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ポルシェ・マカン4(4WD)/マカン ターボ(4WD)

ワインディングが待っている 2024.04.23 試乗記 藤野 太一 エンジンを捨て、電気自動車(BEV)となって登場した新型「ポルシェ・マカン」。完全新設計の電動プラットフォーム上に構築された“走りのBEV“”走りのSUV”は、仏ニースのワインディングロードで、ポルシェならではの身のこなしを披露してくれた。
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量販モデルのBEV化に踏み切った理由

初代のデビューは2013年のことだから、およそ11年を経て2代目へとフルモデルチェンジしたポルシェ・マカン。ブランド初のBEV「タイカン」が登場したときから「次はマカン」と公表されていたように、新型はBEV専用モデルとなった。

2024年4月下旬、その新型マカンの国際試乗会がフランス・ニースで行われた。ニースは世界的に有名なリゾート地であり、地中海性気候で一年を通して温暖な気候で知られる。まだ4月だというのにビーチは水着で海水浴を楽しむ人たちであふれていた。

街を走るクルマに目をやると、「フィアット500e」や「ルノー・ゾエ」「テスラ・モデル3」などコンパクトBEVを多く見かける。フランスの新車販売におけるBEVの割合は15%超、プラグインハイブリッドを足し合わせるとおよそ21%というから、PHEVと合わせても3%前後という日本とは少し様子が異なる。新型マカンでビーチサイドを走っていると2度ほど写真を撮られるなど、現地の人たちの関心も高そうだった。

マカンといえば、ポルシェのベストセラーモデルのひとつである。2023年の世界販売台数でも「カイエン」の8万7553台に次ぐ、8万7355台のセールスを記録している。なぜマカンをBEVにしたのか、マカンのプロジェクトマネジャーであるロバート・メイヤーさんに尋ねてみた。

「まずマカンの顧客がどのようにクルマを使っているのかリサーチしました。この新型は、日常的なユースケースであれば、満足していただける航続距離を実現できています。そしてユーザーも、それを使いこなしてクルマとともに進化していくものだと考えています。2つ目の理由としては、(メイン市場である)米国での排ガス規制を満たすためにはボリュームが必要です。そのためにスポーツカーではなく、販売台数の多いモデルを選びました。3つ目はご存じのように、私たちはアウディとの共同プロジェクトで、新しいプラットフォームを開発しました。このプラットフォームはちょうどマカンが該当するセグメントのニーズを満たしています。そして何よりも、他のモデルと大きな差別化を図ることができる素晴らしい運動性能を備えています。BEVへの転換をはかるための、これはいいチャンスだったのです」

SUV製品群ではもちろん、全ラインナップのなかでもポルシェのエントリーモデルという役割を担う「マカン」。誕生から11年を経て、ついに2代目へとフルモデルチェンジした。
SUV製品群ではもちろん、全ラインナップのなかでもポルシェのエントリーモデルという役割を担う「マカン」。誕生から11年を経て、ついに2代目へとフルモデルチェンジした。拡大
2代目となる新型「マカン」は、かねての予告どおり、バッテリーの電気で走るBEVのみのラインナップとなる。
2代目となる新型「マカン」は、かねての予告どおり、バッテリーの電気で走るBEVのみのラインナップとなる。拡大
「マカン4」のインストゥルメントパネルまわり。湾曲型の液晶メーターに、ツマミ式のシフトセレクター、各種機器の操作を担うタッチスクリーンと、インターフェイスはおおむね「タイカン」に準ずるが、空調やオーディオの音量調整などには、機械式のスイッチが残された。
「マカン4」のインストゥルメントパネルまわり。湾曲型の液晶メーターに、ツマミ式のシフトセレクター、各種機器の操作を担うタッチスクリーンと、インターフェイスはおおむね「タイカン」に準ずるが、空調やオーディオの音量調整などには、機械式のスイッチが残された。拡大
現時点で発表されているラインナップは、ベーシックな「マカン4」と高性能グレード「マカン ターボ」(写真)の2種類のみだ。
現時点で発表されているラインナップは、ベーシックな「マカン4」と高性能グレード「マカン ターボ」(写真)の2種類のみだ。拡大
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見た目の割にゆとりのある車内空間

ニースのヨットハーバーにずらりと並んだマカンは実にカラフルだった。標準色が13種類、スペシャルカラーは59種類を用意する。今回の試乗車は「マカン4」と「マカン ターボ」の2種類。まずはエクステリアでの差異を見極めるとする。分かりやすいのはエンブレムだ。ターボモデルには、メタリックグレーの“ターボナイト”が備わる。フロントバンパーでは、ヘッドランプ下の横桟がターボはボディー同色となる一方、マカン4はブラックアウトされている。ちなみに、ここでいうメインのヘッドランプは、バンパーの左右に位置する四角いユニット。実は一般的なヘッドランプの位置にある特徴的な4本のLEDランプは、デイタイムランニングランプのみの機能を有しているもので、フロントのランプ類は2つのパーツに分けてデザインされている。リアバンパーは、ターボモデルにのみ左右の縁にスリットが備わる。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4784×1938×1622mm(マカン4)で、ホイールベースは2893mmと先代モデルより86mm延伸。そのため、Cd値0.25というクーペのようなスタイリングから想像していたよりも、室内空間にはゆとりがある。ラゲッジスペースも先代モデルより広くなっており、通常は540リッターで背もたれを倒すと最大1348リッターに拡大。そしてボンネットの下には“フランク”と呼ばれる容量84リッターのセカンドラゲッジコンパートメントがある。

インテリアは、タイカンにはじまる最新のデザイントレンドにのっとったもの。12.6インチの自立型液晶メーターが備わるダッシュボードは、10.9インチのセンターディスプレイとオプションの10.9インチ助手席用ディスプレイを一体化したブラックパネルによって、“タイプ930”の「911」をほうふつとさせる横一文字のイメージを強調している。BEVだからとすべてをデジタル化するのではなく、スタート/ストップボタンをはじめ、エアコンのスイッチ類、オーディオのボリュームなど、アナログのコントロールエレメントを残しているのもポルシェらしいところだ。

派手なエアロデバイスなどで差異化を図っている他のモデルと比べると、「マカン」の「ターボ」モデルの意匠は控えめ。それでも「Turbo」ロゴや専用のエンブレムなどで、それと分かるようになっている。
派手なエアロデバイスなどで差異化を図っている他のモデルと比べると、「マカン」の「ターボ」モデルの意匠は控えめ。それでも「Turbo」ロゴや専用のエンブレムなどで、それと分かるようになっている。拡大
フロントの上部に備わる4本のLEDランプはデイタイムランニングランプ。暗所で前方を照らすヘッドランプは、その下のバンパー側に備わっている。
フロントの上部に備わる4本のLEDランプはデイタイムランニングランプ。暗所で前方を照らすヘッドランプは、その下のバンパー側に備わっている。拡大
装備類では、ポルシェ初となるAR(拡張現実)技術を用いたヘッドアップディスプレイの採用もトピックとして挙げられる。
装備類では、ポルシェ初となるAR(拡張現実)技術を用いたヘッドアップディスプレイの採用もトピックとして挙げられる。拡大
ラゲッジルームの容量は5人乗車時で540リッター。後席は4:2:4の3分割可倒式で、それを畳めば最大で1348リッターの積載空間が得られる。
ラゲッジルームの容量は5人乗車時で540リッター。後席は4:2:4の3分割可倒式で、それを畳めば最大で1348リッターの積載空間が得られる。拡大

重さも、SUVであることも忘れさせる

パワートレインは前後アクスルに永久励磁型PSM電気モーターを配置した2モーター方式の4WDで、800Vアーキテクチャーを備えた新開発の「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」の中心に、総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーを敷き詰めている。

マカン4は、最高出力387PS(285kW)で、オーバーブースト時には408PS(300kW)のパワーを発生。最大トルクは650N・m。0-100km/h加速は5.2秒、最高速度は220km/h。一充電走行可能距離は、WLTPモードで最大613kmとなっている。一方のターボは、最高出力584PS(430kW)で、オーバーブースト時には639PS(470kW)を発生。最大トルクは1130N・mと4ケタに達している。0-100km/h加速は3.3秒、最高速度は260km/h。一充電走行可能距離は最大で591kmである。

まずはマカン4に乗る。動き出しはスムーズで申し分ない。ブレーキのマナーもさすがのポルシェ。あえてバイワイヤを採用せずフィールを重視している。試乗車は足まわりにオプションの22インチタイヤ+エアサスペンションを組み合わせており、路面の荒れた市街地ではいささか硬いかなと感じる場面もあった。しかし、渋滞した市街地をくぐり抜け、ナビゲーションに導かれてモンテカルロラリーのような山岳路へとたどり着くと、ここで本領発揮。SUVであることを忘れてしまうくらい、そして重さを感じさせないくらい、右へ左へひらりひらりとひた走る。

翌日の朝、ターボに乗る。走りだしてすぐに、マカン4で十分でしょという思いが吹き飛んだ。まずアクセルペダルに対するツキがいいから、運転が楽。そして乗り心地もいいし、ハンドリングもいいのだ。昨日と同様に山岳路での試乗だったが、クルマとの一体感がより増しており、ラリードライバー気分が味わえた。

のちに確認したところ、マカン4とターボでは、モーターの大きさだけでなく、取り付け位置なども含めてリアアクスルまわりがまったくの別物という。エアサスペンションも機構としてはマカン4と同じものだが、ダンパーのセッティングが異なり、またターボはリアアクスルの電子制御式ディファレンシャルロック「ポルシェトルクベクトリングプラス(PTV Plus)」や最大操舵角5°のリアアクスルステアリング(オプション)も装備していた。ゆえに前後重量配分は、マカン4では50:50のところターボでは48:52と、より後輪にトラクションがかかるセッティングとなっているという。参考までにドイツでのスタート価格は、マカン4が 8万4100ユーロ(約1380万円)、ターボが 11万4600ユーロ(約1880万円)なので、価格差なりの価値があるといえそうだ。先出のロバート・メイヤーさんに、試乗前にどちらがおすすめと聞いてみたら、間髪入れずにターボと答えてくれたけど、さもありなんだ。

ポルシェとアウディが共同開発した「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」。バッテリーには三元系リチウムイオン電池を使用しており、安全性を確保しつつニッケル・コバルト・マンガンの使用量を8:1:1とすることで、エネルギー密度を高めている。
ポルシェとアウディが共同開発した「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」。バッテリーには三元系リチウムイオン電池を使用しており、安全性を確保しつつニッケル・コバルト・マンガンの使用量を8:1:1とすることで、エネルギー密度を高めている。拡大
タイヤサイズは「マカン4」「マカン ターボ」ともに、前:235/55R20、後ろ:285/45R20が標準だが、試乗車にはいずれもオプションで用意される22インチのタイヤ&ホイールセットが装着されていた。
タイヤサイズは「マカン4」「マカン ターボ」ともに、前:235/55R20、後ろ:285/45R20が標準だが、試乗車にはいずれもオプションで用意される22インチのタイヤ&ホイールセットが装着されていた。拡大
ステアリングホイールに備わるダイヤル式のドライブモードセレクター。「スポーツ」「スポーツプラス」モードではローンチコントロールの使用が可能で、その際にオーバーブーストが作動。「マカン4」で387PS、「マカン ターボ」で639PSという最高出力を発生する。
ステアリングホイールに備わるダイヤル式のドライブモードセレクター。「スポーツ」「スポーツプラス」モードではローンチコントロールの使用が可能で、その際にオーバーブーストが作動。「マカン4」で387PS、「マカン ターボ」で639PSという最高出力を発生する。拡大
バッテリーは出力270kW(!)もの超急速充電に対応。135kWの急速充電器を使用した場合、残量が10%の状態からおよそ33分で80%の状態まで充電できるとされる。
バッテリーは出力270kW(!)もの超急速充電に対応。135kWの急速充電器を使用した場合、残量が10%の状態からおよそ33分で80%の状態まで充電できるとされる。拡大
動力性能については、「マカン4」(写真)では0-100km/h加速が5.2秒、最高速が220km/h、「マカン ターボ」では0-100km/h加速が3.3秒、最高速が260km/hと公称されている。
動力性能については、「マカン4」(写真)では0-100km/h加速が5.2秒、最高速が220km/h、「マカン ターボ」では0-100km/h加速が3.3秒、最高速が260km/hと公称されている。拡大

日本市場の意外な恩恵

実は当初、マカンは既存のICE(内燃エンジン)車とBEVを併売するとアナウンスされていた。しかし、欧州域内でサイバーセキュリティー法が施行されることになり、かの地ではBEVのみが販売されることになるという。それは織り込み済みだったのか、最後にロバート・メイヤーさんに尋ねてみた。

「正直に言うと、偶然のことでした。サイバーセキュリティー上の理由により、欧州のほとんどの国でICEの販売は終了します。現行のマカンは古いエレクトロニクスプラットフォームに基づくものです。サイバーセキュリティー法に適合するように改良することも不可能ではないですが、そのためには多大なコストと労力が必要になります。いくつかの市場(日本を含む)ではICEも継続販売するため、ライプツィヒ工場ではICEとBEVを混合ラインで生産しています。ターゲットボリュームについてはコメントできませんが、ライプツィヒには十分なキャパシティーがあり、フレキシブルに対応できます」

ちなみに日本においてもなお、2022年からOTA(Over The Air)対応の新型車への規制が始まっており、2026年5月には規制対象が継続生産車にも拡大されるという。ICEマカンがいつまで生産されるのかについては教えてもらえなかったが、残された時間はそう長くはなさそうだ。

ICEかBEVか非常に悩ましいが、自宅に普通充電器が設置できるのであれば、わたしならBEVを選ぶと思う。いずれせよ、両方選べる日本市場の恩恵を、いまのうちに享受したいものだ。

(文=藤野太一/写真=ポルシェ/編集=堀田剛資)

「マカン ターボ」のフロントシート。床下に電池を敷き詰めるBEVでありながら、前席の着座位置は従来モデルより28mm低められている。
「マカン ターボ」のフロントシート。床下に電池を敷き詰めるBEVでありながら、前席の着座位置は従来モデルより28mm低められている。拡大
リアシートも15mm着座位置が下げられており、身長1.8mの人が座っても十分なヘッドルームが確保されているという。
リアシートも15mm着座位置が下げられており、身長1.8mの人が座っても十分なヘッドルームが確保されているという。拡大
欧州では新型のBEVのみが販売されることとなった「マカン」。日本ではエンジンを搭載した従来モデルも併売されるが、いずれはそれもBEVモデルのみとなる。
欧州では新型のBEVのみが販売されることとなった「マカン」。日本ではエンジンを搭載した従来モデルも併売されるが、いずれはそれもBEVモデルのみとなる。拡大
ポルシェ・マカン4
ポルシェ・マカン4拡大

テスト車のデータ

ポルシェ・マカン4

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4784×1938×1622mm
ホイールベース:2893mm
車重:2330kg(DIN、空車重量)
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
システム最高出力:387PS(285kW)<オーバーブースト時:408PS(300kW)>
システム最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)
タイヤ:(前)235/55R20/(後)285/45R20
一充電走行距離:516-613km(WLTPモード)
交流電力量消費率:21.1-17.9kWh/100 km(WLTPモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

ポルシェ・マカン ターボ
ポルシェ・マカン ターボ拡大

ポルシェ・マカン ターボ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4784×1938×1621mm
ホイールベース:2893mm
車重:2405kg(DIN、空車重量)
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
システム最高出力:584PS(430kW)<オーバーブースト時:639PS(470kW)>
システム最大トルク:1130N・m(115.2kgf・m)
タイヤ:(前)235/55R20/(後)285/45R20
一充電走行距離:518-591km(WLTPモード)
交流電力量消費率:20.7-18.8kWh/100 km(WLTPモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

 
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