のモーターは、ボルボが新たに自社開発したもので、従来の前輪駆動モデルのユニットに対して出力は3%、トルクは27%アップした。車体の前後重量配分は45:55で若干リアヘビーになっている。拡大
フルカラーの液晶メーター。「XC40リチャージ」の0-100km/h加速タイムは7.3秒で、最高速度は180km/hと公表される。
フルカラーの液晶メーター。「XC40リチャージ」の0-100km/h加速タイムは7.3秒で、最高速度は180km/hと公表される。拡大
カーナビの目的地設定では、現地到着時と、往復して現在地に戻った際の想定電池残量も表示される。安心につながる機能のひとつだ。
カーナビの目的地設定では、現地到着時と、往復して現在地に戻った際の想定電池残量も表示される。安心につながる機能のひとつだ。拡大
「XC40リチャージ」の上級グレード「アルティメット」には20インチホイールが装着される。タイヤの幅はリアのほうが20mm広く、偏平率は前後で異なる。
「XC40リチャージ」の上級グレード「アルティメット」には20インチホイールが装着される。タイヤの幅はリアのほうが20mm広く、偏平率は前後で異なる。拡大

「BEV以外の部分」も強み

と、ここまで書いておいてアレですが、このクルマに興味をお持ちの方にとっては、速いとか遅いとか曲がるとか止まるとか、そういうこと以上にもっと有用な情報があるように思う。

例えばそのひとつが「エアピュリファイヤー」だ。これはボルボが世界に先駆けて開発した空気清浄技術で、PM2.5の車内への侵入を最大で95%も防ぐことができる。エアフィルターは、もちろん花粉もカットする。

なるほどと思ったのは、液晶パネルで外気の汚染レベルや飛散する花粉の量を目視できることで、クラウドからの外気データを活用しながら車内の空気を浄化するかどうかの判断ができる。ボルボのエアピュリファイヤーは、アレルギー基準協会という機関から、「ぜんそくやアレルギーといった問題を抱えている方に有効」とのお墨付きを得ているという。

もうひとつ、このクルマで知っておくべきは、Harman Kardonのサウンドシステムの素晴らしさだ。静かな室内に、豊かでクリアな音が広がる。職業柄、いろいろなクルマのオーディオを使うけれど、無音のBEVということもあってか、このクルマのサウンドシステムには脱帽した。

乗り心地は穏やかで、快適な室内でお気に入りの音楽を聴きながらドライブ……すると、今度は航続距離とか充電設備といった問題に直面する。Googleマップがクラウドの情報と連携して充電スポットを案内するなどテクノロジーがフルサポートしてくれるけれど、現時点での日本では、エンジン車に比べて不便であることは間違いない。

それでも、デザインのよさ、BEVの快適性、きめ細かな配慮、そしてボルボの企業姿勢など、トータルでの魅力が不便さを凌駕(りょうが)すると考える人が増えたことが、販売台数につながっているのだろう。そしてこれからの時代、支持者はさらに増えるのではないだろうか。

(文=サトータケシ/写真=佐藤靖彦/編集=関 顕也)

「XC40リチャージ」にはPM2.5センサー付きの「エアピュリファイヤー」が標準で装備されている。空気の状態は、写真のようにモニターで把握できる。
「XC40リチャージ」にはPM2.5センサー付きの「エアピュリファイヤー」が標準で装備されている。空気の状態は、写真のようにモニターで把握できる。拡大
「XC40リチャージ」に標準で備わるHarman Kardonのサウンドシステムは、13個のスピーカーで構成される。写真は助手席側ドア内張りのスピーカー。
「XC40リチャージ」に標準で備わるHarman Kardonのサウンドシステムは、13個のスピーカーで構成される。写真は助手席側ドア内張りのスピーカー。拡大
センターコンソールには、ドライブセレクターのほかカップホルダー、USBソケット、非接触充電トレーなどがレイアウトされている。
センターコンソールには、ドライブセレクターのほかカップホルダー、USBソケット、非接触充電トレーなどがレイアウトされている。拡大
グラブボックスのリッドには収納式の荷掛けフックが備わる。シンプルながら、あると便利な装備である。
グラブボックスのリッドには収納式の荷掛けフックが備わる。シンプルながら、あると便利な装備である。拡大
「ボルボXC40リチャージ アルティメット シングルモーター」の価格は719万円。BEVへの補助金制度により、例えば東京都の場合、実質的には578万4000円で購入できる。
「ボルボXC40リチャージ アルティメット シングルモーター」の価格は719万円。BEVへの補助金制度により、例えば東京都の場合、実質的には578万4000円で購入できる。拡大

テスト車のデータ

ボルボXC40リチャージ アルティメット シングルモーター

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1875×1650mm
ホイールベース:2700mm
車重:2030kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:238PS(175kW)/4000-5000rpm
最大トルク:418N・m(42.6kgf・m)/1000rpm
タイヤ:(前)235/45R20 100V/(後)255/40R20 101V(ピレリPゼロELECT)
一充電走行距離:590km(WLTCモード)
交流電力量消費率:143Wh/km
価格:719万円/テスト車=732万6400円
オプション装備:ボルボ・ドライブレコーダー360<フロント&リアセット>(13万6400円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:289km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.1km/kWh(車載電費計計測値)

ボルボXC40リチャージ アルティメット シングルモーター
ボルボXC40リチャージ アルティメット シングルモーター拡大
荷室の容量は5人乗車時で413リッター。後席シートバックの中央には、長尺物を積むためのスキーホールが設けられている。
荷室の容量は5人乗車時で413リッター。後席シートバックの中央には、長尺物を積むためのスキーホールが設けられている。拡大
荷室はフロア下にも予備収納スペースが確保されている。フロアボードを山折りに立てることで、コンパクトな荷物も安定させることができる。
荷室はフロア下にも予備収納スペースが確保されている。フロアボードを山折りに立てることで、コンパクトな荷物も安定させることができる。拡大
後席の背もたれを倒した状態。フラットな積載スペースが得られる。
後席の背もたれを倒した状態。フラットな積載スペースが得られる。拡大
サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

試乗記の新着記事
  • スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
  • ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
  • スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
  • トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
  • BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
試乗記の記事をもっとみる
ボルボ XC40 の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。