第792回:千葉・木更津の循環型ライフスタイル提案施設でジャガー・ランドローバーの電動化に向き合う
2024.07.03 エディターから一言![]() |
電動化を推進する英国伝統のプレミアムブランド、ジャガーとランドローバー。その取り組みを確認するために、循環型のライフスタイルを提案する千葉・木更津のクルックフィールズで行われたアクティビティーに参加した。
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気になる看板に導かれる
東京からはアクアラインを渡って目と鼻の先にある千葉・木更津は、新型車の試乗会や撮影などで比較的よく訪れる場所だ。その日もwebCGの取材でドイツブランドの新型車を取材していたのだが、運転中に目にした看板がずっと気になっていた。脇道の入り口には白地の看板にブルーの文字で「クルックフィールズ」とある。「いったい何の施設なんだろう? あとでネット検索してみよう」と思いながらも、取材が終わり、ランチを食べ終わるころには、そんなことをすっかり忘れていた。
ところがその数日後、編集部のSさんから、くだんのクルックフィールズで「JLR PHEVサステナブルエクスペリエンス」があるので一緒に取材に行きませんかという誘いがあった。“JLR”とはジャガー・ランドローバーのことで、電動化を進める同社の取り組みを確認するとともに、クルックフィールズを体験するアクティビティーが用意されているというのだ。
「こんな偶然があるんだなぁ」と少し驚きながら、ふたつ返事で取材参加を表明。そして6月中旬の晴れた日、編集部のSさん、カメラマンのHさんとともに、気になる看板に導かれるまま、ついにクルックフィールズに足を踏み入れることができた。
看板の先の坂道を上がると、広さ30ヘクタール、東京ドーム約5個分の緑のスペースが広がっている。自然の恵みとアートが見どころといい、場内には草間彌生をはじめとする国内外の作家によるアート作品が点在。それらを見て回るだけで、豊かな気持ちになる。
一方、緑の斜面には2.4MWもの発電量を誇るソーラーパネルが設置され、場内で使う電力の7〜8割を太陽光発電で賄っているという。場内には来場者が利用できる急速充電スタンドもあり、その電力もカバー。電気だけでなく、ここで提供される食べ物も、場内で採れた野菜や小麦、ミルク、卵などが多く使われ、いわゆる循環型社会の構築に取り組んでいるのがわかる。2039年までに“ネットゼロカーボン”を目指しているジャガー・ランドローバーがその道筋を説明するのに、この場所はまさに打ってつけというわけだ。
まずはジャガーがEVブランドに
世界の自動車メーカーの多くが例えば20XX年までに「ゼロエミッションを達成」「全モデルをEVに」といった目標を掲げている。ジャガー・ランドローバーの場合、まずはジャガーが2025年からEVのみを販売するブランドになる。すでに、「XF」や「XE」は生産が終了し、残るモデルもこれから1年半のうちに引退。EVの「Iペース」はモデルチェンジにより新型へと生まれ変わる。
ランドローバー系は、2030年までにレンジローバー、ディフェンダー、ディスカバリーの各ラインナップにEVを設定。さっそく2025年にはフラッグシップモデルの「レンジローバー」からEV版が登場するというのだから、どんな仕上がりになるのか、いまから楽しみである。
ただ、ランドローバーに関しては完全なEVブランドになるのはまだ先の話で、EVと並行してPHEV(プラグインハイブリッド車)のラインナップを拡大するのがジャガーとは異なるところだ。
それに向けて、2024年の時点でレンジローバーを筆頭に「レンジローバー・スポーツ」「レンジローバー・イヴォーク」「レンジローバー・ヴェラール」「ディスカバリー・スポーツ」でPHEVが選べる充実ぶり。ジャガーとともに、電動化へ向けた動きの速さには驚くばかりだ
現行の2モデルを再確認すると
この日はEVのジャガーIペースと、PHEVの「ジャガーEペース」「Fペース」、そして同じくPHEVのレンジローバー各モデルが試乗車として用意されていた。
「そういえば、ここしばらくIペースに乗ってないなぁ」というわけで、まずはIペースのステアリングを握ることに。日本に初上陸した2018年当時に比べて、フロントマスクやリアエンドのデザインが変わり、より精悍(せいかん)な印象となった最新版は、前後モーター合わせて400PSのシステムパワーにより、相変わらず素早い加速をみせてくれる。容量90kWhのバッテリーに対して、航続距離が438kmというのはもうひと頑張りほしいところだが、そこは次期モデルに期待したい。それを除けば、デザイン、パフォーマンスともに魅力は色あせていない。
ランドローバーからはPHEVのなかで最もパワフルな「レンジローバー・スポーツ オートバイオグラフィーP550e」をチョイス。3リッター直6ガソリンターボエンジンと217PSの電気モーターを組み合わせたパワートレインは、EVモードでも加速に余裕があり、さらに、ガソリンとモーターを併用するハイブリッドモードなら、よりパワフルな加速が楽しめる。
搭載されるバッテリーは38.2kWhと、コンパクトEVに匹敵する容量で、通勤や近場の買い物といった普段使いならガソリンを使うことなく一回のドライブを終えることができるだろう。乗り心地の良さやEVモードの静かさもこのクルマの特徴で、電動化がレンジローバー・スポーツの魅力を後押ししている。
ランドローバーではエンジン車とPHEVの価格を同レベルとしたり、PHEVのエントリーグレードを新たに設定したりするなど、より買いやすいラインナップを目指していて、PHEVがこのブランドの主役になる日が近づいていることを実感した。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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