トレンドの変化に強まるトヨタの存在感! 「東京オートサロン2025」を総括する
2025.01.17 デイリーコラム“若者のクルマ離れ”は昔の話?
いきなり私事で恐縮だが、「東京オートサロン」に顔を出すのは2020年以来、つまり5年ぶりだ。その久方ぶりの幕張で最初に再認識したのは、やはり来場者の多さだった。海外を含め、あちこちのモーターショーやイベントを取材しているけれど、東京オートサロンほど混み合うものはほとんどない。つくづく、日本屈指の自動車イベントだと実感させられる。今回も、出展者数は389社、出展車両台数は857台、3日間の延べ来場人数(出展者・関係者を含む)は25万8406人に達したという。前年は23万0073人だったので、2万8000人ほど増加している。
特に混雑がひどかったのは、TOYOTA GAZOO Racing……要はトヨタがブースを据える、北ホールだった。通路に人がひしめき合うさまは、朝の通勤電車なみの密集度。正式には「展示ホール9-11」という名前の北ホールは、以前の東京オートサロンでは、もっとのんびりとしていた。敷地的にも「メッセ大通り」を挟んだ離れ小島になっていて、ちょっと浮いたエリアだったのだ。それが、今回はトヨタが移転してきたことで雰囲気が一変した。
そんな北ホールの混雑具合もあって、「今年の人出は過去最高を更新か?」と思っていたのだが、調べてみたところ、前回取材した2020年は33万人も来場者がいたようだ。ちなみに2019年も33万人。今回は、「コロナ禍明け」としては悪くはなかったけれど、往時の勢いを完全に取り戻したわけではなかったことになる。逆に言えば、次回以降さらに盛り上がる未来もありうるということだ。
また客層を見ていると、海外からの来場者はアジア系だけでなく欧米の人も目立って感じられた。加えて、かつてより若者や女性が多いような気も。そういえば、最近は“若者のクルマ離れ”という言葉を耳にしなくなっている。若者がクルマを好きになっているというのは、いい傾向である。これからも続くことを祈りたい。
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度肝を抜かれた「GRヤリスMコンセプト」
展示されるカスタムカーのラインナップを見て気づいたのは、かつて一大勢力を形成していた「トヨタ・プリウス」を、ほとんど見かけなくなったことだ。セダン系のドレスアップカーも少数派になっている。代わって台頭していたのが、トヨタの「ランドクルーザー“250”」や「アルファード」といったRV系。「スズキ・ジムニー」もたくさん見た。いっぽうで、依然としてスポーツカーの展示も多いことに気づく。新型車はもちろん、“懐かしのあのクルマ”も非常に元気で、トヨタの「GR86」「GRヤリス」「GRスープラ」、日産の「スカイライン」「GT-R」「フェアレディZ」、ホンダの「S2000」「シビック」、マツダの「RX-7」「ロードスター」などを方々で見かけた。
また、個人的には古いクルマが存在感を示していたのも印象的だった。以前の取材では気づいていなかっただけか、本当に最近になって隆盛しているのか。大手チューナーのトラストも「トヨタ・ソアラ」を出展していたし、トヨタも「モリゾウガレージ」と称して「スバル360」や初代「トヨタ・カローラ」などを並べていた。こうしたクルマは、若い世代にはどのように見えたのだろうか?
では、こうした展示車両のなかで「今年の一番!」と個人的に思ったのはどれかといえば……メーカーの出展で恐縮だが、トヨタの「GRヤリスMコンセプト」だった。なにせ本家(トヨタ)が直々に、エンジンをフロントから後席に移す大手術を行ったのだ。そのインパクトは、やはり他を引き離していた。少々乱暴な手法であり、仕上がりも決して美しくはなかったけれど、それが逆に生々しいカスタムの雰囲気を生んでいた。
メーカーの出展としては、2リッターエンジンを搭載したマツダ・ロードスターの限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」や、スバルのコンプリートカー「S210」のプロトタイプ、ダイハツの「ミラ イースGR SPORTコンセプト」も興味深かったけれど、カスタムカーの祭典である東京オートサロンにふさわしい一台といえば、やはりGRヤリスMコンセプトであったと思う。
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印象的なほどだったトヨタの存在感
そして最後に思ったのが、このイベントの集客を頼った“カスタムじゃない”出展の台頭だ。その筆頭はBYDであり、サプライヤーのパナソニックオートモーティブシステムズや豊田自動織機である。「ジャパンモビリティショー(旧・東京モーターショー)」に匹敵する集客力を持つビッグイベントに参加することで、耳目を集めるというのが狙いだろう。実際、東京オートサロン開幕日の夜には、BYDの発表を紹介するテレビニュースがいくつも放送されていた。彼らの狙いは大いに当たったといえるだろう。
それにしても、こうして東京オートサロンの全体を振り返ってみると、トヨタの存在感が非常に大きいことにあらためて驚かされる。以前もそんな気配はあったが、5年のブランクを経てみると、よりそれが際立って感じられた。北ホールの異常な混雑にはじまり、個人的にカスタムカーの目玉だったGRヤリスMコンセプト、モリゾウガレージなどの新しい試み等々……。各ショップの出展車両を見ても、ランクルやアルファード、GR86、GRヤリスなどが大人気。野外特設会場でのデモランでは、一番の主役はホンダのレジェンド級F1マシン「RA272」だったものの、トヨタのヒストリックラリーカー「セリカST185」や開発中の「GRカローラ Rallyコンセプト」も大いにイベントを盛り上げていた。
今回、トヨタの顔役である豊田章男会長は体調不良で欠席となったが、もし参加していたら、さらに注目度は高まっていたはずだ。総大将が姿を見せなくても、トヨタは「東京オートサロン」の主役になれる。その底力には驚くばかりだ。
(文=鈴木ケンイチ/写真=webCG/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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