ランボルギーニの新型車「テメラリオ」発表に見る、スーパースポーツ界の今とこれから
2024.09.02 デイリーコラム“エンジンありき”の考え方
「パガーニ・ウトピア ロードスター」の発表を控えたオラチオ・パガーニ氏が本社で筆者の単独インタビューに応じた際、「12気筒エンジンを諦めることは決してない」と豪語した。
2024年8月、モントレーカーウイークにて新型モデル「テメラリオ」を発表したランボルギーニの会長兼CEOステファン・ヴィンケルマン氏もまた、単独インタビューにおいて、「レギュレーションを順守することが大前提」としつつも「ランボルギーニが12気筒エンジンを諦めることはないだろう」と述べている。
さらにモントレーではGMA(ゴードン・マレー・オートモーティブ)やブガッティといった主要なハイパーカーブランドのエンジニアたちとも議論したが、彼らもまた一様に「内燃機関=エンジンはスーパーカーにとって欠くべからざる重要な要素である」ことを認めている。
一方で、驚異のパフォーマンススペックを誇示するフル電動ハイパーカーが注目を集めていることも確かだ。
今やブガッティを指揮するリマックの電動ハイパーカー「ネヴェーラ」、ピニンファリーナの「バティスタ」(中身はネヴェーラと同じだが)などは、エンジン搭載モデルではとうてい不可能な領域の力を自在に制御することでスーパーカーの性能に別次元の魅力を加えることに成功している。
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まるで人間とAIの戦いのよう
そして、これが肝心なのだけれど、現在エンジンモデルを主力とするスーパーカーブランドは、近年中に電気自動車(BEV)の市場投入を約束しつつも、ブランドのフラッグシップモデルを筆頭とするスポーツカーをフル電動化するつもりは今のところまるでない、ということだ。つまりリマックのようなBEVに対抗することはしない。エンジンスーパーカーブランドのトップは一様に“2000PSの世界観”を否定する。
代わりに“ドライビングファン”と“官能フィール”こそ重要であると主張する。もちろん過去モデルからの進化やカテゴリー内における優位性などをうたうべく、スペックはどんどん上げていかなければならない。それはそうなのだけれど、だからといって途方もない数値のBEVと勝負するつもりは毛頭ない。それはまるで人間とサイボーグ(AI)による水面下での戦いのようでもあった。
象徴的なモデルが「ウラカン」後継として登場したテメラリオだ。「アウディR8」と主要なコンポーネンツを共有した「ガヤルド」やウラカンとは違って、当初からランボルギーニ完結型のモデルとして開発されてきた。ランボルギーニにそれだけの地力がついたともいえるのだが、同時に、そうでもしなければ性能が上がっていく一方のスーパーカー市場において勝つことはできないと彼らが踏んだからでもあった。
性能だけじゃない。前述したように“いかにして官能性を高めるか”もまた重要になってくる。もはや「ブランドの垣根を越えて効率的につくりましょう」などと悠長なことは言っていられない。
テメラリオは新カテゴリーを開く
テメラリオのコンセプトは、だから“フォーリクラッセ”なのだ。要するに、カテゴリーを破壊する規格外の存在であること。もっと言うと、テメラリオはウラカンの後継であって後継でない。ランボルギーニのシリーズラインナップ上ではV12を積んだ「レヴエルト」の下位モデル=スモールランボにはなるのだけれど、実際には全く新しいカテゴリーのスーパーカーであり、例えば以前にウラカンのライバルと目された「マクラーレン750S」や「フェラーリF8トリブート」あたりとは、もはや“ライバル”とはいえない存在になった。パフォーマンスしかり、何よりドライビングファンしかり。
もちろん、未試乗なのでファンかどうかの最終判断は乗ってからになるけれど、モントレーでヴィンケルマン氏はもちろん、開発責任者のルーベン・モール氏やデザイントップのミッティア・ボルケルト氏、さらにマーケティングボスのフェデリコ・フォスキーニ氏といった面々がレヴエルトや「ランザドール」の時を大幅に上回る熱量でテメラリオを語る姿を見ていると、われわれが想像する以上のパフォーマンスを見せてくれることは想像に難くない。
事実、テメラリオはレヴエルトの妹分である。もちろん、デザインやエンジン、ボディー骨格は異なっている。コンセプトも違う。けれどもフロントのeアクスルやセンターコンソールのバッテリー、さらにはダッシュボードまわりなど共有点もまた多い。思い出してほしい。「アヴェンタドール」とウラカンの車体における共通点はエンブレムだけであったことを。
エンジン付きスーパーカーの未来もまた明るい。個人的にはそう確信した2024年の夏、モントレーカーウイークであった。
(文=西川 淳/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ、パガーニアウトモビリ、webCG/編集=関 顕也)
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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