最終形が見えてきた!? 新型「ホンダ・プレリュード」の仕上がりを予想する
2025.04.28 デイリーコラムメカから“本気”が伝わってくる
2025年の4月に入って、同年秋に発売が予定されている「ホンダ・プレリュード」の内装が公開された(関連記事)。2024年末にはホンダ独自のハイブリッドシステムであるe:HEVの技術取材会が行われており、参加したメディアやジャーナリストはそこでプレリュードの走りを味わっている(関連記事)。年明けには、鷹栖テストコースで雪上試乗の機会も与えられていた(関連記事)。
筆者はまだ新しいプレリュードには触れておらず、2025年1月にHondaウエルカムプラザ青山(3月末に閉館)に展示してあったプロトタイプを眺めた。直近ではF1日本グランプリ開催中の鈴鹿サーキットで、グランドスタンド裏のホンダブースに展示してあった量産型を(心の中で)指をくわえて見たのみである。
初見は2023年のジャパンモビリティショーだが(関連記事)、特に2代目(1982年~1987年)と3代目(1987年~1991年)がリアルタイムでドンピシャだった(そもそもリトラクタブルヘッドライトに弱い)筆者にとって、新しいプレリュードは初登場時から気になる存在。特に、リアのグラマラスなスタイルに目を奪われている(真後ろからの眺めがいい)。
現時点で入手可能な資料を見ると、新世代のプレリュードは走りに関してかなり本気であることがうかがえる。なにしろ、シャシーは「シビック タイプR」がベースなのだから。フロントサスペンションはデュアルアクシスストラットである。本来は265/30R19というワイドタイヤを装着した際にセンターオフセット(ホイールセンターとキングピン軸の距離)を抑えてトルクステアを軽減し、強大な駆動力を確実に路面に伝えるための構造。プレリュードへの適用にあたっては、旋回時に接地性を保ち、タイヤを効率的に使えるジオメトリー特性も合わせて評価し、選択したものと思われる。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
「RS」以上、「タイプR」未満?
加えて、プレリュードは左右の駆動力差が均等になるドライブシャフトを新たに採用しており、トルクステアを徹底的に抑える配慮がなされている。駆動力をかけながら旋回するシーンでのステアフィールの素直さは、ひょっとするとシビック タイプRよりプレリュードのほうが上?──との期待がふくらむ。
プレリュードのタイヤサイズは245/40R19なので、絶対性能はシビック タイプRに劣るが(パワートレインも異なるし)、走りを意識した仕立てとなっているのは間違いない。ポテンシャル的には、コンベンショナルなマクファーソンストラット式のフロントサスペンションを採用する素のシビック(タイヤサイズは235/40R18)と、シビック タイプRの中間的な位置づけになるだろうか。シビックシリーズのなかでは走りに振った「RS」(1.5リッター直4ターボ+6MT)とは対照的にプレリュードは「走りはそこまで意識してません」的な澄ましたルックスをしているが、その実走りのポテンシャルは上ということになる。
プレリュードは、シビックRSは装備しておらずシビック タイプRには適用している減衰力可変ダンパー(アダプティブダンパーシステム。ドライブモードの切り替えに応じて減衰力の設定を切り替え)を搭載。スポーツ/GT/コンフォート(さらにはインディビジュアル)のモードに合わせてキャラクターに合った減衰力特性に切り替えるのだろうが、ダンパーの可変機能を上手に使いこなしているのはシビック タイプRや「アコード」で体感済みなので、プレリュードとの組み合わせについても期待が高まる。
パワートレインは2モーターのシリーズパラレルハイブリッドのe:HEVを搭載することが発表されている。気になるのは、「エンジンとモーターを制御し、レスポンスを高める」という触れ込みの、「ホンダS+ Shift」を搭載することだ。
これ絶対気持ちいいやつ
e:HEVでは、エンジンがかかっていても発電のために動かすのが主体で、エンジンで発電した電力でモーターを動かして走る、シリーズハイブリッド走行が基本。だけれども、ドライバーの運転操作に応じてあたかもエンジンがリニアに反応しているように、実際のエンジン音にスピーカーから発する演出サウンドを上乗せし、ドライバーの気分を高揚させる狙い。e:HEVは現実にはメカニカルな変速機構は持っていないが、あたかも有段ギアを変速しているかのようなフィーリングが味わえるのも特徴だ。
ギミックと思うかもしれないが、「シビックe:HEV」で適用済みの、ホンダS+ Shiftのベースとなった技術を体感した身からすると、バカにできないどころか、期待は高まるのみだ。「これは気持ちいい!」と思わず口走っている未来の自分が想像できる。
タイプRの技術をベースに数々の新技術がプラスされていることを考えると、プレリュードのお値段はシビックの最上位仕様(430万7600円)よりも高く、タイプR(499万7300円~599万8300円)に近い値づけになるものと予想できる。プレミアムな位置づけであることを考えると、もっと上か。
おいしい料理が口を選ばないように、気持ちいい走りに心を動かされるのは世代を問わない。マニュアルシフトを備えるシビックRSが若い世代からの支持も集めているように、プレリュードも「あやつる喜び」を重視し、スマートでカッコイイクルマを求める層に幅広く支持されるような気がする。
(文=世良耕太/写真=webCG/編集=関 顕也)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

世良 耕太
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代NEW 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起 2025.9.15 スズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。
-
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから” 2025.9.12 新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。
-
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ 2025.9.11 何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。
-
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力” 2025.9.10 2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。
-
NEW
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。 -
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起
2025.9.15デイリーコラムスズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。 -
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】
2025.9.15試乗記フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。 -
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(後編)
2025.9.14ミスター・スバル 辰己英治の目利き万能ハッチバック「フォルクスワーゲン・ゴルフ」をベースに、4WDと高出力ターボエンジンで走りを徹底的に磨いた「ゴルフR」。そんな夢のようなクルマに欠けているものとは何か? ミスター・スバルこと辰己英治が感じた「期待とのズレ」とは? -
スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2025.9.13試乗記「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。