ベントレー・フライングスパー スピード(4WD/8AT)
重厚かつ軽快 2024.12.09 試乗記 ベントレーの旗艦サルーン「フライングスパー」がモデルチェンジ。これまでのW12ユニットに代えて搭載したのは、V8エンジンを核とするプラグインハイブリッドパワートレインだ。最高出力782PS、最大トルク1000N・mの実力の一端を米国アリゾナの地で味わった。3代目じゃなくて4代目
フォルクスワーゲン グループ内では、基幹となるべきフォルクスワーゲンとアウディにいまひとつ元気がみられない。ここ数年の間にさまざまな事情や都合やタイミングがあったとはいえ、それはどこの自動車メーカーでも似たような境遇であり、昔のような圧倒的勢いみたいなものが感じられないのは寂しい限りである。
いっぽうで、同じグループ内のいわゆるプレミアムブランドは軒並み好調である。例によって独自の商品戦略を粛々と進めるポルシェをはじめ、次々とニューモデルを繰り出すランボルギーニ、そして「コンチネンタルGT」に続いてフライングスパーのモデルチェンジを敢行したベントレーは、いずれも活気に満ちている。本来なら大衆の味方であるはずのフォルクスワーゲンが束ねるグループ内で栄華を極めているのは高級車ばかりというのはなんとも皮肉な話でもある。
資料によると、新型フライングスパーは4代目とのこと。自分の記憶では、2013年に初代が誕生し、2019年に従来型が登場したからてっきり新型は3代目だとばかり思っていた。しかし資料を読み進めていくと「エクステリアは2019年発売の第3世代をほぼ踏襲」とあるので、どうやらわれわれがマイナーチェンジと認識していた初代途中の改良をベントレーではモデルチェンジとカウントしているようである。マイナーチェンジやフェイスリフトやフルモデルチェンジに正確な定義はないので、メーカーがそう言えばそういうことになる。実際、型式が同じだったりプラットフォームが流用だったりしてもフルモデルチェンジとメーカーが明言するモデルは、最近特に多く見られるようになったような気がしている。
守られた“家訓”
そもそもフライングスパーは2005年にコンチネンタルGTの4ドア版として登場した。厳密に言えば、“フライングスパー”という名称は1950年代に初めて使用されているので、登場というよりは“復活”のほうが正しいかもしれない。昭和生まれのオッサンである自分なんかは、ベントレーの4ドアといえば今でも「アルナージ」を自動的に思い浮かべてしまい、たまに中古車情報を(買うつもりはないのに)パトロールしたりしている。
BMW製のV8を搭載したアルナージやW12気筒をはじめ多くの部分を「フォルクスワーゲン・フェートン」と共有した「コンチネンタル フライングスパー」に共通するのは、当時としては最もパワフルな、あるいは最も速い4ドアセダンであるということだった。その“家訓”のようなものは新型フライングスパーにも受け継がれている。
フライングスパー スピードが搭載するのは4リッターのV8ツインターボにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド機構で、ベントレーはこれを「ウルトラパフォーマンスハイブリッド」と呼び、新型「コンチネンタルGTスピード」にも投入している。最高出力782PS、最大トルク1000N・m、0-100km/hは3.5秒などの数値が公表されており、「ベントレー史上最もパワフルなセダン」だという。電動化が進み、もはや1000N・m超えが珍しくなくなってしまった今では、さすがに「最も速いセダン」ということはできなくなってしまったが、「ベントレー史上最強」の称号は死守したようである。
ポルシェとの共同開発
ボア×ストロークがともに86mmでスクエアタイプのV8とモーターをセットにしたプラグインハイブリッド機構は、基本的に「ポルシェ・パナメーラ ターボS Eハイブリッド」と同型で、最高出力と最大トルクのパワースペックも同値である。ただしそれをつかさどる制御マップはベントレー独自のもので、パナメーラとは明らかに異なるドライバビリティーを有している。
スポーツカーのエンジンというよりは“高性能エンジン”といった風情で、出力よりもあふれるトルクの感触のほうが前へ出る。これにはフライングスパーのほうが約200kg重いことも少なからず影響していると想像できるが、ベントレーのエンジニアによると、現行のパナメーラの開発初期段階からベントレーも積極的に携わらせてもらったそうで、「ウチはこんな感じにしたい」という要望をポルシェ側に伝えたという。それはパワートレインのみならず、ツインバルブダンパーを含むエアサスペンションなどにも及んでいる。
共有する部分が多い両車の個性を際立たせるためには、どちらかが先につくったものを後から改良するのではなく、両車それぞれのゴールに確実にリーチできるよう、最初からともに開発を進めたということのようだ。
プラグインハイブリッドなので、フライングスパー スピードはEV走行も可能である。EV走行換算距離は76km(WLTPモード)で、駆動用モーターは190PS/450N・mを発生、EV走行の最高速は140km/hに設定されている。今回の試乗でも走りだしてしばらくはエンジンはずっと眠ったままだった。EVモードだと、ラグジュアリーセダンにとって厄介な音と振動(NV)が自動的に大幅に軽減できるので快適この上ない。と、思っていたらいつの間にかエンジンが始動していた。エンジン稼働時のNV対策も万全であった。
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ベントレーとはどんなクルマなのか?
ベントレーの乗り味というのは、走る曲がる止まるの基本性能が“重厚”という包み紙にやんわりと包まれている感じだと個人的に思っている。それにもかかわらず実際に運転すると、動力性能は鈍重というよりはパワフルで、操縦性はダルというよりもレスポンスがよく、ブレーキはコントロール性が高く確実に制動するという、“重厚”とは相反するような動きを同時に体感することになる。これこそがベントレー独自の乗り味であり、クーペのコンチネンタルGTにもSUVの「ベンテイガ」にも、そしてこのフライングスパー スピードにも一貫して付与されている。
エアサスと後輪操舵、eデフ、4WDなどのデバイスによってばね上の動きやトラクションは巧みに整えられ、極上の快適性とドライバーの意思が反映された振る舞いを両立するフライングスパー スピードのその様には感心するほかないのだけれど、ベントレーに乗るといつも思う疑問もやっぱり浮かんでくるのである。モータースポーツで輝かしい戦績を残してきた歴史もあるベントレーは、スポーツカーなのかスポーティーカーなのかラグジュアリーカーなのか。一体どの属性のクルマなのだろうという疑問である。これに対してベントレーのエンジニアはほくそ笑みながら「それら全部を兼ね備えているのがベントレーです」と語った。まあそうだろうなとは思ったけれど、反論できないくらいの強い説得力は確かにあった。
(文=渡辺慎太郎/写真=ベントレーモーターズ/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ベントレー・フライングスパー スピード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5316×1988×1474mm
ホイールベース:3194mm
車重:2646kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:600PS(441kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)
モーター最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)
システム最高出力:782PS(575kW)
システム最大トルク:1000N・m(102.0kgf・m)
タイヤ:(前)275/35ZR22 104Y XL/(後)315/30ZR22 107Y XL(ピレリPゼロ)
充電電力使用時走行距離:76km(WLTPモード)
EV走行換算距離:76km(WLTPモード)
交流電力量消費率:279Wh/km(WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 慎太郎
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