BMW CE 02(RWD)
明日の都市型モビリティー 2024.07.21 試乗記 四輪と比べて“電動化”が遅れ気味なバイクのかいわいだが、そんななかでEVに注力しているのがBMWだ。彼らの電動ラインナップから、都市部での新たなモビリティーのかたちを提案する最新モデル「CE 02」を都内でインプレッションしてみることにした。電動だからこその喜びがある
しょっぱなから個人的な話で恐縮だが、テスターの後藤、電動バイクには興味津々である。それは20年前の体験が関係している。
ヤマハから電動スクーター「EC-02」が登場したとき、トカラ列島(日本最後の秘境といわれているところ)を旅したことがあった。最初は「新しい乗り物だから話題性がありそう」くらいにしか思っていなかったのだが、フェリーから降りて島を走りだした瞬間、島の景色や空気に体を包みこまれ、壮大な冒険のなかに飛び込んでいくような感覚に襲われた。
電動は完全に無音の状態から突然力強く加速する。このときは原付きだったからそれほどの加速ではなかったのだけれど、油断しているような状態からフル加速したものだから神経が一気に張り積めたような状態になった。その結果、周囲の空気感が大量に飛び込んでくることになったのだろう。遊園地のアトラクションが動きだしたときの何倍も大きなワクワク感に体が包まれたような状態になったのである。それはエンジン車では得られない感動だった。いろいろな条件が重なったことは間違いないが、電動の可能性を強く感じたのである。
離島にはガソリンスタンドもない。ドラム缶でガソリンを買っていた島の人たちからは、コンセントから充電できるバイクということで大変な注目を浴びて、どこへ行っても大人気。上り坂でモーターが加熱して動けなくなったり、電欠になって軽トラで引き上げに来てもらったりというようなトラブルもあったのだが、それでも電動スクーターと一緒に滞在した離島の旅は充実していた。ある意味、最高の電動バイク初体験となったのである。
それ以来、電池やモーターの性能が進化して自分のライフスタイルにマッチしたバイクが登場したら、1台買ってもいいかなと思っている。だから地道に電動モデルをつくり続けているBMWには注目していた。メッチャ導入が長くなってしまったが、つまり今回のCE 02の試乗も、とても楽しみだったということである。
軽量な車体と力強いトルク
ここでバイクの電動化事情を振り返ってみると、EVやハイブリッドは少しずつ増えてきているものの、メジャーにはなりきれていない。EVの話題で持ちきりの四輪に対して、バイクの電動化は遅れ気味だ。そんななかでEVに力を入れているのがBMWだ。「Cエボリューション」は警視庁にも採用されて、東京マラソンの先導を担った。現在は普通二輪免許のクラスに大小2つのモデルをラインナップし、新しいモビリティーのかたちを提案している。CE 02はその“小”の側にあたるコンパクトモデルで、かつBMW最新の電動モデルにあたる。
実車を見たのは今回が初めてだが、デザインはとてもスタイリッシュだ。あえてカバーせずにフレームやモーター、バッテリーをむき出しにしていて、色使いも都会的。14インチタイヤだからコンパクトで足つきは抜群によい。しかも車重が132kgしかないから、取りまわしも楽。とても気軽に乗れそうではあるが、荷物を積むスペースは皆無である。それはCE 02が実用性ではなく、ストリートにおける新しいモビリティーの提案という点にフォーカスしているからだろう。
気になるのはモーターのパワーフィーリングだ。どんなものかと思ってスイッチを入れ、スロットルを開けた瞬間、予想外のトルクで車体が加速しだしたものだから「オオッ」と声が出てしまった。無音状態からいきなり最大トルクの加速が始まるこの感じは、開け始めがマイルドに調教された電子制御スロットルのエンジン車よりもある意味でドラマチックだ。この力強い加速は60km/hくらいまで続くから、ストリートではかなり楽しい。
信号待ちで並んだクルマは、小さなバイクが予想外の加速をしたことに驚いたようで、次の信号で並ぶやいなや「それ電動なの? すごく速いね」と話しかけてきた。最高出力は15PS程度しかないのだが、車重が軽いことに加え、実用域での加速がいいので、都心部のように低い速度域で走るのであれば、250ccクラスのバイクより面白いと思う。
シティーユースにフォーカスした調律
走行モードには「Flow」(穏やかなパワー特性で回生ブレーキの利きが中程度)、「Surf」(ダイレクトなパワー特性となり、回生ブレーキが利かない)、「Flash」(最もパワフルで回生ブレーキの利きも強い)という3つのモードが用意されているが、加速感に関しては確かに変化はするものの、それほど大きな違いがあるようには感じなかった。どのモードで走っていても、それなりのパワー感で走れてしまう。
ただ、走り方によって回生ブレーキの利きが気になることはある。慣れ親しんできたエンジンブレーキとは違った利き方をするからだ。CE 02の回生ブレーキは、速度が低下するに従って減速Gが大きくなってくるような利き方をする。だからUターンなどで減速しながらバイクをバンクさせていくと、車体が傾いている最中に予想していたより減速の度合いが強くなってしまうのだ。
しかし、何度かUターンを繰り返していくと、回生による減速Gを利用しながら上手にタイトターンできるようになってきた。こうなるとまた電動で走るのが楽しくなってくる。減速Gがかかり、リアタイヤに減速方向のトラクションがかかっている状態でマシンをコントロールするというのも、今後電動バイクの上手な乗り方になっていくのかもしれない。
タイヤは14インチと小径だけれど、速度を上げていっても安定感は十分確保されている。車体もシッカリした感じだ。けれど倒立フォークはダンピングがほとんど利いていないし、動きも特にスムーズというわけではない。ハンドリングもスポーツ性を考えたようなものではないから、コーナーを攻めようという気分にはならない。ただ、それがこのバイクの魅力を損なうことはない。街なかをキビキビ走るだけならこれで十分だからだ。
それはブレーキも同様で、効力は十分ないっぽうで、限界域のコントロール性を追求したようなタッチやコントロール性はない。それでも、これもまたこのバイクの用途を考えれば十分すぎるほどの性能を持っている。ちなみにABSはフロントのみだが、それを作動させるくらいのハードブレーキングを何度か試してみても、制御は緻密に行われているようで、姿勢が乱れたりすることはなかった。
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世界が開けるまで、あと一歩
カタログ上の航続距離96km(WMTCモード)というのは、都内での移動程度であれば十分なのだが、ある程度長く走ると帰り道が心配になるのも事実。充電器があればどこでも充電できてしまうのだが、この充電器が気軽に持ち運べる大きさ(と重さ)ではないという点が、個人的に最近の電動バイクで不満に思っているところだ。専用の充電設備を必要とせず、普通のコンセントから充電できるというのは電動バイクの大きなアドバンテージだ。バッテリーだけでなく充電器の小型化も進めて、車体に内蔵(もしくは収納)されるようになったら出先で充電して戻ってこられるから行動範囲が広がるし、仮に電欠になってしまったとしても、対策を考えることができる。電動バイクを実際に使いたいと考えている後藤が改善を期待するところである。
電動バイクの場合、四輪と違って車体の大きさに成約があるから、大きなバッテリーを積むことができないし、エンターテインメント的な要素や内装などで付加価値を高めることも難しい。趣味性が重視されることも考慮すれば、EVがエンジン車に取って代わるには、まだしばらく時間がかかるはずだ。それでもBMWが電動に力を入れているのは、これまでのエンジン車にはない可能性があると考えているからである。電動バイクで掲げている「PLUGGED TO LIFE」コンセプトがそれだ。若い世代のクリエイターを中心にデザイン性や走行フィーリングで創造性を育て、新しいモビリティーのかたちをつくり上げていく。電動という枠を飛び越え、新しい世界をつくる先鋒(せんぽう)が、現在の電動ラインナップなのである。
今後、電動バイクが性能を高めていくのは確実。価格も下がっていくことだろう。CE 02がさらに性能を上げ、価格が100万円を切るくらいになったら、現実的な選択肢として考える人が増えてくるのではないかと思う。そうなったときに、BMWの考える新しい電動モビリティーの世界は一気に広がるのかもしれない。それはたぶん遠い日のことではないはずだ。CE 02に乗ってみると、そう強く感じるのである。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=1970×876×1140mm
ホイールベース:1353mm
シート高:750mm
重量:132kg(DIN、空車重量)
モーター:交流同期電動機
最高出力:15PS(11kW)/5000rpm
最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/0-1000rpm
トランスミッション:--
一充電走行距離:96km(WMTCモード)
交流電力量消費率:6.0kWh/100km(WMTCモード)
価格:125万円
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後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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