クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

第279回:自ら選んだ自爆の道

2024.03.11 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

いつのまにか169万円も値上がり

このところ、輸入車に猛烈な逆風が吹いている。最大の逆風は円安等による猛烈な値上がりだ。その割に2023年の輸入車販売台数は前年比で微増。逆風ところかやや順風なのだから不思議だが。

たとえば私が現在愛車にしている「プジョー508 GT BlueHDi」。2018年の導入当初は501万円だったが、その後の値上げ攻勢がすごかった。価格の推移は以下のとおりである。

  • 2020年:507万円
  • 2021年:547万円
  • 2022年:565万円
  • 2022年:576万円
  • 2022年:596万円
  • 2022年:634万円
  • 2023年:670万円

いつのまにか169万円も値上がりしている。これじゃプジョーなんか買う人ゼロだろ! と思うと意外にそうでもない。たぶん508の売れ行きはメタメタになったと思うが、あまり値上がりしてない「308」などを中心に健闘しているらしく、販売台数は対前年比5%減で踏ん張っている。

個人的には、「408」にそそられている。なんつってもSUVなのにペッタンコでカッコいい。アラン・ドロン的にスカした雰囲気は、508に通じるものがある。

2023年導入時の報道関係者向け試乗会ではPHEVにしか乗れなかったので、評判のいい1.2リッター直3ガソリンターボ車に乗ってみたいと思っていたが、先日、その機会がやってきた。試乗車は上位グレードの「408 GT」だった。

先日、1.2リッター直3ガソリンターボを搭載するプジョーの4ドアクロスオーバークーペ「408 GT」に試乗した。2023年6月に行われた同車導入時の報道関係者向け試乗会ではPHEVにしか乗れなかったので、ずっと評判のいいダウンサイジングターボ車に乗ってみたいと思っていたのだ。
先日、1.2リッター直3ガソリンターボを搭載するプジョーの4ドアクロスオーバークーペ「408 GT」に試乗した。2023年6月に行われた同車導入時の報道関係者向け試乗会ではPHEVにしか乗れなかったので、ずっと評判のいいダウンサイジングターボ車に乗ってみたいと思っていたのだ。拡大
プジョーの輸入元であるステランティス ジャパンは、数回にわたりプジョー車の価格改定を行っているが、「408」については導入時の価格が維持されている。今回試乗した「408 GT」の車両本体価格は499万円。ちょいワル特急こと、わが「プジョー508」よりも、格段に割安感がある。
プジョーの輸入元であるステランティス ジャパンは、数回にわたりプジョー車の価格改定を行っているが、「408」については導入時の価格が維持されている。今回試乗した「408 GT」の車両本体価格は499万円。ちょいワル特急こと、わが「プジョー508」よりも、格段に割安感がある。拡大
プジョーのインテリアといえば、独自設計の「i-Cockpit(iコックピット)」である。「GT」グレードのメーターは3D表示となり、速度などの重要な情報が手前に表示される。スマートフォンのように滑らかな操作を可能にするという10インチサイズのタッチスクリーンがセンタコンソールに備わるのもトピックだ。。
プジョーのインテリアといえば、独自設計の「i-Cockpit(iコックピット)」である。「GT」グレードのメーターは3D表示となり、速度などの重要な情報が手前に表示される。スマートフォンのように滑らかな操作を可能にするという10インチサイズのタッチスクリーンがセンタコンソールに備わるのもトピックだ。。拡大
プジョー の中古車webCG中古車検索

プジョーのシャシーは進化している

408 GTの価格は499万円。決してお安くはないが、自分の508と並べてみると、押し出し感はイーブンかそれ以上だ。それで新車価格は100万円以上安いんだから、お買い得といっていいだろう。

それにしてもこのサイズに3気筒の1.2リッターターボとは。私は以前、同型エンジンを積む「シトロエンDS3」を愛車にしていたので、そのぶ厚い低速トルクやレスポンスの良さを熟知しているが、この排気量で、1430kgのボディーを低回転域から軽々と引っ張るのはスゲエ。408のソレは、わがDS3よりパワーで20PS増強されているとはいえ、旧グループPSAが開発したこのエンジンは、ダウンサイジングターボの傑作だ。

今回の試乗車はボディーカラーが派手な赤だったせいか、目立ち度も高かった。隣家の修繕にきた職人さんは「すごいですね。レクサスかと思いました」と、カーマニア的に微妙な褒め言葉を発し、エンブレムを見て「ランボルギーニみたいですね」とも付け加えた。プジョーがレクサスやランボルギーニと混同されるなんてスゲエ! 408グッジョブ!

ということで、408 GTでいつものように首都高を一周したが、走りはとても快適。特にステキなのは鼻先の軽さと、それとは相反するはずの直進性の高さだ。重い2リッター直4ディーゼルを積む、わがちょいワル特急こと508よりも明らかに優れている。508の世代に比べ、プジョーのシャシーはかなり進化している。

首都高一周の燃費は16.9km/リッターと、WLTC燃費の16.7km/リッターを上回った。このクラスのピュアガソリンエンジン車としてはトップクラスだろう。

「408 GT」のフロントフェイスではボディー同色のグリッドが配されたフレームレスグリルと、新デザインのエンブレム、そしてプジョーのアイデンティティーともいえるライオンの牙をモチーフとしたLEDデイタイムランニングランプが目を引く。
「408 GT」のフロントフェイスではボディー同色のグリッドが配されたフレームレスグリルと、新デザインのエンブレム、そしてプジョーのアイデンティティーともいえるライオンの牙をモチーフとしたLEDデイタイムランニングランプが目を引く。拡大
1.2リッター直3ターボの「ピュアテック」ガソリンエンジンは最高出力130PS/5500rpm、最大トルク230N・m/1750rpmを発生。8段ATが組み合わされる。旧グループPSAが開発したこのエンジンは、ダウンサイジングターボの傑作である。
1.2リッター直3ターボの「ピュアテック」ガソリンエンジンは最高出力130PS/5500rpm、最大トルク230N・m/1750rpmを発生。8段ATが組み合わされる。旧グループPSAが開発したこのエンジンは、ダウンサイジングターボの傑作である。拡大
今回「408 GT」で首都高を一周した際の燃費は16.9km/リッター。カタログに掲載されるWLTC燃費の16.7km/リッターを上回った。このクラスのピュアガソリンエンジン車としてはトップクラスの燃費性能だと思う。
今回「408 GT」で首都高を一周した際の燃費は16.9km/リッター。カタログに掲載されるWLTC燃費の16.7km/リッターを上回った。このクラスのピュアガソリンエンジン車としてはトップクラスの燃費性能だと思う。拡大

2リッターディーゼルは格が違う

惜しむらくは、408にディーゼルの設定がない。プジョーは2リッターと1.5リッターのディーゼルエンジンを持っているが、408には搭載されていない。

1.2リッターガソリンターボとディーゼルを比べたら、パワーやトルクはもちろん、燃費でもディーゼルが勝つ。わが508で首都高を一周すれば、18km/リッターは走る。軽油の安さを考えると、燃料代の差は3割近くに達する。現代のクリーンディーゼルの性能はミラクルだ。こんなすばらしいモノを、なぜEUは追放しようとしているのか。ガソリンエンジンよりもまずディーゼルが先に袋だたきに遭う理屈がわからない。イジメとしか思えない。

EUにおけるディーゼル乗用車のシェアは13.4%(2024年1月)。かつては50%あったのだから、すさまじい急落ぶりだ。

そりゃまぁユーロ3とかユーロ4時代のディーゼルは、大気汚染の主因だったんでしょう。フォルクスワーゲンを先頭にインチキ装置で不正もやりました。しかし、現在のユーロ6ディーゼルが、そんな悪者には思えない。排ガス浄化のためにコストがどんどん上がっているはずなのに、ガソリン車との価格差も広がってない。欧州製ディーゼル最高じゃん!

私は翌日、自分の508に乗って、あらためてその良さを痛感した。408 GTの1.2リッターターボもいいけど、508の2リッターディーゼルはトルクが約2倍。格が違う。

ちなみに本邦におけるディーゼル乗用車のシェアは、5.5%(2023年登録車)と相変わらずニッチだが、輸入車に限れば21.6%に達している。輸入車を実用車として使うユーザーは、欧州製ディーゼルの良さを熟知している。こんな優秀な武器を自ら放棄しようとしているEUはバカすぎないか? 自ら選んだ自爆の道だから仕方ないが。

(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

愛車ちょいワル特急こと、わが「プジョー508 GT BlueHDi」(写真左)と、今回試乗した1.2リッター直3ターボを搭載する「408 GT」(写真右)。1.2リッターのガソリンエンジンはとても優秀だが、パワーやトルクはもちろん、燃費でも2リッターディーゼルが勝つ。408にディーゼルの設定がないのはやはり残念である。
愛車ちょいワル特急こと、わが「プジョー508 GT BlueHDi」(写真左)と、今回試乗した1.2リッター直3ターボを搭載する「408 GT」(写真右)。1.2リッターのガソリンエンジンはとても優秀だが、パワーやトルクはもちろん、燃費でも2リッターディーゼルが勝つ。408にディーゼルの設定がないのはやはり残念である。拡大
ボディーカラーが派手な赤(正式名称は「エリクサー・レッド」で、8万2500円の有償色)の「408 GT」は抜群に目立つ。隣家の修繕にきた職人さんは「すごいですね。レクサスかと思いました」と、カーマニア的に微妙な褒め言葉を発した。とにかく、注目されるデザインであることは間違いない。
ボディーカラーが派手な赤(正式名称は「エリクサー・レッド」で、8万2500円の有償色)の「408 GT」は抜群に目立つ。隣家の修繕にきた職人さんは「すごいですね。レクサスかと思いました」と、カーマニア的に微妙な褒め言葉を発した。とにかく、注目されるデザインであることは間違いない。拡大
プジョーは1905年の自動車製造開始から今日まで、一貫してライオンのエンブレムを使用している。ライオンのモチーフは、仏ブルゴーニュ=フランシュ=コンテの中心都市、ベルフォールの貴族の紋章に由来するものとされ、100年以上の歴史のなかで10種類のデザインが存在する。現在のエンブレムは2021年に登場し、3代目「308」から使用が開始された。
プジョーは1905年の自動車製造開始から今日まで、一貫してライオンのエンブレムを使用している。ライオンのモチーフは、仏ブルゴーニュ=フランシュ=コンテの中心都市、ベルフォールの貴族の紋章に由来するものとされ、100年以上の歴史のなかで10種類のデザインが存在する。現在のエンブレムは2021年に登場し、3代目「308」から使用が開始された。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

カーマニア人間国宝への道の新着記事
  • 第317回:「いつかはクラウン」はいつか 2025.8.25 清水草一の話題の連載。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生してから2025年で70周年を迎えた。16代目となる最新モデルはグローバルカーとなり、4タイプが出そろう。そんな日本を代表するモデルをカーマニアはどうみる?
  • 第316回:本国より100万円安いんです 2025.8.11 清水草一の話題の連載。夜の首都高にマイルドハイブリッドシステムを搭載した「アルファ・ロメオ・ジュニア」で出撃した。かつて「155」と「147」を所有したカーマニアは、最新のイタリアンコンパクトSUVになにを感じた?
  • 第315回:北極と南極 2025.7.28 清水草一の話題の連載。10年半ぶりにフルモデルチェンジした新型「ダイハツ・ムーヴ」で首都高に出撃。「フェラーリ328GTS」と「ダイハツ・タント」という自動車界の対極に位置する2台をガレージに並べるベテランカーマニアの印象は?
  • 第314回:カーマニアの奇遇 2025.7.14 清水草一の話題の連載。ある夏の休日、「アウディA5」の試乗をしつつ首都高・辰巳PAに向かうと、そこには愛車「フェラーリ328」を車両火災から救ってくれた恩人の姿が! 再会の奇跡を喜びつつ、あらためて感謝を伝えることができた。
  • 第313回:最高の敵役 2025.6.30 清水草一の話題の連載。間もなく生産終了となるR35型「日産GT-R」のフェアウェル試乗を行った。進化し、熟成された「GT-RプレミアムエディションT-spec」の走りを味わいながら、18年に及ぶその歴史に思いをはせた。
カーマニア人間国宝への道の記事をもっとみる
関連キーワード
408508プジョー
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。