自然吸気V10からV8ハイブリッドへ 「ランボルギーニ・テメラリオ」は何がすごい?
2024.09.26 デイリーコラムランボルギーニの新型PHEV
ランボルギーニが、地球環境に対する持続可能性への道程を示した中期計画・方針「コル・タウリ」を発表したのは、2021年のことだった。コル・タウリとは、ラテン語で「雄牛の心臓」を意味する言葉で、将来発表されるランボルギーニの新型車において、段階的に脱炭素化を目指す内容を示した。見方を変えれば、これはランボルギーニブランドの心臓部ともいえるパワーユニットに、歴史的な変革の時代が訪れることを宣言した画期的なものだった。
そのコル・タウリには3つの段階が設定されている。第1段階においては現代のランボルギーニブランドを象徴するモデルに搭載される内燃機関エンジンをさらに高性能に、そして魅力的な存在とするためのもので、これは2021年から2022年にかけてのタスクであった。
続いて2023年に初のハイブリッドモデルを発表し、2024年末までにはラインナップの全車を電動化する計画を打ち出した。スーパーSUVの「ウルスSE」に始まり、V12モデルの「レヴエルト」、そして今回夏のモントレーで発表されたV8モデルの「テメラリオ」と、PHEVのフルラインナップが完成。CO2排出量の目標値はコル・タウリが発表された時点と比較して50%減という数字で、さらに2026年から2030年にかけてはフル電動となる第4のモデルが誕生する計画も明らかにされている。
テメラリオはこのランボルギーニ最大の投資ともなる新方針のなかで、その中期的なビジョンに何ひとつ変更を加えることなく誕生した、まさに現れるべくして現れたニューモデルである。
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システム全体で最高出力920PSを発生
5.2リッターのV10自然吸気エンジン搭載していた前作の「ウラカン」と、このテメラリオがメカニズム上最も大きな違いとしているのは、やはりパワーユニットの構成だろう。
その核となっているのは、4リッターにまで排気量がダウンサイジングされたV8ツインターボ。参考までにランボルギーニのプロダクションモデルでV8エンジンが搭載されるのは、1981年に登場し1988年まで生産が継続された「ジャルパ」以来のこととなる。
ツインターボシステムはV8としては理想的とされる120度に開かれたバンク内に配置され、フラットプレーン型のクランクシャフトやチタン製コンロッドなど、エンジン内部の構成部品はレーシングカーに近いスペックが採用されている。軽量設計にこだわったというエンジンブロックもまた同様だ。
そしてランボルギーニは、このエンジンに3基のエレクトリックモーターを組み合わせることで、テメラリオをHPEV(ハイ・パフォーマンス・エレクトリファイド・ヴィークル)と呼ぶミドシップスーパースポーツとして成立させている。モーターの1基は従来のウラカン用7段DCTよりも軽量コンパクトであるという8段DCTとV8エンジンの間に配置され、エンジンの出力を補うほかギアチェンジの際にレスポンスを一貫させるトルク・ギャップ・フィラーとしての機能も持ち合わせる。
残りの2基はフロントの左右アクスルにおのおの組み合わされる仕組みだ。V8エンジンの単体出力は800PSとされるが、エレクトリックモーターによるエクストラを得て、テメラリオはシステム全体で最高出力920PSをスペックシート上に掲げる。0-100km/h加速は2.7秒、最高速は343km/hを誇る。総容量3.8kWhというコンパクトなリチウムイオンバッテリーは、ゼロから満充電までをわずか30分で完了する。
ランボルギーニによればテメラリオのCO2排出量はウラカンの50%以下という数字にまで低減されているということだ。これこそが新世代ミドシップモデルの大きな特徴といえる。
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アウディ版テメラリオは存在する?
テメラリオの基本構造体は軽量なアルミニウム製のスペースフレームで、これはウラカンから変化はないが、そのデザインはよりシンプルで生産効率も高く、結果的に重量の低減にも成功した。フロントの左右に置かれたエレクトリックモーターの駆動も含め、常に最適なドライビングダイナミクスをうたう。これらのメカニズムは、開発部門のトップであるルーヴェン・モール氏の下で磨き込まれた。
一方1960年代以降ランボルギーニが好んで使用する六角形のモチーフを、メインボディーやサイドエアインテーク、テールランプ、エキゾーストパイプ、さらにはインテリアのフィニッシュにも積極的に用いたのは、こちらも現在のランボルギーニを支えるチーフスタイリストのミティア・ボルケルト氏だ。
実際の走りがいかなるものなのかは、これからステアリングを握る日を待ちたいが、気になるのは果たしてこのテメラリオのアウディ版、すなわちこれまでウラカン、あるいは「ガヤルド」との姉妹車である「R8」のようなモデルが誕生するかどうかといった点だ。それに関しては、現在の段階で確実視される情報はない。
最新世代のヒューマン・マシン・インターフェイスや、よりサーキット走行にフォーカスした車重が最大で25kg以上削減される「アレジェリータパッケージ」など、魅力的なメニューが用意されたテメラリオ。その刺激はわれわれユーザーにとっても、そして同クラスのスーパースポーツを生み出すライバルにとっても、極めて大きなものであることは確かだろう。
(文=山崎元裕/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ/編集=櫻井健一)
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山崎 元裕
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