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ハスクバーナ・ヴィットピレン801(6MT)

個性派で実力派 2024.12.07 試乗記 河野 正士 独創的なスタイルが目を引くハスクバーナの「スヴァルトピレン/ヴィットピレン」シリーズに、ニューモデル「ヴィットピレン801」が登場。排気量799ccの新たなスポーツネイキッドは、斬新なデザインだけでなく走りのレベルの高さも見どころだった。
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あのバイクもこのバイクも兄弟車

このほど、ブランドの正式名称が「ハスクバーナ・モーターサイクル」から「ハスクバーナ・モビリティー」に変更となったハスクバーナ。次世代のブランドロゴも披露され、新しい門出を印象づけた格好だ。その新しい屋号のもとで最初のプロダクトとなったのが、ヴィットピレン801である。先に発売されたスクランブラースタイルの「スヴァルトピレン801」とプラットフォームをシェアする、ロードスターモデルだ。

ハスクバーナの801シリーズは、「LC8c」と名づけられた排気量799ccの水冷4ストローク並列2気筒DOHC 4バルブエンジンと、そのエンジンを剛体に用いるクロームモリブデン鋼のチューブラーフレームを共用。それにWP製の前後サスペンションや格子状の補強をデザインとして見せるオープンラティス構造のアルミ製スイングアームを組み合わせている。

このプラットフォームは、兄弟ブランドの「KTM 790デューク」も共通だが、「Ready to Race」を標榜(ひょうぼう)するKTMに対し、ハスクバーナは高いスポーツ性を維持しながら、デザイン性も主張してブランド力を高めると公言している。実際、グローバルなスポーツネイキッド市場のなかでも、ここ数年で存在感を高めている排気量1000cc以下のカテゴリー……いわゆるソフトスポーツバイクカテゴリーのなかで、ヴィットピレン/スヴァルトピレンは、そのスポーツ性能と安全性、そして独創的なデザインで、確固たる地位を確立している。

2024年10月に発表された「ハスクバーナ・ヴィットピレン801」。スウェーデン語で“白い矢”を意味するヴィットピレンシリーズの上位モデルであり、同門のスクランブラー「スヴァルトピレン801」の兄弟車にあたる。
2024年10月に発表された「ハスクバーナ・ヴィットピレン801」。スウェーデン語で“白い矢”を意味するヴィットピレンシリーズの上位モデルであり、同門のスクランブラー「スヴァルトピレン801」の兄弟車にあたる。拡大
ラインナップ内での立ち位置としては「ヴィットピレン701」の後継にあたるが、そちらが排気量693ccの単気筒エンジンだったのに対し、新型車は同799ccの2気筒エンジンを搭載。車名も新たに「ヴィットピレン801」となった。
ラインナップ内での立ち位置としては「ヴィットピレン701」の後継にあたるが、そちらが排気量693ccの単気筒エンジンだったのに対し、新型車は同799ccの2気筒エンジンを搭載。車名も新たに「ヴィットピレン801」となった。拡大
ハスクバーナはスウェーデンの銃器工場を起源とする歴史あるバイクブランドだ。二輪車の製造に乗り出したのは、今から121年も前の1903年。今はオーストリアのKTMの傘下にある。
ハスクバーナはスウェーデンの銃器工場を起源とする歴史あるバイクブランドだ。二輪車の製造に乗り出したのは、今から121年も前の1903年。今はオーストリアのKTMの傘下にある。拡大

違いはわずかだがライドフィールは明確に違う

バイクそのものに話を移すと、今回試乗したヴィットピレン801と、先に発売されたスヴァルトピレン801との違いは、ごくわずかだ。それこそヴィットピレンの特徴としては、リング状のデイタイムランニングランプとプロジェクターランプで構成される、宙に浮いたようなヘッドランプの意匠が最大のものといっていい。

もちろんライディングに関する部分にも手は加わっており、幅広く、そして高さを低くしたハンドルバーの採用や、スポーツツーリングタイヤ「ミシュラン・ロード6」の装着、それに合わせたWP製APEXフロントフォーク/リアショックユニットのセッティング変更などが挙げられる。シートについては、その形状やシート高に変わりはないが、フォームをより硬質なものとすることで前傾したライディングポジションにも対応。同時に、加減速における荷重の変化やサスペンションの動きを、ダイレクトに感じられる設定とした。

言ってしまえばパフォーマンスに関わるアイテムの変更はこれだけなのだが、実際に乗ってみると、ヴィットピレン801はこの違いだけで個性を大いに際立たせていた。

実は今回の試乗会は、空港→ホテル→事前プレゼンテーション→試乗……という一般的な国際試乗会の流れとは異なり、まずは説明もなしにいきなりヴィットピレン801に乗ってホテルに移動する、というものだった。そこで感じたのは、兄弟車と比べて明らかに増したダイレクト感だ。アクセル操作に対するエンジンの反応、それに連動する車体の動きは、数カ月前にフランス・マルセイユで試乗したスヴァルトピレン801(参照)よりもビビッド。走行モードを変えたり、各種電子制御のレスポンスを変えたりしても、そのビビッドさが必ずどこかにあるのだ。

「ヴィットピレン801」の特徴的なヘッドランプ。KTMといい、顔まわりで個性を見せるのは、同グループにおけるバイクデザインのトレンドか?
「ヴィットピレン801」の特徴的なヘッドランプ。KTMといい、顔まわりで個性を見せるのは、同グループにおけるバイクデザインのトレンドか?拡大
走りにおける兄弟車との大きな違いは足まわり。前後17インチのスポーツツーリングタイヤ「ミシュラン・ロード6」を装着し、前後サスも、トラベル量は兄弟車と共通だが(前:140mm、後ろ:150mm)、よりオンロード向けに調律が変更されている。
走りにおける兄弟車との大きな違いは足まわり。前後17インチのスポーツツーリングタイヤ「ミシュラン・ロード6」を装着し、前後サスも、トラベル量は兄弟車と共通だが(前:140mm、後ろ:150mm)、よりオンロード向けに調律が変更されている。拡大
シート高は820mmとなかなかの高さ。それでも従来型の「ヴィットピレン701」より10mm低められている。
シート高は820mmとなかなかの高さ。それでも従来型の「ヴィットピレン701」より10mm低められている。拡大

エンジンまで違って感じられる

ロードスポーツタイヤの装着やライディングポジションの変更に合わせてサスペンションセッティングを変更していることは予想していたが、このショート試乗を通して筆者は、各走行モードの出力マッピングも変更しているな、と推察した。

しかしプレゼンテーションを聞き、開発者たちからこのバイクのディテールについて説明を受けてみると、ハンドルとタイヤとサス、そしてシートフォームの硬さを変更した以外は、各走行モードの出力マッピングも、足を置くステップの位置もスヴァルトピレン801と同じだという。自分が感じたビビッドな反応は、“ダイナミックロードスター”を目指して変更が加えられた足まわりとライディングポジションによる、車体反応の総合的な変化によるものだったようだ。

翌日のメインの試乗では、それを意識しながらコート・ダ・ジュールのワインディングロードでヴィットピレン801を走らせた。そして、よりそのロードスターとしての懐の深さを感じることができた。

「レイン/スタンダード/スポーツ」に加え、オプションのダイナミックパックを選択すると「ダイナミック」が追加される走行モードは、どれも個性がしっかりとつくり込まれていて違いが明確だ。3000rpm付近からビート感が強まり、5000rpmを超えると車体がフワッと軽くなるような、浮遊感をともなう強烈な加速を味わわせてくれるスポーツモードも健在である。

最新のスポーツネイキッドらしく、走りをサポートする電子制御も充実。オプションで用意されるライディングモード「ダイナミック」を選択すると、トラクションコントロールの調整が可能となり、後輪のスリップレベルを10段階で選択できるようになる。
最新のスポーツネイキッドらしく、走りをサポートする電子制御も充実。オプションで用意されるライディングモード「ダイナミック」を選択すると、トラクションコントロールの調整が可能となり、後輪のスリップレベルを10段階で選択できるようになる。拡大
コーナリングABSには、「ヴィットピレン/スヴァルトピレン」の他のモデルと同じく「スーパーモト」モードを用意。後輪のみABSの介入をカットすることができる。
コーナリングABSには、「ヴィットピレン/スヴァルトピレン」の他のモデルと同じく「スーパーモト」モードを用意。後輪のみABSの介入をカットすることができる。拡大
オプションで、トランスミッションには変速時のクラッチ操作を省略できるクイックシフターを用意。クラッチカバーには、ブランドの出自を示す「照星の付いた銃口」を模式化したロゴが描かれている。
オプションで、トランスミッションには変速時のクラッチ操作を省略できるクイックシフターを用意。クラッチカバーには、ブランドの出自を示す「照星の付いた銃口」を模式化したロゴが描かれている。拡大

安心してライディングを楽しめる

このLC8cエンジンは、75°の位相クランクを採用しており、独自の爆発間隔などから他の位相クランクの並列2気筒エンジンと比べてスムーズな印象がする。それがLC8c特有の加速感をつくり上げているのだ。そしてダイナミックモードでは、スロットルレスポンスはさらに鋭くなり、エンジンの反応もよりビビッドになる。先述した加速時の浮遊感も増してくる。

そんなとき、よりロード寄りにセッティングされた前後サスペンションとミシュラン・ロード6がスポーティーな走りを支えてくれていることを強く実感する。ブレーキング時の安定感。そこからコーナーに向けて車体を倒し込んでいくときの軽快さ。加えて、それら一連の流れのなかでもタイヤやサスペンションからのインフォメーションは豊富で、だからこそ安心してスポーツ走行を楽しむことができた。

率直に言って、ロードスターモデルとして完全無欠。主要なコンポーネントを共有しながら兄弟との違いを明確に打ち出したヴィットピレン801は、ソフトスポーツバイクカテゴリーにひしめく手ごわいライバルと比しても、スタイリングでもパフォーマンスでも際立った存在に感じられた。

(文=河野正士/写真=Marco Campelli、Sebas Romero/編集=堀田剛資)

走行中に足まわりから伝わるインフォメーションは豊富で、路面とタイヤ、サスペンションがどういった状態なのかがわかりやすい。おかげで安心してスポーツ走行が楽しめるのだ。
走行中に足まわりから伝わるインフォメーションは豊富で、路面とタイヤ、サスペンションがどういった状態なのかがわかりやすい。おかげで安心してスポーツ走行が楽しめるのだ。拡大
排気量799ccの並列2気筒エンジンは、105PSの最高出力と87N・mの最大トルクを発生。軽量な設計も特徴で、オイルを抜いたエンジン単体の重量は52kgとなっている。
排気量799ccの並列2気筒エンジンは、105PSの最高出力と87N・mの最大トルクを発生。軽量な設計も特徴で、オイルを抜いたエンジン単体の重量は52kgとなっている。拡大
カラーリングはイエロー(写真向かって左)とシルバー(同右)の2種類が用意される。
カラーリングはイエロー(写真向かって左)とシルバー(同右)の2種類が用意される。拡大

テスト車のデータ

ハスクバーナ・スヴァルトピレン801

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1475mm
シート高:820mm
重量:180kg(燃料除く)
エンジン:799cc 水冷4ストローク直列2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:105PS(77kW)/9250rpm
最大トルク:87N・m(8.9kgf・m)/8000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:4.5リッター/100km(約22.2km/リッター)
価格:138万9000円

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河野 正士

河野 正士

フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。

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