第780回:より快適に 気持ちよく! ブリヂストンの自信作「レグノGR-XIII」を試す
2024.04.02 エディターから一言 拡大 |
ブリヂストンのプレミアムタイヤブランド「REGNO(レグノ)」。その新商品が、新しいフラッグシップタイヤ「レグノGR-XIII」だ。天下のブリヂストンが持てる技術の粋を尽くして開発したという一本(厳密には4本だが)の実力に触れた。
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培ってきた開発・製造技術を総動員
2023年も末の12月、ブリヂストンの新しいフラッグシップコンフォートタイヤとなるレグノGR-XIIIが発売された。前身となる「GR-XII」の発売が2019年1月だったから、約5年ぶりのフルモデルチェンジだ。
ちなみに、初代レグノは1981年に発売された。以来、日本のコンフォートタイヤとして確固たるブランドを確立。最近では2018年に「トヨタ・センチュリーセダン」や「トヨタ・クラウン(先代)」の標準装着タイヤにも選ばれている。ただし、レグノは基本的に日本専用ブランドで、海外市場向け(や海外にも販売されるメーカー標準装着の)コンフォートタイヤには「TURANZA(トランザ)」の名が使われている。
レグノGR-XIIIは、国内乗用車向けの市販タイヤとしては初めて「ENLITEN(エンライトン)」を適用して開発された。ENLITENとはブリヂストン独自の商品設計基盤技術の呼称だ。同社がこれまで培ってきた技術を総動員して、まずは「薄く、軽く、円(まる)く」というタイヤの基本技術を全方位で革新的に進化させたうえで、装着するクルマやパワートレイン、市場環境に合わせて、運動性能、快適性能、サステナブル性などで個別にエッジをきかせる“究極のカスタマイズ”を標榜する。
……と、ENLITENとはなんとも深い世界のようだが、とどのつまりは、サイドウォールにENLITENという刻印があれば、それはブリヂストンの最新鋭タイヤだということである。というわけで、最新のレグノとなるGR-XIIIは、レグノのコアコンセプトである静粛性に加えて、ハンドリング性にもエッジをきかせることで、「静か、やわらか、安らか、気持ちよい、滑らか」という「レグノ史上かつてない空間品質」と「質の高い乗り味」を両立した新しいレグノフィーリングを実現……したのだそうだ。
大幅な進化を遂げた快適性とハンドリング
そんなレグノGR-XIIIの性能を体験できるメニューとして、ブリヂストンが最初に用意したのが、同社プルービンググラウンド内の特設コース走行である。試乗車は「レクサスES」と「メルセデス・ベンツEQE」の2台で、今回は先代にあたるGR-XIIと新しいGR-XIIIを、同じコース、同じクルマで比較試乗できた。
ESは、まさにレグノが支えてきたニッポンの伝統的高級車を象徴するようなクルマといっていい。いっぽう、メルセデスの電気自動車(BEV)であるEQEは、「輸入車やBEVといった幅広い車種」のオーナーへの訴求を目指すGR-XIIIらしい試乗車ということだろう。車重が重く、大トルクを発生するBEVへの対応は、今後のタイヤ開発では不可欠となるのは想像にかたくない。
まずは従来のGR-XIIで走る。当たり前だが、この時点では、まったく不満はない。レグノならではの静粛性の高さや、しっとりとした接地感が好印象である。続いて新しいGR-XIIIに乗り換えると、まずロードノイズの静かさに驚く。お世辞ではなく、比較すればだれもが即座に気づくレベルで静かになっている。しかも、耳に入ってくる音だけでなく、路面のざらつきといった乗り心地、そしてステアリングの手応えも明らかに滑らかになっている。
100~120km/hでの高速レーンチャンジやスラローム走行も用意された今回のコースでは、ステアリングレスポンスが鋭く正確になったのもはっきりと分かった。聞けば、欧米向けのトランザに対して、日本向けのレグノは静粛性とハンドリング性能に“エッジをきかせ”ているという。いっぽう、欧州向けの商品では耐摩耗性とウエットブレーキ性能、北米向けでは耐摩耗性や低転がり抵抗性、リサイクル性などへの要求が高いのだそうだ。
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「あちら立てればこちらが立たぬ」は昔の話
このように、伝統の静粛性に加え、ステアリングレスポンスの向上を目指したGR-XIIIのキモとなっているのが、新しい構造や形状、新しいトップゴム、そして新しいトレッドパターンだという。
なかでもトップゴムは、従来のようにゴムを柔らかくして静粛性を高めたのではないという。ゴムを柔らかくすれば静粛性や乗り心地は向上するが、ハンドリングや低転がり抵抗性は犠牲になりそう……というのは、素人考えでも分かる。GR-XIIIには柔らかくせずとも音を吸収できる、新開発のトップゴムが採用されている。その秘訣は「さまざまなポリマーの機能を分子レベルで明確化」したことにある。筆者の文系脳には理解不能だが、そういうことだ。これもまたENLITENの一環なのだろう。
GR-XIIIとなって、ステアリングレスポンスが明確に上がった印象なのは前記のとおりだが、筆者個人としては先代GR-XIIのしっとりとした手応えも、あたらめて好ましいと思った。ただ、このしっとり感を別の視点から見れば、反応がわずかに遅れているということでもあり、純粋なタイヤ性能としては、やはりGR-XIIIは進化している。
また、GR-XIIIはそのステアリングレスポンスとともに、リアの安定感にもこだわったとか。そういわれれば、鼻先が明確にシャープなレスポンスになっているのに、接地感や安定感が損なわれていないのはESやEQEというクルマのおかげだけではなさそうだ。
どんなクルマの、前後どちらに装着されるかも分からない市販タイヤで“リアの安定感”をどうやって追求するのかというと、GR-XIIIは荷重に依存せずに、接地感やグリップ性能を高めているのだそうだ。
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あらゆるシーンで実感できる“転がり”のよさ
テストコース試乗の後は、わずかな時間ながら、公道でもGR-XIIIを味わうことができた。われわれ取材班にあてがわれたクルマは「BMW i4」と「トヨタ・プリウス」である。
新旧比較ができたテストコースとは異なり、公道では新しいGR-XIIIのみの試乗となったので、断定的な評価はしづらい。ただ、高速や市街地での乗り心地、静粛性、操縦性のバランスがとれているのはレグノの伝統的な美点である。また、高性能BEVであるi4の強烈な発進トルクを遠慮なく解き放っても、最新のレグノが音を上げることはなかった。
それにしても、テストコースから公道まで、GR-XIIIで一貫して印象的なのは、“転がりがいい”ことである。ステアリングやシートから伝わってくる路面のタッチが、とにかく滑らかなのだ。
聞けば、もともと真円度の高さには定評があったブリヂストンのタイヤだが、ENLITENを適用した新しいGR-XIIIは、それに輪をかけて丸くなっているという。また、サイドウォールの剛性も大きく上がっているというから、走行中もその丸さが保たれるのだろう。
同時に軽いのもENLITENの特徴で、今回のGR-XIIIだと、たとえば売れ筋となる18~19インチサイズで一本あたり約1kgも軽い。バネ下が軽くなれば、乗り心地、操縦性、追従性、静粛性、燃費と、クルマのあらゆる性能に良い効果をもたらす。GR-XIIIが静粛性やハンドリングにエッジがきいているのと同時に、全方位でバランスよく進化しているのには、この軽さも奏功していると思われる。
webCGではすっかりおなじみとなった元トヨタのチーフエンジニアである多田哲哉さん(参照)も、「クルマの性能の8割はタイヤで決まります」と常々おっしゃっている。今回のように同じコース、同じクルマで新旧タイヤを比較できると、その言葉が実感として身に染みる。
(文=佐野弘宗/写真=ブリヂストン、webCG/編集=堀田剛資)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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