クルマめがけて空から氷が降ってくる! 初夏の驚異「雹(ひょう)」の被害に注意せよ
2024.06.03 デイリーコラム雨や雪とはワケが違う!
突然ですが、皆さんの愛車は雹(ひょう)に降られたことはありますか?
何を隠そうワタクシは雹に降られて大きなダメージ(クルマにも心にも! そして財布にも!)を受けたことがあるのですが、それはそれは聞くも涙、語るも涙の思い出。いつになっても美化はされない、かわいそうな思い出。思い出すたびつらくなってくる……。
……なんて話は置いといて、毎年5月、6月に降りやすいという雹。そもそもどんな物体なのでしょうか。空から降ってくる氷ってことはなんとなくわかりますが「霰(あられ)」と何がどう違うっていうの? 筆者もよくわからないので気象関係のウェブサイトをのぞいてみたら、「どちらも空から降ってくる氷」なんだけれど、要は「大きさが違う」のだとか。直径5mm未満の“氷の粒”が霰、直径5mm以上の“氷の塊”が雹なんだそうで。
どうして上空でそんな氷ができるかといえば、発達した積乱雲の中で生まれた氷の結晶が強い上昇気流と下降気流によって上下しているうちに成長し、ある程度大きくなると地表へと降ってくるんだそうです。へぇー。
気になる落下速度は、直径50mmでは100km/hにもなるんだとか。さすがに直径50mmの雹なんてあんまり遭遇しない気がするけれど、その直撃を受けたら大変なことになりますね。
というわけで今回のコラムはクルマ好きとしてはそんな雹から愛車を守るためにはどうしたらいいのか? っていう話なわけですが、ベストなのは屋根のある駐車場へクルマをとめておくこと。これに尽きます。
そんなこといまさら言われなくてもわかるって?
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とにかくルーフを意識しよう
まあそうですよね。じゃあ青空駐車の人は方法がないかといえば、ボディーカバーとか厚手の毛布を掛けるというのがその対策になるでしょうか。さすがに頻繁に乗るクルマだと面倒ですが、天気予報を見て積乱雲が発達しそうな日だけ掛けるとか。もし週末しか乗らないのなら、平日はカバーや毛布を掛けっぱなしにしておくといいかもしれませんね。
確かに、直径50mmの氷の塊が100km/hで降ってきたらカバーや毛布で覆ってもノーダメージってわけにはいかないと思いますが、もっともっと小さい氷の塊(こちらのほうが降る頻度は高い)なら防げる可能性だってあるでしょう。何も対策しないよりははるかにマシです。
ちなみに「できるだけ手間なく」という人に向けての筆者のオススメは、ルーフだけをカバーや毛布で覆うこと。どうしてかといえばルーフにへこみができちゃうと、修理費用が高くなるからです。ボンネットフードやトランクリッドならそのまま交換しちゃえばいいから比較的簡単に修理できますが、ルーフはそうはいかないんですよね。ルーフパネルを交換すると事故車扱いになっちゃって、手放すときの査定価格がダダ下がりだし。なので屋根だけは雹害を阻止しようという作戦です。
そんななか、ちょっと興味深いのが、2024年5月から(他地域に比べて雹の被害が多い)群馬で始められた社会実験。三井住友海上火災保険と東芝デジタルソリューションズ、そして群馬といえばおなじみのストア「ベイシア」(の系列カー用品店「オートアールズ」)がタッグを組んで始めたのは、デジタル技術で雹害を防ごうという取り組みです。
実は以前から三井住友海上火災保険は関東在住の保険契約者に雹の予測を伝える「雹害アラートサービス」を提供しているのだそうです。それはそれで役立つのですが「アラートがきても屋根がある場所に移動できなかった」という声も寄せられたのだとか(そりゃそうだ)。
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いざという時の保険にも注意
そこで、オートアールズが雹の被害を防ぐ特性のカバー(汎用<はんよう>性がある)を製作。群馬県の保険契約者を対象に、2万セットを配り、アラートと組み合わせることで有用性がどの程度あるかを調査するのだそうです。
なかなかいい取り組みじゃないですか。かつて愛車のボンネットとルーフがボコボコになった筆者としては、非常に興味深いところです。っていうか、ウチも対象にならないかな……。
ところで、愛車が雹にやられたらどうするか? 「修理する」もしくは「修理しない」の選択になると思いますが、ルーフまでやられている場合はその費用も高額。「修理しないで査定額激落ち」もしくは「ルーフパネル交換で修理して事故車扱いになり査定額ダダ下がり」という究極の2択が待っています。
ただ、被害状況によっては「デントリペア」と呼ばれるルーフパネル交換なしにへこみをなくす方法もあり、それなら修理しても事故車扱いにはなりませんがルーフ全体にたくさんのへこみがあれば作業金額も相当なものに……(涙)。
いずれにしろ、修理の費用は高額になるので車両保険を使うのが一般的だと思いますが、保険を使うと等級が下がって今後の保険料に影響するんですよね。それもまた悩ましいところ。(参照:自動車保険 おすすめ人気ランキング トップ10)
そしてそもそもの前提として、保険を使って修理するとしたら車両保険に加入する必要があるので、保険契約内容はしっかりとチェックしておきたいところです。
というわけで、今年の夏はめざそう「愛車の雹害ゼロ」!
(文=工藤貴宏/写真=webCG/編集=関 顕也)
◆関連記事:もっと安くて満足できる自動車保険は? 実際に契約した3983人による評価を見る
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工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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