クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

電気自動車にはどれくらい長く乗り続けることができるのか?

2024.03.06 デイリーコラム 工藤 貴宏
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

進化のスピードが圧倒的に速い

BEV(バッテリー電気自動車)にはどのくらいのあいだ乗り続けることができるのか……?

先に結論(「言い訳」ともいう)からお伝えすると、その答えをズバッと出すのは非常に難しい。

まずBEVは実質的に世界初の量産モデルといえる「三菱i-MiEV」が登場してからわずか15年ほどと歴史が浅いし、発売から10年以上が経過している車種や個体がそれほど多くないのはクルマに詳しい読者諸兄ならご存じのとおりだ。そのうえ内燃機関車に比べて技術革新のスピードが速いから、新型が出るたびにどんどん進化している。だから最新のBEVを10年とか20年乗り続けたらどうなるかは誰にも分からないというのが正直なところだ。

間違いなく言えるのは、新車購入から3年とか5年というスパンならまったく問題ないってこと。BEVの寿命という面において最も心配なのは駆動用バッテリーの劣化だが、かつての一部のBEVのように驚くほど速いペースで一充電走行距離が短くなっていく(バッテリーが劣化していく)なんていうのは過去の話と考えていい。

国産メーカーでいえば、日本で最もたくさんBEVを販売している日産は「8年もしくは16万kmまで」、トヨタでは「10年もしくは20万kmまで(メーカー保証:8年16万km+BEVバッテリーサポートプラス:2年4万km)」のバッテリー保証を付けている。今の国産BEVなら、そこまでは安心して乗れると考えていいだろう。ちなみにどこまで劣化したら保証の対象かといえば、日産は明確な記載が見つけられなかったが「70%程度」が目安となっているようで、トヨタは「70%を下回ったら」と明記されている。いずれも新品を100%とし、それと比較してだ。

2009年に世界初の量産型電気自動車としてデビューした「三菱i-MiEV」。「iPhone」よりも発売が後ということに驚く。
2009年に世界初の量産型電気自動車としてデビューした「三菱i-MiEV」。「iPhone」よりも発売が後ということに驚く。拡大
トヨタ の中古車webCG中古車検索

新しいのに古く感じるかも

というわけで、どれだけ使えるかといえば「8年もしくは16万kmくらいなら心配しなくて大丈夫そう。トヨタならもう少し安心できる。でもそれ以上はよく分からない」というのがいま確実に言える答え。さらに長く乗ろうというのなら「状況次第」となる。

ただ、その際でも新車時に比べると「航続距離が7割程度になる可能性がある」ことは頭の片隅に置いといたほうがいいだろう。

ただ、BEVに長く乗り続けると、バッテリー劣化とは別の部分でモヤモヤするかもしれない。BEVは商品としての陳腐化が早いということだ。

BEVはものすごいスピードで進化しており、そのレベルはガソリン車やハイブリッド車を大きく超える。実際にはガソリン車やハイブリッド車も(パワートレイン以外にも先進安全装備やデザインなどで)結構進化していて新車購入から5年もたつと結構古さを感じるものだが、BEVの進化スピードはそれ以上。イメージとしては、スマホを思い浮かべればいいだろう。最近こそ落ち着いたものの、新しいツールとして登場した初期のスマホは新商品が出るたびにどんどん性能がアップし、進化の幅がすごかった。新スマホが出るたびにバッテリーが長持ちになり、動きがサクサクになり、不満点がどんどん改善されていった。だから、手元のスマホがすぐ古くなるように感じたのは多くの人が経験したことではないだろうか。今のBEVは同じような状況にあるのだ。

この先2026年くらいになると「全固体電池」と呼ばれる新しいバッテリーの搭載が始まり、充電時間が短くなる一方で航続距離が長くなるといわれている。それが市販化されると、従来タイプのBEVユーザーは「もうちょっと買うのを待っていればよかった」と思うかもしれないし、急に愛車が時代遅れになってしまったように錯覚するかもしれない。そういう意味では、進化スピードが速いBEVに長く乗ることは、陳腐化との戦いといってよさそうだ。

「トヨタbZ4X」の駆動用バッテリーには10年20万km、容量70%の保証が付く。「スバル・ソルテラ」は8年16万km、容量70%となっている。
「トヨタbZ4X」の駆動用バッテリーには10年20万km、容量70%の保証が付く。「スバル・ソルテラ」は8年16万km、容量70%となっている。拡大

50年後も乗れるか?

また、技術が進んで効率やバッテリーのエネルギー密度が高まれば、これまでと同じ性能でこれまでより安くBEVがつくれるということにもなる。そうなると、古いBEVのリセールバリューがますます下がることに直結。BEVのリセールバリューはただでさえ低いのに、その進化が愛車のリセールバリューを下げるという何とも皮肉な状況になるのは避けられないだろう。

昨今のスマホのように「もうあまり進化しないから、1台のスマホを長く使い続けよう」というのは、BEVでいえばもう少し先のタイミングになりそうだ。

現行型のBEVであれば、航続距離低下といった性能の劣化や陳腐化を気にしなければ、10年乗るのもおそらく問題ない。

ただ、ガソリン車に比べると「リセールバリューが低いから短期的な乗り換えサイクルだと割高になる。いっぽう商品としての進化が速いから、長く乗ると古く感じやすい」というのが現在のBEVの立ち位置といえるだろう。

えっ!? 40年とか50年くらい先まで安心して乗れるか? それはなかなか厳しいかもしれない。なぜなら修理が効く機関系が寿命を迎えるというよりは、壊れると修理が難しい電子系部品が厳しくなりそうだから。

ただしその状況は、BEVに限らずハイブリッド車や電子制御てんこ盛りとなった今どきのエンジン車も同じこと。数十年というスパンで見ると、かつてのシンプルなクルマに比べて今どきの電気仕掛けのクルマはどれも寿命が短いというのが一般的な予測のようだ。

(文=工藤貴宏/写真=三菱自動車、トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

トヨタが2027~2028年の実用化を見込む全固体電池。2023年には量産化に向けて出光興産との協業がスタートした。
トヨタが2027~2028年の実用化を見込む全固体電池。2023年には量産化に向けて出光興産との協業がスタートした。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

デイリーコラムの新着記事
デイリーコラムの記事をもっとみる
関連キーワード
bZ4Xi-MiEVトヨタ三菱
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。